突然の「一斉休校要請」は本当に必要だったのか?日本中が驚いた安倍総理の“決断”を読み解く
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 安倍総理の突然の休校要請に、28日は各自治体、学校は様々な対応に追われる一日となった。同日夜のAbemaTV『AbemaPrime』では、子どもたちや保護者、有識者から賛否両論の今回の施策について議論した

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乙武洋匡氏(作家、元東京都教育委員):効果と副作用とを天秤にかけて考えていくべきだが、効果はもちろん、副作用についても、政府がきちんと把握できていたのかが疑問だ。会議の映像を見ても、子育てをしてこなかった世代のおじさんしか映っていない。今回の意思決定をした人たちの中に、思いを馳せることのできた人がどれだけいたのだろうか。

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駒崎弘樹氏(NPO法人フローレンス代表):新型コロナウイルスについて中国が出した4万5000人分のデータでは、基本的に50代以上の方々、特に基礎疾患をお持ちの方々が重篤化しやすく、0歳~9歳までの死亡者数はゼロで、19歳まで広げてみてもほとんどいない。まずは高齢者の対策、満員電車や企業の対策をした上で学校、順番というのであればまだ分かる。何を防ごうとしているのか。筋が通っていないと言わざるを得ない。一日の食事のうち、給食が最も栄養価が高く、それによって生きているという子どもたち、あるいは虐待家庭や養育不全家庭で、学校があることで救われている子どもたちがいる。それが1カ月もの間、ずっと家にいることのリスクもある。確かに休校によって感染のリスクは減るかもしれないが、他のリスクは考えなくてもいいのか。

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宇佐美典也氏(コンサルタント、元経産官僚):駒崎さんのおっしゃるとおり、今回のことで困ってしまう人が出てくるのは確かだ。ただ計算上、このペースで感染者が増え続ければ、3月中には重症者を受け入れる感染症病床のキャパを超え、詰んでしまう可能性がある。だから少しでも増加率を抑えるために、多少強引にでも社会の動きを止めに入らないといけない。そして制度上、学校が最も止めやすい。そして政府は今回“子どもたちのために”と言っているが、現実的には社会を2、3週間だけ止めに入っているんだと思う。もっと言えば、そもそも政府には一斉に休校にさせる権限がない。本当に武漢のようになってしまい、電車も止めないといけない、というような事態になった場合を想定し、こうした要請を行い、自治体がそれに応える、というプロセスの実験をしているのではないか。

駒崎:宇佐美さんの現状認識はよく分かる。ただ、打ち手としては最悪だった。僕が経営しているクリニックでも、医師や看護師の中には今回のことで働けなくなるという人が出てきている。医療のキャパを広げなければいけない時期に医療者や福祉の職員たちが働けなくなるというのは合理的な判断だろうか。

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石川和男氏(元経産官僚、政策アナリスト):実行すれば大混乱になる。学校休校も大混乱になると思うが、官邸の中で優先順位をつけようとした時に、電車やテレワークの進んでいない企業ではなく、学校だ、と瞬間的に決断したのだろう。僕には政治家の経験はないが、政治家に政策を投げた経験はたくさんある。振り返ってみると、特に緊急時の場合、予算枠などがプロセス無く、瞬間で決まってしまうことはある。そこから一旦やってみて、ダメなところ、穴があったところを埋めていくというプロセスがこれから始まる。

平石直之アナウンサー:先行して休校が始まった北海道では、十勝地方唯一の感染症指定病院である帯広厚生病院で看護師170人が子どもの面倒を見るために出勤不能になっていると報じられていて、予約のない外来診療を見合わせるという事態になっている。

宇佐美:僕は仕方がないと受け止めているが、駒崎さんのおっしゃることも、平石さんのおっしゃることもわかる。ただ、今は医療キャパを上げなければいけないのではなくて、感染症対策のキャパを上げなければいけない事態だ。そして、それは人数というよりは施設の問題だ。インフルエンザや風邪の患者は減っているので、空いた一般の病床を感染症対策に回し、そこにリソースを集中するフェーズだということだ。

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平石:報道によれば、官邸サイドからの一斉休校の打診に対して、実施困難だという返答をしたが、最終的には官邸主導で進めるということになったようだ。クルーズ船の対応や大規模イベントの自粛要請が専門家会議の結論を持って出ていたのに比べて、今回はそれをすっとばして総理が動いたという印象がある。

