京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が個人でサイトを立ち上げ、新型コロナウイルスに関する情報を発信し注目されている。
山中教授が示したのは、新型コロナウイルス対策に関する5つの提言だ。
(1)今すぐ強力な対策を開始する
(2)感染者の症状に応じた受入れ体制の整備
(3)検査体制の充実(提言2の実行が前提)
(4)国民への協力要請と適切な補償
(5)ワクチンと治療薬の開発に集中投資を
なぜ今、情報を発信しようと思ったのか。山中教授は次のように話す。
「1カ月前の2月末、日本は中国を除く世界の中では一番素早い対応をとったと思う。それが、感染が拡大する欧州やアメリカのようになっていないことにつながっていると思っている。しかし、ここにきて日本が欧米や世界に比べて対策のスピードを緩めてしまっているように感じているので、もう一度立て直して対策をとる必要があると考えている」
5つの提言のうち、3つ目の「PCR検査の拡大」は、医療崩壊を招く恐れがあるとの懸念から専門家の間でも意見が分かれてきた課題だ。徹底的な検査拡大が必要な理由について、山中教授はこう説明する。
「1日の検査数は100であったり200だったり、多くて300くらい。いま大阪や東京で1000人感染者が出ても気づきもしない。気づかないから、ある意味日本ではオーバーシュートは起こらない。この状態を早く変えないと、気づいた時には手遅れということになりかねない。もちろん、検査を増やすと軽症者や症状のない方が病院にどんどん行ってしまって、重症者を診ることができないということになるので、無症状や軽症の方は専用の施設に入っていただくということをまず行った上で、同時に検査数を増やす。必ずセットで行う必要があるが、これは喫緊の課題だと思っている」
山中教授は長期的なウイルスとの戦いを見据え、しっかりとした補償を前提とした国民への要請、そしてワクチンや治療薬の開発に力を入れるべきだとしている。また、錯綜する情報についても“証拠の強さ”によって情報を分類し、まとめている。
例えば、正しい可能性が高い情報としてあげたのは「国、地域により致死率が異なる」「効果の証明された治療薬はない」といったもの。一方で、正しいかもしれないが、さらなる証拠が必要な情報としているのが「喫煙者は重症化しやすい」「BCG予防接種が新型コロナウイルスに対しても効果がある」などだ。さらに、証拠の乏しい情報として「暖かくなると感染は終息する」などをあげている。
山中教授は「日本だけこのまま終わるとは到底思えない」と警鐘を鳴らした。
「日米で活動していて、アメリカの情報がリアルタイムで伝わってくる。欧州にも友人がいて、欧州の状況もリアルタイムで伝わってくる。これは大変な状況。同じウイルスで、日本だけこのまま終わるとは到底思えない。私は専門家ではないので『何を言っているんだ』という批判はあると思うが、今はそういうことを言っている場合ではないと思う。1日手を打つのが遅れたら、それが何千人何万人という方の命に係わる可能性があるので、何かできることと思ってこういう発信をしている」
新型コロナウイルスは当初、若年層はかからないとされていたが、国内の発生動向をみると10歳未満や10代、20代の感染も確認されている。また欧米では、アメリカ・イリノイ州で0歳の乳児が死亡、ヨーロッパで10代の死亡が確認されるなど、若年層の死亡例も出ている。
こうした現状と山中教授の提言を踏まえ、社会起業家の牧浦土雅氏は「WHOのテドロス事務局長のアドバイザーを務め、国際専門家チームを率いたブルース・エイルワード氏は『若年層も危ない』と提言している。現在、イタリアでICUに入っている患者の10%は20~40代で、基礎疾患が一切なかった健康的な若者たち。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の調査でも、アメリカの患者の30%は20~40代だとしている。怖いのは、エイルワード氏が言うように、なぜ健康的な若者も重症化するのか一切わかっていないこと」と指摘する。
その上で、できる対応として「現時点で言えるのは『感染しても若者の自分は早く治るから大丈夫』ということではなくて、自分が感染することで家族や友人、恋人、コミュニティ全体に影響を及ぼして、死に至らしめる可能性があるということ。海外では人同士の間隔を2メートル程度あける“ソーシャルディスタンシング”ということが言われているが、日本でも特に若い人たちに率先して広めてもらえれば」と“2m”とプリントされた自作のTシャツを着て訴えた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶映像:「緩んでる」山中教授が“5つの提言”【学君】
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