新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、横浜港に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」では、新たに88人の感染が確認され、船内での感染者は乗客3711人のうち542人に上っている。
愛知県・岡崎市にある開院前の医療施設・藤田医科大学岡崎医療センターでは、症状が出ていない感染者を対象に最大170人を受け入れる予定で、18日夕方に近隣住民への説明会が開かれた。そして今日、船内に残されている約2500人の乗船者のうち、検査で陰性が確認された乗客の下船がスタート。加藤勝信厚生労働大臣は「20日、21日くらいの幅の中で下船をしていただくことは想定しながらやっている。具体的なオペレーションを作っているので、それを踏まえて対応していきたい」と述べている。
ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に到着してから2週間以上。なぜ下船させるための迅速な対応が取れなかったのか、乗船者を船内に隔離した日本政府の対応に批判が起きている。菅官房長官は「適切だと思っている」としているが、海外メディアの中には「人権侵害だ(ワシントン・ポスト)」「“こうしてはいけない”と教科書に載る見本(ニューヨーク・タイムズ)」「船内は“ホットスポット”(ロイター通信)」といった厳しい報道も見られる。
こうしたクルーズ船の対応は各国で割れており、香港では「ワールドドリーム号」が4日間の全員検疫後に下船させている一方、日本などから入港を拒否された「ウェステルダム号」は寄港地が見つからず、1週間余り洋上をさまよう結果となった。こうした問題にWHO(世界保健機関)は苦言を呈するも、感染症を想定した国際的な取り決めはないとしており、日本の対応についても「制御できない多くの要素があり、船の中で感染を防ぐのは難しい。船の環境で感染をコントロールするのが難しいのは明らかだ」との評価を示している。
これまでのダイヤモンド・プリンセス号への対応について、日本環境感染学会理事長の吉田正樹氏は「今月3日に横浜港に着いた時には船内の状況が分かっていなかったし、船内で隔離するというのは仕方のないことだったと思う。人数が多く、また多国籍なので、受け入れ施設の面からも難しかったと思う」と話す。その一方、感染者が増え続けていることに関しては「個室隔離されたのが5日だが、今いわれている潜伏期間からして、17日くらいまでに感染がわかった人は個室隔離前に感染した可能性があるし、これからも感染者が多く出てくるとなると、個室隔離がうまく機能していなかった可能性がある。乗員の方からも複数の陽性者が出ているが、2人部屋や4部屋ということを聞いているので、クルー間の感染も起こりつつあった可能性がある。さらに、そういう方が個室に行って配膳していたとしたら、そのことも感染を広げた原因になるかもしれない」との見方を示した。
その上で吉田氏は「陽性者がどのフロアで多かったか、またはクルーの方がどのフロアを担当していたのか。クルーの陽性者と担当しているフロアが一致してくるとなれば、クルーから感染してきた可能性も出てくる。逆に、あまりそういう所が関係ないということであれば、潜伏期の隔離する前の状況で皆さんが感染した可能性もある。正しい隔離だったかどうかは今後の検証が必要だと思う」とした。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「この国の感染症行政の経験が浅すぎることがあると思う。アメリカではCDCのように感染症対策を専門家が独立して、継続的にやっているみたいな組織があるが、日本の場合、その対策の知見が医療判断と行政判断を統合して行うということができていないし、この道30年やっているような人が行政官として意思決定に関われるという状態にはない。今回のことを契機に、CDCみたいなものを作るといった議論を一緒に始めてもいいのではと思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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