プロ将棋界初の団体戦「AbemaTVトーナメント」のチームを決めるドラフト会議の模様が4月4日に放送された。12人いるリーダーの一人、三浦弘行九段(46)が指名したのは、デビュー早々にタイトル挑戦を果たした新星・本田奎五段(22)と高野智史五段(26)。実は三浦九段、ドラフト当日までこの2人の連絡先すら知らなかった。会議後の囲み取材でも「まずは将棋連盟に連絡先を聞くところですかね」と答えた。早指し戦で若手有望株を指名するのは戦略上考えられることではあるが、それ以前に心の中では「親しい棋士はあえて外す」という決め事を作っていた。
囲み取材で質問を受け、最初に切り出したのはこんな言葉だった。「普段親しい棋士とか研究会をしている棋士をあえて外させてもらいました。過去に1回でも練習将棋をした人は外しました。藤井聡太さんを指名したくても(公式戦で戦ったので)できなかったです(笑)」。理由は、人間関係を大切にしたいから。親しい棋士の中で選んだ人、選ばなかった人が出てしまうことを避けた。「(親しい人を)外すと決めていたら気が楽なもので」。実直を絵に書いたような棋士だ。
年始に行われた「上州将棋祭り2020」。同じ群馬県出身の藤井猛九段(49)と、この棋戦について雑談をすることがあった。「ちょっと聞かれたんですよ。自分を選べってことじゃないと思うんですけど、だから藤井さんには言ったんですよ。『個人的なことで選ぶと、他の人に申し訳が立たないんで』って。そうしたら(指名を)本田奎五段、増田康宏六段って、立て続けに当ててきたんですよ。さすがですよね」と驚いた。増田康六段は2巡目に指名がかぶり、抽選で外した棋士。気心知れた棋士に、見事に読まれた。
裏の理由はありながら、自分が選んだ実力ある若手2人との戦いは大いに楽しみだ。「選ばれた2人はびっくりするんじゃないですかね。(ドラフトで)選ばれることはそうでなくても、私に選ばれたということが。『え?そこ?』ってなると思うんですよ。まず、挨拶からですかね。ご挨拶に伺わせていただきます」。こんなところまで真面目な三浦九段に期待されるからには、若手2人も奮起しないわけにはいかない。
◆第3回AbemaTVトーナメント
第1回、第2回は個人戦として開催。羽生善治九段の着想から生まれた持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算されるフィッシャールールは、チェスなどで用いられるもの。1回の対戦は三番勝負。過去2度の大会は、いずれも藤井聡太七段が優勝した。第3回からはドラフトを経て構成される3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝チームには賞金1000万円が贈られる。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)