「“黒木様”がおみえになって…」覆面調査を受けた店主&掲載店を知り尽くす美食家がミシュランガイドの秘密
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 1世紀以上の歴史を誇り、飲食業とは直接関係のないタイヤメーカーが発行していることから信頼を得ている「ミシュランガイド」。日本に上陸してから今年で12年、今や東京は世界で最も星が付く街でもある。三つ星店で修業した経験をもつ料理人は「星を獲得すると、お客さんがものすごい勢いで来て、連日満席になった」と振り返る。

 一方、覆面調査員の存在や店の選定方法・選考基準など、多くの謎もある。AbemaTV『AbemaPrime』では、国内24番目の調査エリアとしてガイドの発売が決定した新潟を取材、ミシュランガイドの秘密に迫った。

■「“黒木様”がおみえになって…」

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 「新潟で調査員が回ってるという話を東京のシェフに聞いて、“そっちに来た?”という話で盛り上がった」(イル・リポーゾの原田誠シェフ)。

 5月の「新潟版」発売を前に、県内の飲食店は総じて歓迎ムード。シェフの間でも調査員のことが話題になっているという。祖父の代から数えて創業65年目、食べログでも全国トップクラスの鮨・登喜和店主の小林宏輔氏は「世界基準の中で評価してもらえるのはやっぱりすごい話だなと思う。やっぱり気にはなる」と明かす。

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 取材を進めると、実際に調査員が訪れたお店の話を聞くことができた。「“黒木様”がおみえになって…」。そう話すのは、親子2代で切り盛りする和食割烹の名店、日本料理「魚幸」の渡邉和秋氏。黒木という偽名を使った人物が1名で来店、ミシュランのロゴが記載された名刺も出したが、本名は一切明かさなかったという。「40代後半くらいの人だった。夜のコースは6000円、8000円、1万円と用意できるが、6000円のコースを食べていった」(渡邉氏)。

 「兄弟寿し」でも、日本人男性1名が基本コースを注文して、食後に身分を明かしてから帰ったという。「名乗らないと聞いていたので驚いた。ただ、“もしかしたら…”っていう方はほかにも何人かいた」(店主の本間龍史氏)。

 8つの有名店(寿司2店、和食割烹1店、イタリアン2店)への取材を通して見えてきたのは、日本人男性(40代後半~50代前半)が1名で来店、最も安いコースを注文し、専門的な質問を重ねる。そして食後に予約名は偽名でミシュランガイドの調査員と明かし、その後再び覆面調査員らしいオーラを放つ客が来店するということだった。

■自治体から協力費?1回きりの限定版

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 ミシュランガイドへの熱い思いは、インバウンドに力を入れる自治体も同じだ。新潟県国際観光推進課課長の野上文敏氏は「おそらく新潟県にとってこれほど大きなインパクトがあり、背中を押してくれる権威付けというのはなかなかなかった。それこそ新潟の魅力発信、ひいては私たちが狙っているインバウンドの拡大に繋がると考えている」と話した。

 また、富山県と石川県は合わせて1070万円、福岡・佐賀両県・福岡市が約1000万円ずつを「協力費」として拠出している。日本ミシュランタイヤ株式会社は「地方自治体がインバウンド集客の目的で英語版を作成したいということでの協力」と回答、各県の担当者は「観光客誘致のため妥当な額」とコメントしている。

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 この点について、ミシュランガイド掲載店の食べ歩きに20年以上で6000万円を使い、昨年版の三つ星レストランも133軒のうち130軒で実食している美食家の藤山純二郎氏は、「福岡・佐賀版や富山・石川版、新潟版など、日本だけ“特別版”が出ている。本来のミシュランの精神からすると1回しか出さないというのが暗黙のルールだ。ただ一つ言えるのは、星の売買はしていないと思う。実際、宮城版、鳥取版では三つ星が1軒もなかった。石川・富山版でも、三つ星が富山の日本料理店1軒にだけついたが、石川県民が“何で近隣の富山にあるのに”と激怒したという話も囁かれている」と説明する。

