3月16日、マット界にビッグニュースがもたらされた。1月4日&5日の新日本プロレス・東京ドーム大会で現役を引退した獣神サンダー・ライガーが、世界最大のプロレス団体WWEの殿堂入りすることが決まったのだ。
WWE名誉殿堂Hall of Fameは、毎年『レッスルマニア』開催に合わせて式典を実施。ライガーも渡米して授賞式に出席する予定だったが、新型コロナウィルスの影響で大会自体がWWEパフォーマンスセンターでの無観客試合となり、関連イベントは中止というアナウンスがあった。
とはいえライガーの殿堂入り自体が快挙だ。日本人レスラーとしてはアントニオ猪木、藤波辰爾以来3人目(レガシー部門では力道山、ヒロ・マツダ、新間寿氏が受賞)。数多くのレジェンドレスラーがいる中でライガーが選ばれたのは、それだけ世界的知名度があるからだ。WWE首脳でもあるトリプルHは、祝福のツイートの中でライガーを「世界を旅し、愛されたスーパースター」と表現している。
ライガーは90年代、当時WWF(現WWE)と覇権を争っていたアメリカのメジャー団体WCWにも登場。ライトヘビー級タイトルを獲得するなど大活躍している。2015年にはWWE系列の団体NXTにゲスト参戦、喝采を浴びた。他にも各国で闘い「ジューシン」の存在は世界中のプロレスファンに知れ渡っている。
ファンはMMAの世界にもいた。現在ONE Championshipの岡見勇信がUFCで活躍していた時、ついたニックネームが「サンダー」。UFCのスタッフ発案で、英語でアナウンスされる際に「ユーシン・サンダー・オカミ」となり、これが「ジューシン・サンダー・ライガーみたいでカッコいい」となったそうだ。
ライガーの魅力は万国共通、誰にでも通じるものだ。アニメのキャラクターを“レスラー化”したビジュアルのインパクト、マスク&全身コスチュームでも伝わる感情。シビアな打撃、関節技と華麗な空中殺法が同居するファイトスタイル。そして何より、プロレスとプロレスラーへの愛が素晴らしかった。
他団体の選手とも積極的に交わり、ジュニアヘビー級の祭典スーパーJカップ開催に動いた。団体の壁もメジャーとインディーの壁も関係なく、ジュニア活性化に尽力したのだ。佐々木健介の欠場で相手がいなくなった鈴木みのると対戦するため、自ら名乗り出てパンクラスに参戦したこともある。
引退を発表してからは「最後にライガーさんと闘いたい」という声に応えてさまざまなリングに上がった。自分のためでなく人のため、ジュニアというカテゴリーのため、そしてプロレスのために闘った。だからライガーはリスペクトされるのだ。
今回の殿堂入りについても「これは僕一人だけのものではなく、応援してくれたファンの皆さん、一緒に闘った選手たち、スタッフ、家族みんなのものです」と記したライガー。その人間性も含めて、間違いなく“名誉の殿堂”にふさわしいレスラーである。
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