「即断即決」が得意の3人が集結した。プロ将棋界初の団体戦となった「第3回AbemaTVトーナメント」。4月4日に放送されたドラフト会議で、広瀬章人八段(33)は青嶋未来五段(25)、黒沢怜生五段(28)と20代棋士2人を指名、チームを結成した。趣味が麻雀という共通点があり、短い時間での決断を繰り返すという意味では、超早指しである同棋戦にはピッタリ。まさに趣味と実益を兼ねた「チーム麻雀」が旋風を巻き起こす。
▶映像:予想外の事態も「将棋界初」AbemaTVトーナメント・ドラフト会議
将棋界初の一大イベントで、各チームが特色ある構成になる中、広瀬八段は麻雀でのチームワークを求めた。3人集まっての練習をする上でも「麻雀もする?我々の場合はそうなりますね」と笑って認めたが、単にエンタメ要素だけで選んだ仲間ではない。持ち時間5分、1手指すごと5秒加算という独特な早指しルールだが「フィッシャールールの場合、相手の仕草とかも見ていくと思うので、そのあたりは麻雀と似ているかもしれません」と類似点を挙げた。ぎりぎりの時間になった際は、目の前の指し手だけでなく相手の慌てぶりや手つきなど、ちょっとした様子も勝敗を分ける要素になる。「やっぱり粘り強く指す人は有利なのかなと。最終盤、一発狙っているところとか。うちのコンセプトはそれもある」と、刃を研いでいる。
棋士にとって、時間というものがいかに重要か。たとえばストイックに将棋に向かうことで知られる実力者・永瀬拓矢二冠(27)が過去に出場した際、金をただで取られるところに打ってしまうというミスが起きた。60秒あれば起きないハプニングも、10秒、5秒なら起きる。このルールのおもしろさでもあり、怖いところだ。「フィッシャールールに関しては、安定して優勝するのは難しい。藤井聡太さんは連覇していますけど、藤井さんといえども全部が全部勝っているわけではない」。個人戦だった第1回、第2回を連覇した藤井聡太七段(17)でさえ、1回の対戦で三番勝負というルールの中、何度も追い詰められた。永瀬二冠、藤井七段、増田康宏六段(22)の永瀬チームは優勝候補に挙げられるが、十分に勝負できると読んでいる。
麻雀と将棋といえば、Abemaドリームチームに指名された鈴木大介九段(45)は、最大級のプロアマ大会「麻雀最強戦」で優勝した。麻雀番組にも多くの出演歴がある広瀬八段、仲間に選ばれた青嶋五段、黒沢五段による「チーム麻雀」が優勝をかっさらえば、将棋界の中で、さらに麻雀というワードも盛り上がる。
◆第3回AbemaTVトーナメント
第1回、第2回は個人戦として開催。羽生善治九段の着想から生まれた持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算されるフィッシャールールは、チェスなどで用いられるもの。1回の対戦は三番勝負。過去2度の大会は、いずれも藤井聡太七段が優勝した。第3回からはドラフトを経て構成される3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝チームには賞金1000万円が贈られる。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)