競輪に「顔見せ」というのがあるのをご存知でしょうか?古くからの競輪ファンは「脚見せ」のほうが馴染み深いかもしれません。「地乗り」なんて呼ぶ人もいます。選手が最初に客の前で顔を見せるのはいつか?……そうです。選手紹介のことです。
前レースの終了直後(出走予定時刻の約30分前)に審判員の合図で競走路に入った選手たちが、バンクを軽く2、3周するのが選手紹介です。どんな選手が走るのかを紹介するというよりも、どんな戦術で行くのか、どの選手とラインを組むのかを示す場として設けられています。
そこでは前日に新聞記者等へコメントした通りのラインを組んで走るのが基本であり、“競輪道”に照らし合わせれば本番でもコメントした通りのラインを組んでコメントした通りの戦術でレースをしなければなりません。
そう考えると予想紙や予想サイトの出走表にあるコメントと並び予想があれば見る必要がないと思ってしまうファンも少なからずいます。
しかし予想の精度を高めたいのならば「顔見せ」は見たほうがいいというのが今回のお話です。
ほとんどの選手がまず間違いなく並び予想通りのラインで走るでしょう。しかし単騎の選手はどうでしょうか?
ひとりで走ると言っている以上はひとりで走り、いろいろなラインの後ろを自在に動き回るというのが単騎の基本戦術になります。そしてどこかのラインの後ろから最終バックで捲りを放ったり、最終直線で追込みをかけたりして勝利を目指すのですが、レースが動き出すまでの周回で後ろに付いておくラインは決めているはずです。
選手紹介で単騎の選手はそのラインの後ろに付いて回ることが多いのです。
しかも2車ラインの後ろに付くことが多く、そうなると実質3車ラインになり、後ろから来るラインのブロックをするといった仕事はしないにしても2車より長くて超えにくくなるため、レース展開予想が少なからず変わります。なので「単騎の選手がどこに付いて回っているのか」を顔見せで確認するのはとても重要となるのです。
もうひとつ、確実に見ておきたいのは「補充選手がいたとき」。
追加選手と違って開催中に補充される選手は前日コメントを出していなかったりします。予想紙や予想サイトの記者なら、メンバーを見ればどのラインに入るのかはおおよそわかるので、並び予想は出せます。ただ、コメントを出していない以上、実際はどこに付くのかわかりません。それを確認するのです。これは見ないと予想が立ちません。
では、単騎の選手や補充の選手がいなければ見なくていいのかというとそんなことなく、他にも予想に役立つ情報はいろいろあります。
例えば「仕掛けどころの確認」。
選手はラインを示せればいいからとダラダラ走って帰るわけではありません。選手にとってはバンクコンディションを確認できる最後のチャンスですから、いろいろと試します。1センターを上って駆け下りるラインがあったら、何を試していると思いますか?……そうです。バックで仕掛けようとしているわけです。ジャンでかますか、最終バックから捲りを打つのか。逆に4コーナーのカントを使っているラインがあれば「ホームがまし」と推測できるわけです。
単純に選手のやる気も計れます。背筋を伸ばしていれば調子よさそうに見えるし、うなだれていれば悪そうに見えます。ただ、これに関してはファンではなく他の選手に対しての「フェイクアピール」の可能性もあるので要注意です。
それに対して隠しきれないのは「テーピング」。太ももやふくらはぎにバリバリテーピングしていたら、どこか痛みがあるのは間違いないでしょう。大勝負にいこうと思っていたのなら張り額を落としたほうがよいかと。ちなみにラインを組まないガールズケイリンの顔見せは、ホームまで出てきて自転車を降りて並ぶといった文字通りの「顔見せ」なので、テーピングや乗って帰るときの動きで調子の良し悪しを見極めましょう。
というわけで、「顔見せ」の重要性がおわかりいただけたでしょうか?
そこまで要素に入れるのは考えすぎだという方もいらっしゃるかもしれませんが、考えすぎれば考えすぎるほど予想が深まって楽しくなるのが競輪だというのもお伝えしておきます。