WHOが「パンデミックにあたる」との見解を示す中、避けなければならないのが国内の医療体制の崩壊だ。日本全国にある「感染症指定医療機関」の病床数は、今のところ5373床となっている。
12日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した、厚生労働省で医療政策に携わった経験もある坂元晴香・東京大学大学院特任研究員は「今、日本の対策の中心の一つが、ハイリスクと呼ばれる方々の重症化をいかに予防できるかという点だ。その意味でも、医療崩壊を防ぐということが非常に重要だと思う」と話す。
「何を成果の指標にするかという議論はあると思うが、一つには、他国と比較して、亡くなる方が急速に増えているわけではない。つまり、重症化予防という意味では現場の医療機関を中心に、かなり持ちこたえて頑張っていると思う。ただ、漏れ聞こえてくる話では、特に重症例を診ている現場はかなりぎりぎりのところで対応しているということだ。これから新たに感染し、その中で重症化する方が一定数は出てくる。そのための余力を残しておかなければならないということを考えると、現時点で無駄にできる医療資源はもうないと思っていた方が良い。5373という病床数も、コロナの方だけに使える病床ではない。人工呼吸器などに繋いで治療するためには、非常に高い専門性が必要になるので、医師だからといって誰でもできるものではないし、付随する医師や看護師の人数も割かれることになる。心筋梗塞や脳卒中などの重症の患者さんは待ってはくれないので、そういう方々の治療も並行してやるとなると、キャパシティがあるという問題ではない」。
他方、PCR検査などをめぐって、メディアに登場する専門家の間で意見が分かれているように見えるのはなぜなのだろうか。
「やはり研究が進んでいない新しい感染症ということが理由の一つだと思う。ただ、感染症や呼吸器、肺の疾患、集中治療の領域の先生、あるいは私のように公衆衛生と呼ばれる分野の医療職の間では、それほど意見はずれていないのではないかと感じている。そこで医療者の意見が分断して見えているのであれば、それは伝え方の問題もあるのかもしれない。パンデミックを防げたのではないかという意見についても、振り返れば誰でも何でも言える。今もヨーロッパを中心に拡大しているのを見ると、全く流行しないようにするというのは難しかったのではないかと思うし、その時々でできることは世界的にやってきたのではないか」。
また、報道のあり方について、聖路加国際病院QIセンター感染管理室の坂本史衣マネジャーは11日、「確かに最初の段階では、どういう人がどこで感染したかといった情報の提供、注意喚起は大事だ。しかし、新たに感染者が発生したという話を伝えるだけでも、ビジュアル、声のトーン、音楽に演出が入っていると思うし、それが連日になると、そこら中に新型コロナの患者が歩いているという印象を受け、外に一歩でも出ればどうなるか分からないというようなイメージを持ってしまう。特に昼間のテレビをご覧になっているようなハイリスクの層に、そういう方が多いのではないか。今は怖さを強調する段階ではないと思う。個別の感染症例を緊急速報的に報道するよりも、増えている、減っているというトレンドや、こういう対策をやった結果、どのくらい効果が出てきているかなどの1日のサマリーみたいなものをメインにする時期だ」と指摘していた。
坂元氏も「専門家会議等の発信を見ると、まだ国内の蔓延をまだ阻止できる段階にあるのではないかというのが見解として出ている。その一つの目安として、19日にどういうメッセージが出てくるのかに注目している。一方、やはり経済的な影響、それによる健康への影響が懸念されるので、どこまで自粛などを求めるのかについては、非常に難しい判断を迫られると思う」と話し、報道に対しては「厚生労働省を中心に、国民の皆様へのお願いを流しているので、そういったことをより噛み砕いて分かりやすく伝えるということをしてほしい。毎日トップニュースで“今日もどこの県で何人出ました”みたいな話はそろそろいらないかなと思う」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:坂元氏による解説
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