内田良氏(名古屋大学大学院准教授):「学級閉鎖」ならあちこちの学校で実施されているが、局所的で短期間だ。それが今回は全国一斉に、しかも3週間という要請なので、影響の大きさが全く違う。自治体によっては学童を頼ることができず、家庭に依存せざるを得ないとなれば、その負担は夏休みなどとは全く事情が違う。そのことは理解しなければならない。

駒崎氏:夏休みの場合は学童が終日預かってくれるが、基本的には平日の放課後だけだ。営業日でいうと金曜日しかない中、月曜日からの人繰りができるだろうか。なぜもう少し準備期間を置けなかったのか。

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宇佐美:僕もそうだと思うが、感染が広がり始める兆しが2月10日くらいから出てきた。それから2週間あったので、本気でやれば2月20日くらいには要請を出せたかもしれない。しかし本当にその決定ができたかといいえば、かなり困難な要求だと思う。その意味では100点でなく60点くらいの政策になってしまったかもしれないが、仕方ない部分はあると思う。

駒崎:100点満点である必要はないが、決定に至るプロセスが開示されていないのが問題だ。今日(28日)、自民党青年局の方々に呼ばれて話をしたが、文科省の担当者に“なぜ感染を防ぐために学校を休校にするのか”と聞いても答えられなかったと言っていた。専門家の意見も聞いていない、エビデンスにも基づいていない。プロセスも開示しない、それでいい政策ができるのか。後で検証ができるのか。

宇佐美:そもそも今回のことは役人レベルで決められるような話ではなかった。僕は当初からこの短期間で、しかもオープンプロセスで議論して政策を決定するためには、国会で議員が主導して進めるしかないと言い続けてきた。しかし、国会では一切進まなかった。だからこそ、今回のような判断が行われてしまった。法律に則っていないし、議論も行われていないし、公開もされていない。めちゃくちゃだ。決して良い前例ではない。このような状況に追い込まれてしまったというのは日本の政治不全から生まれてしまったものだ。そして、議論はデータに基づいて行われなければならない。政府も国会も頼りにならないからこそ、テレビ番組などでは専門家を集め、具体的な議論をしなければならない。このまま安倍総理の緊急決定権だけが雪だるま式に膨らんでしまえば、それこそ民主主義の危機だ。

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石川:突然だったというのはその通りだ。プロレスラーでも子どもに突然殴られると失神すると言われるが、予めスケジュールが分かっていれば学校でも家庭でも体制についての相談ができる。それが今回は週明けの月曜日から。これは良くないと思う。ただ、これは政策だ。政策というものは賛成意見も反対意見も踏まえて総合的に考えて出されたものだし、撤回もしないと思うので、今から文句を言っても仕方がない。ここからは次に何をやっていくか、ということを上乗せの対策をどんどん出していく方がいい。だからこそ自治体ごとに対応も異なっているし、駒崎さんの様に現場を知っている人が声を上げていけばいい。

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駒崎氏:たとえば図書館などを子どもたち向けに開けてほしい。コンビニやスーパーのイートイン、あるいは公園といったところには性犯罪者がいるかもしれないし、事故・事件に巻き込まれる可能性だってある。それならば本を読んだり、司書と話したりできる安全な場所を確保すべきだ。そして、学校で預かる場合、ぜひ給食は出してほしい。調理員だって、いきなり来週から仕事はないと言われてしまってえいる。非正規の人なら、いきなり所得が断たれることになる。そして、非正規雇用の家庭や一人親家庭の所得補償だ。2カ月に1度、3カ月1度の児童扶養手当て給付に載せて払うということもできると思う。そして、感染を広げたくないのであれば、なにがセンターピンなのか、どこをきちんと手当てすれば感染が広がらないのかということをきちんと公開しながら専門家の意見を聞きながらやっていくべきだ。たとえば今からでもオンライン診療を解禁すると言ってくれれば、すぐできる。そういう本質的なことに政治的資産を使ってほしい。

 突然の“休校要請”から一夜明けた28日の国会では、国民民主党の渡辺周衆議院議員からの「収入が減ったことに対しても、政府が、政治が責任を取る。そこまでの決断でやったということでいいか」との追及に対し、安倍総理は「経済界にも有給休暇を取りやすいように対応して下さいということをお願いする。収入が減少する時のための対応についても検討しているところだ」と答えた。安倍総理は会見でどう説明し、そして政府からどのような対策が示されるのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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