田代まさし被告に判決 繰り返される薬物での再犯…防止に必要なのは刑罰か治療か
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 覚せい剤を所持し、使用したなどの罪に問われていた田代まさし被告(63)に対し、仙台地裁は4日、懲役2年6カ月、このうち6カ月について2年間執行を猶予して保護観察を付ける有罪判決を言い渡した。そして同日、2018年4月に自宅マンションで覚せい剤を所持していたなどとして逮捕された歌手の槇原敬之容疑者が勾留期限を迎え、起訴された。

 2人はいずれも再犯。近年、薬物をめぐって相次ぐ有名人の逮捕に、「日本は違法薬物に対する罪が軽すぎる」「牢屋にぶち込んでもヤク中は克服できない」「厳罰化を訴えている人は冷静になって。タバコ依存者も刑務所で解決するのか」「新しい薬物依存者を増やさないことが重要。それには厳罰化が必要」等、厳罰化を求める厳しい意見は根強い。

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 暴力団や反社会勢力の情勢に詳しい作家の沖田臥竜氏は、田代被告の発言を引いて「“止められない”“治療の途中だ”と言っている時点でダメだ。好き勝手覚せい剤をやって、その挙句に“病気だ”と言われても、世間では通用しない。そして、止めることがゴールではない。刑務所に行こうが、執行猶予が付こうが、本人が社会復帰をどこまで考えているかだ。仕事をし、生活を送らなければならない。そこを目指さなければならない。刑務所や仮釈放中などにもプログラムはやっているが、“早く出たい”という意思の問題になっていて、あまり意味がないと思う」と話す。

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 こうした点について、刑事政策に詳しい立正大学法学部の丸山泰弘准教授は「その人が抱えている社会的問題を解決しつつ、その人に合った支援が必要だ」との立場を取る。「国連やWHOは、そもそも末端使用者に対して本人の意思の問題だとか、差別を引き起こすような関り方は止めていこうというスタンスを取っている。また、販売者や製造者への厳罰化についても、彼らにも生活があって、それしか行きていく方法がなく、結局は製造・販売のルートは止まらないというのが世界の潮流だと思う」。

 現在、アメリカでは再犯防止を目的とし、裁判の過程で薬物依存者に回復プログラムを受けさせ、依存からの回復を支援する裁判制度「ドラッグ・コート」が存在するという。

 「逮捕後、通常の裁判を受けるか、薬物専門の“ドラッグ・コート”の裁判を受けるかという選択が与えられ、弁護士とソーシャルワーカーが各々のメリット・デメリットを説明する。ドラッグ・コートに参加すると、裁判の途中で色々な回復プログラムを受けることができる。良好に進めば、裁判や尿検査の頻度が下がったり、職探しや家族との関係を良好にするためにソーシャルワーカーのサポートを受けたりすることができる。裁判が打ち切られれば前科としても残らないし、そのことが社会復帰もしやすくなる。ただ、多くの場合、通常の裁判を選ぶ方が多いようだ。なぜなら、そっちの方が圧倒的に早く終わり、楽だからだ。そして刑務所に行き、ただその時間を過ごして帰って来る。そのため、ドラッグ・コートを受けたいという人は、それなりに意思が強い人だろうという指摘もあるし、再犯が減らないような政策に自分の税金が使われるのは良くないということで反対している人もいる」。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「犯罪全般に言えることだが、再犯には仮出所時後のものと満期出所後のものがあり、前者は家族が支えてくれるようなパターンが多い。実際、薬物では仮出所後5年以内の再犯率が44%くらいなのに対し、満期出所後の場合は60%くらい。この15%の違いは、やはり社会的な支援やつながりがあるかどうかだ。そう考えると、厳罰化よりも社会復帰のためのサポートを手厚くすることが大切だ。初犯だからといって執行猶予を付ける必要はない。ただし刑務所では社会復帰のための階段を作ってあげる方が建設的だ」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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自分自身の責任?病気? 相次ぐ有名人による覚せい剤の再犯に厳罰化はストッパーになるのか
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