新型コロナウイルスの感染拡大に備えるため、安倍総理大臣はきょう、「緊急事態宣言」を発令し、記者会見で説明する。指定する地域は東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏に加え、大阪、兵庫、福岡の7都府県で、期間は1カ月程度となる。
きのう記者団の取材に応じた安倍総理は「人と人との接触を極力減らすためこれまで以上の協力をいただき、医療体制を整えるためだ」と説明。その上で「改めて明確に申し上げるが、日本では緊急事態宣言を出しても海外のような都市の封鎖を行うことはしないし、電車などの公共交通機関も動くし、スーパーなども引き続き営業いただくなど、経済・社会活動を可能な限り維持をしながら、密閉、密集、密接、三つの密を防ぐことなどによって感染拡大を防止していくというこれまでの日本のやり方には変わりなく、これを一層強化、そして徹底をお願いするものだ」とコメント。
また、緊急事態宣言を受け、改めての外出自粛要請や施設の使用制限要請等を含む「緊急事態措置」の実施について説明した小池都知事も、「皆さまご自身、ご家族、大切な人を守るため」として“徹底的な外出の自粛”、“3密”を避ける行動を要請。やむをえず外出する際にも行列などを作らず、2メートルの“ソーシャル・ディスタンス”を取ること、“買い溜め”は慎むこと、さらに「交通機関の運休を要請することはない」とし、性急な帰省などの移動は控えるよう呼びかけた。
■「リーダーの言葉の重みとは大事だと思う」キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授
今回の緊急事態宣言について「“できるだけ早く”ということを申し上げてきたが、すでに東京は感染爆発の初期段階に入っていると思うので、できれば1週間前くらいにやるべきで、すでに遅いくらいだ。6日に表明して8日から、ということだが、2日のロスだけでも感染者は2倍、3倍になることがある。また、全国に人が移動しているので、今回は対象外だった自治体も予見しておかなければならない。始めから広めに緊急事態宣言をしておく、ということでも悪くはなかった」と指摘するのは、世界各国の保健政策の立案・実施支援を行ってきたキングス・カレッジ・ロンドン教授の渋谷健司氏だ。厚生労働省の会議で座長・委員、大臣のアドバイザーなどを歴任。WHO事務局長上級顧問も務める、公衆衛生・感染症対策の第一人者だ。
また、安倍総理や小池都知事の会見について渋谷氏は「グーグルが公表したデータを見ると、これまでの自粛要請の効果はほとんどなかった。イギリスも社会的隔離やイベント中止でやっていたが、全く追いつかなくなったので、結局はロックダウンした。欧州の他の国も同様だ。やはり“今やらないと感染者が急増し、医療も崩壊するし、社会が混乱する”という危機感をきちんと共有せず、“これはロックダウン=都市封鎖ではない”“今までとあまり変わらない”と言ってしまうのはコミュニケーションとしては逆効果なので残念だ。“家にいてほしい、運動もできる”、という強力なメッセージが必要だった」と指摘する。
「リーダーの言葉の重みとは大事だと思う。イギリスではエリザベス女王が国民に向け、第二次大戦中に流行した曲の“We will meet again”という歌詞を引用し、“今は忍んで、また皆さん会いましょう”とう呼びかけた。こちらではそれくらいの覚悟でやろうとしている。他方、暗い話だけではなく、ロンドンではロックダウン2週間目だが、1日1回はジョギングもできるし、スーパーに行くこともやっている。そのようにして、皆で連帯しながら、この新しい生活に慣れていくということも考えていかなければならない時期にきていると思う」。
また、安倍総理は政府の対策本部会合で、感染の有無を調べるPCR検査について、1日当たりの実施可能数を2万件に増加させると表明している。
日本のPCR検査の件数を海外と比較する(海外感染者数:6日午後8時現在ジョンズ・ホプキンス大学)と、米国では検査総数126万7658件(4月2日現在)で感染者数が33万7646人、英国では検査総数17万3784件(3日現在)で感染者数が48万451人、イタリアでは検査総数61万9849件(4月3日現在)で感染者数が12万8948人となっている。これに対し日本(4月4日現在)の検査総数は3万9992件で感染者数が2855人、うち東京は検査総数4586件(都内発生分3日現在)に対し、感染者数は1033人(5日時点)となっている。