 他方、その強すぎる影響力に疑問を投げかける意見もある。ある店主は「声だけなら」と取材に応じ、「掲載されたことで開店当初からのお客様の来店を断らざるをえなくなり、信頼関係が崩れちゃったとか、ちょっと傲慢になってしまい、仕事が怠慢になったという話を、他県のケースとして聞いた」と明かした。

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 食通として知られるホフディランの小宮山雄飛は「ミシュランの公式アプリも使っているが、あくまで参考にする程度。どちらかと言えば名前を出している評論家や著名人のオススメのお店の方が好きだ」とコメントした。

■基準は時代や地域によって変化

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 そんなミシュランが公表している評価基準は(1)素材の質(2)料理の技術の高さ(3)独創性(4)価値に見合った価格(5)料理全体の一貫性がある、などで、2019年ミシュラン星獲得店数ランキングの1位は東京(日本)で230店、2位がパリ(フランス)で104店、同2位で京都(日本)で104店、4位は大阪(日本)で99店、5位がニューヨーク(アメリカ)で76店だった。

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 前出の藤山氏は、評価基準について次のように話す。

 「星は1900年に始まり、ヨーロッパの店しか調査していなかった。昔のパリの有名三つ星レストランは完全に社交的要素を含んだ大レストランで、お金持ちオーナーが潤沢な資金を費やしてシェフを雇って展開するというお店だったが、今は例外はあるものの、フランスの三つ星もオーナーシェフだ。そして2006年版で初めてニューヨークに進出、評判が良かったため2008年版でアジア初となる東京版を出した。今はサービスや内装は含まず全て皿の上だけの評価だが、ニューヨーク版が出る少しまでは“総合評価”だった。伝統的な調査方法では、勘定した後に名刺を出して“ミシュランの調査員だが、厨房とトイレを見せてくれ”と話すようだ。フランスの調査員をやっていた方の話では、厨房やスタッフことなどについて聞きたいことがあるときは名乗って話を聞いたり、中を見せてもらったりするという。シェフの皆さんもプロなので、“食事に来ているのではなくて、調査で来ているから目つきが違う”と言う。そこでトイレが男女別になっていないと星はつかないという。また、地下のお店も好まないようで、銀座の高級グランメゾンフレンチは3軒とも1度も掲載すらされていない。そして紹介制と会員制のお店はどんなに素晴らしくても載らない。ただ、銀座の某寿司屋は店内にトイレがないし、すきやばし次郎も地下にあるが、星が付いていた。そうすると素晴らしい寿司が除外されてしまうことになるということで、日本に合わせて星の基準を変えているという話もある」。

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 ただ、経済的理由でオーストリア版が廃版、ラスベガス版・ロサンゼルス版が休刊しています。これについては「ラスベガス版に関しては、ほとんどがホテル内レストランで、三つ星も1軒だけ。3回目以降は休刊という名の廃刊になった。ロサンゼルスはあまり“美食都市”ではなく、サンフランシスコの方がはるかに美食都市だ。今はニューヨークよりもサンフランシスコの方が三つ星が多い。ちなみにシカゴは1軒だけ。ワシントンも郊外に1軒だけだ」と話す。また取材で分かった調査員が安いコースを注文するという行動については「スタンダードなコースでどの程度のものを出せるかも見ていることと、かつては30万部売れていたのは今は5万部にまで下がっているので経費節減の意味もあると思う」との見方を示した。

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 ミシュラン調査員を描いた漫画『エマは星の夢を見る』の作者の高浜寛氏も「覆面で調査を行うのは、店と調査員が対等でなければならないという理念からだ。個人的なアドレスや名前を渡すことで力関係が発生しないようにしているので、星に関しては正当な評価なのではないかと思う。1人で1日8軒調査して回っているので、費用はかかっているはずだ」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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世界の三ツ星店をほぼ制覇した男が激白!ミシュランのナゾ・覆面調査員の生態
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