「“社会風刺”をやるには、半分の人に嫌われなければダメだ」ザ・ニュースペーパー松下アキラが語ったお笑いと政治
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 「誰も傷つけないお笑いの方が見ていて楽しいし、気持ちいい」。そんな今どきの風潮に逆らい、「政治について物が言いにくい感じや、表現の自由がちょっと脅かされている現状に対して違和感を持っている人ってたくさんいると思う。そういう人と一緒に、これが主流だぞという風に思わせられるようになりたい」と、“社会風刺”の要素を積極的に盛り込むのが、「お笑いジャーナリスト」のたかまつななだ。

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 昨年には参院選前に投票率の低い若者を挑発する“逆メッセージ動画”を投稿、400万回近く再生された。今月には全てのネタを社会風刺で統一したライブ「検閲上等」を開催、「桜を見る会」や、政治家の発言を揶揄しつつ、最後は観客に向かい「政治家を笑ったつもりかもしれないが、それは同時に自分たちのレベルを笑ったということなのだ」と投げかけるフリップネタ。さらに、“ネトウヨ”の彼氏と政治思想をめぐって議論する女性を主人公にした一人コントを披露した。

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 本音では「お笑いが苦手」だというが、それによって人々に社会問題を伝えることができるのではないかと考え、高校生時代から社会風刺ネタをやりたいと思っていたという。しかし「売れたら好きなことができる」という先輩のアドバイスに従い、“お嬢様言葉”のネタで一躍テレビで人気者になった。「やっとこれで社会風刺のネタができると思ったら、お嬢様言葉しか求められなかった。このままではダメだと思ったが、自分に何ができるのか、何ができないのかが分からない状態だったし、踏み出す勇気もなかった。そして去年になり、将来やりたい方向性に行けるよう、覚悟を持ってライブをやろうと思った。まだまだ手探りの状況だが、600人くらいの人が来てくれて、リピーターも多く、手応えは感じている」。

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 また、「お笑いジャーナリスト」という斬新な肩書について問われると、「伝える手段としてお笑いの舞台だけを選んでいるわけではない。ジャーナリズムを選んでいる時もあるし、YouTubeを選んでいる時もある。取材することで伝えるメッセージが磨かれたり、ネタにする内容の素材がよくなったりする。だからナイツ爆笑問題とよく比較されるが、目的が全然違うと思っているし、お笑いの方面の人からもジャーナリストの方面の人からも批判されるので、新しい名前を作った方が良いのかもしれない」と説明した。

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 たかまつのネタや説明を聞いた作家の乙武洋匡氏は「障害者も含めたマイノリティのことを伝えるためには、色んなチャンネルを持っておいた方がより多くの人に伝えられると思う。本を読む人が多いなら本を書き、テレビを見る人が多いならテレビに出る。直に話を聞きたいという人が多いなら全国を回って講演会をやる。では、なぜ私がお笑いには手を出さないかというと、めちゃくちゃテクニックがいるから。その意味では、たかまつさんはチャレンジャーだと思う」とコメント。

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 一方、紗倉まなは「私は風刺ネタは好きだが、政治に関するテーマは見る人を選ぶ部分があるし、望んだ通りに受け止めてもらいづらいという問題もあると思う」、元経産官僚の宇佐美典也氏は「政治家と接していた経験もあるからだが、“私はあなたたちとは違う”という、いわば一段高い場所からマウンティングされているように感じた」と指摘する。

 こうした課題について、たかまつは「森友学園の問題を扱おうとしたときに、やはり森友のストーリーが分かっていないときついなと思い、苦労した。この問題を、誰が、どのくらい知っているのかということについてはいつも悩んでいる。知らない人を置いていくのか、あるいは社会風刺ネタと謳ってしまえば、興味のない人は来ないと思う。でも、高校生くらいの子には笑ってもらえるように努力したい」と話した。

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 結成30年以上で時事ネタを得意とする社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の松下アキラは「私は俳優として鳴かず飛ばずでこの世界にたどり着いた。いわば誰もやらない隙間産業。あなたみたいな人に来られたら仕事がなくなる」と冗談を飛ばした上で、「風刺を見てスッキリする人がいる反面、その対極には不快に思う人が必ずいる。そこの覚悟を持ってやらないとダメだ。そこがストレスでもあるが、不快だという意見は真摯に受け止めた方が良い。ニュースペーパーの場合、対象にした人物の良いところもいっぱい見ようとする。その中でおかしいところがあれば、おかしいよねと言う。もちろん政権側の批判もするが、野党側の批判もする。だから特定の誰かのことが大嫌いというわけではないし、批判したとしても愛する部分もありつつ、ちゃんとしてよ、という思いでやっている。だから世の中に一石を投じようという、たかまつさんのお笑いの感じとは違うかもしれない」と話した。

 さらに松下は「細く長くやってきたというか、長くやるために細くやってきた。とにかく風刺をやるには、スターになろうなんて思ってはダメだ。人気者になろうと思った瞬間にダメになる。むしろ、半分の人には嫌われなければダメだ。だからこそ僕はライブにこだわる。そして30年以上、年間4、5万人くらい動員するが、増えることは絶対にない。そして、毎日もがいている。常にニュースは動くので、1個の鉄板ネタをずっとやるわけではない。その分だけ新しいネタを作っていかなければいけないし、それは苦しい。だから今まで何百人というキャラを今まで演じてきた。本当に苦しい、茨の道だ」と語りかけた。

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 テレビ番組のプロデューサーとして80年代から数々のバラエティ番組を手がけてきた土屋敏男・日テレラボシニアクリエイターは「最近の“傷つけない笑い”も、試行錯誤の中で見つけたスタイルだと思う。やはり人がやっていないことをやるのがお笑いで一番大事なことなので、風刺や政治はチャンスだと思うし、日本人が笑わないというわけでもないと思う」と指摘。

 「よく“日本は風刺や政治をやらないからダメだ”と言われるが、それは違うと思う。イギリスでも、最初に王室をネタにした勇気あるコメディアンがいたから、それがスタンダードになったはずだ。自分で言えば、女子高校生に“今の首相は誰か”と聞いたら、3分の1くらいが答えられなかった。そこで『進め!電波少年』では首相官邸にアポなしで行くことを考えた。あるいは地球温暖化についても、“牛のゲップを吸いきりたい!”みたいな企画をやってみた。最近では村本大輔君が『THE MANZAI』で風刺をやったが、技術があって面白かった。しかし、もちろん嫌だという人もいるし、お年寄りは何を言っているかわからなかったかもしれない。それでも、あのような勇気が積み重なって文化ができて、笑いになっていくのだと思う。だからこそ、笑ってもらえるからこそ通じるということで、そもそも人を笑わす技術を身に付けなければならない」とエールを送った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:たかまつなな、松下アキラが「政治ネタ」を披露

「笑いを通して社会問題を伝えたい」 風刺ネタは面白い? 笑える境界線とは
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