これについても渋谷氏は「何度も言うが、基本的にはスピード勝負だ。日本で報告されている感染者数はあくまで氷山の一角であって、見つかっていない感染者、症状のない感染の方がたくさんいる。結局は検査をしていない人が病院来て、そこから院内感染、市中感染が広がり、医療崩壊の危機につながっている。“検査をするから医療が崩壊する“というのはおかしいし、医療従事者を守るためにも検査を早急に拡大しなければならない」と話した。
■「ネットカフェで生活をしている人が4000人いる。生活者の目線を忘れないでほしい」堀潤氏
ジャーナリストの堀潤氏は「LINEと厚生労働省が共同で行った調査では、テレワークをきちんと導入しているという人は5%程度に過ぎなかった。今も通勤電車は大変混雑している。スペインのマドリードに住む友人は、“位置情報が把握されているので、家からある程度離れると警告を受ける”と話していた。そのくらい厳しく個人の行動を管理している国や地域もある。それができない日本で効果が出るかどうかは我々の意識次第だ。芸能人の方々の感染も明らかになり、若い世代を中心に危機感が共有され、“今はちょっとやめようよ”という呼びかけがSNSで広がって来ている」とコメント。
その一方、「ご自身も感染したボリス・ジョンソン首相は“そこに社会はあるんだ”というメッセージを出した。日本の政治家の皆さんにも生活者の目線を絶対に忘れないでほしい。例えば“この1カ月間はある程度の生活水準を維持できるので、安心して休んでください。生活水準はあまり変わらないので休んでください”というアナウンスも求められると思う。ドイツでは休業補償を申請して、2日後には振り込まれるという。12億円を用意して、家を失った方々の手当をするという小池都知事の話は良かったと思う。しかし瀬戸際に立たされている方々の生活支援をどうするかというところは濁していた。例えば東京都の調査では、ネットカフェで生活をしている人が4000人いるという。国と都がもう一度歩調を合わせて、生活者の生活支援、企業人、個人事業主、中小企業の経営者への支援策のスピード感を持った拡充というものをしっかりと練り直して欲しいと思う。それが合わさって自粛要請が効くと思う。今は性善説に則って“私たちで頑張りましょう”と言っているだけだ。また、メディア人の1人としては、国に“出してくれ”と言うだけでなく、どうすれば支え合えるのかという“共助”についての知恵出しもしたい」と訴えた。
この点については渋谷氏も「イギリスの場合、休業時の80%を補償するというメッセージを出しながらロックダウンに入った。ただ、その議論をしている間に3日、4日、1週間が経ってしまう。これも危機感とスピード感が本当に求められる」と話した。
カンニング竹山は「自粛せずに平気で遊びに行っている方もいると思うので、改めて意識改革をしなければいけないと思う。バラエティ番組も含めて仕事ができない我々としては厳しいことだけれど、一生続くわけじゃない。だからメディアで働く我々が率先して皆さんにアナウンスすることもやっていかなければならないのではないか」とコメントした。
幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏は「行動変容を促すための緊急事態宣言なのに、第一に“変わりません”と言ってしまうのは、コミュニケーションとしては良くないと思う。これでは1カ月、心が耐えられるのかという気がする。感染症なので不透明な部分もあるが、“とりあえずはこれだけの期間、これだけの補償をやるから、こうしましょう”と言わないと、真っ暗闇のトンネルをただただ歩いているという感じになってしまうと」懸念を示す。
「専門家の意見とは別に安倍総理や小池都知事などに求められているのは、シンプルで分かりやすいメッセージで皆を一致団結させることだと思う。それが政治家の役割だ。ラグビーのワールドカップの“ワンチーム”という言葉が流行語になったように、まずは1カ月、頑張ってみよう。あとは専門家の方々が細かいところを言えばいい。7日の安倍総理の会見ではそういうメッセージを出して欲しい」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:緊急事態宣言が発令へ 渋谷教授に聞く
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