3月22日にさいたまスーパーアリーナで開催されたK-1「K'FESTA.3」。大会の最後を締めくくる第20試合で、木村“フィリップ”ミノル(K-1ジム五反田チームキングス)が和島大海(月心会チーム侍)を1ラウンド1分10秒、左フックで撃破。K-1 WORLD GP第3代スーパー・ウェルター級王座決定トーナメントを制し、念願のK-1王者となった。
この大会まで6戦連続KO勝利と、K-1随一のKOアーティストの地位を築き上げてきた木村。この日も1回戦で海斗(ポゴナ・クラブジム)、2回戦でエダー・ロープス(ポルトガル)をKO、決勝戦の和島と3試合連続1ラウンドでKO、試合時間僅か4分22秒で頂点に立った。
トーナメントを振り返ろう。1回戦、新時代の怪物として近年頭角を現してきた海斗戦。長身とリーチを活かした海斗の距離に序盤は慎重だった木村だが、一気に距離を縮めるとアゴへの右ストレート、左フック、右ストレートの連打でダウンを奪い、立ち上がった海斗に左右の連打で畳み掛けKO勝ち。
続くエダ・ローブスとの2回戦。1ラウンド長い足から繰り出す多彩な蹴りが鋭いロープスに、探りを入れることなく木村が猛攻。振り回しぎみの左右のフックでロープスを吹き飛ばす。真っ向勝負の打ち合いでも冷静な木村は、相手のパンチやミドルを交わし見極めると、ボディへ強烈な一撃を叩き込み、右ストレート。さらに踏み込んで渾身の右ストレートを放つとロープスが崩れ落ち大の字に倒れ込んだ。
木村の圧巻のKO勝利に解説席の佐藤嘉洋 も「ヘビー級みたいなパンチですね…」と一言。さらに魔娑斗からも「マイク・タイソンかという感じ」と同階級のレジェンドOBもそのパンチ力に驚きを隠せない様子。
決勝戦の和島戦。1回戦のアワターン・トー.モースィー(タイ)戦での壮絶なローキック対決でスネを負傷し満身創痍のまま続く準決勝の城戸康裕(谷山ジム)の試合に勝利した和島には、それほど余力は残っていなかった。
妥協なくローから入った木村はガードの上から豪腕の右。左ストレートを合わせてきた和島に、グローブのガード上から左フックをテンプル目掛けて放ちダウンを奪うと、回復の遅さから続行不可能と判断した和島陣営からタオルが投げ込まれた。
今回のトーナメントで9試合連続KO勝利というK-1史上前人未到のレコードを叩き出した木村ミノル。この日の盤石の戦い振りには、K-1王者戴冠までの苦悩の間に見に付けたファイターとしての成長を感じさせる大胆にして冷静沈着さを身にまとう王者の風格が備わった素晴らしい戦いぶりだった。
4年前はK-1のタイトル戦線の大本命と言われながらも、ゲーオ・ウィラサクレックや野杁正明といった頂点にあと一歩届かずスランプの泥沼に。総合格闘技との二刀流に挑戦しチャールズ・"クレイジー・ホース"・ベネットに7秒で瞬殺される苦い体験もした。階級を変え試行錯誤しながら、スーパー・ウェルター級で王者まで辿り着いた。
「木村ミノル!彼はどん底を見てるからこその魅力があるよ。クレイジーホースとやって恥をかいているからこその魅力だよ。美しい!」と、逆境を乗り越えて夢へと辿りついた王者を讃えた。
試合後木村は「まだこのベルトを巻いているのが信じられないぐらい、子どもの頃から夢でした。この階級で獲れたのが意味があって、誇り高い気持ちでいっぱいです。僕は解説席のレジェンドに比べればまだまだですけど、魔裟斗選手を超えられるようなスーパースターになるので応援してください」と王者としての次なる大きな目標を掲げた。
この日の試合ですでに偉大な王者へのプロローグは十分に感じられた。木村のふてぶてしいキャラクターを象徴する腰に手をやりアピールするフィリップ・ポーズが3試合3KOのどこでも登場しなかったからだ。ワンデイトーナメントという過酷なミッションの緊張感ゆえの行動とも取れるが、「フィリップポーズ封印」が、この日だけは誇り高きスーパースターらしい振る舞いに感じられた。