将棋盤を挟むまでに戦いが始まるのだとすれば、このチームほど重厚感に溢れ、プレッシャーをかけられるところはない。プロ将棋界初の団体戦となった「第3回AbemaTVトーナメント」。リーダーの一人である佐藤康光九段(50)は、4月4日に放送されたドラフト会議で森内俊之九段(49)、谷川浩司九段(58)と永世名人の有資格者を続けて指名した。自らも名人経験者で、現在は日本将棋連盟会長。ドラフトの感想を聞かれても「強そうなチーム?あんまりないですね」とニヤリ。切れ味あるトークでもファンを喜ばせる“会長”佐藤康九段が、熟練の技と経験で若手が集う超早指し戦で怒涛の快進撃を狙う。
▶映像:「将棋界初」ドラフト会議開催!藤井聡太七段に1巡目で複数チームから指名が
3人は公式戦で何十回と戦ってきた間柄。また谷川九段は日本将棋連盟の前会長。森内九段も専務理事の経験があり、対局以外でも将棋界のために、ともに貢献してきた人々だ。佐藤康九段は「人間的にも尊敬できる方、よく戦っている方をメンバーに選びました」と指名理由を述べた。持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という超早指し戦。判断力に勝る若手が有利と言われているが「歳を取っても強いんですというところを見せたいですね」と、コメントにも若手にはない余裕が含まれている。
棋士としては若手に負けない将棋を見せたい一方で、将棋界の長としては20代、30代が覇権を争う状況を頼もしくも思っている。かつて自分たちの世代が、大先輩の壁を打ち破ってきた経験もある。「いつの時代も若手、有望な棋士が出てきて、将棋界の次世代を担います。藤井聡太七段が出てきて、時代を作るんではないかという動きもありますが、藤井七段より後にプロ棋士になった本田奎五段がタイトルに初挑戦もした。時代を作ってもおかしくない候補がたくさんいる」と、今後の盛り上がりへの期待も膨らむばかりだ。
将来有望な若手たちと数多く対戦し、その力が本物かを体感するにはもってこいである今大会。「実は役員になる前、研究会ではフィッシャールールで結構やってたんですよ。持ち時間は5分じゃなかったですけど。なので全く不安はないです」と、自信もたっぷり。ライバルチームが見当たらないという発言を、単に大会を盛り上げるためのリップサービスだと思っていたら、それは大きな間違いだ。
◆第3回AbemaTVトーナメント
第1回、第2回は個人戦として開催。羽生善治九段の着想から生まれた持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算されるフィッシャールールは、チェスなどで用いられるもの。1回の対戦は三番勝負。過去2度の大会は、いずれも藤井聡太七段が優勝した。第3回からはドラフトを経て構成される3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝チームには賞金1000万円が贈られる。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)