「3月12日を始める。あの日の続きを始める」。震災で大きな被害を受けた福島県大熊町。事故が起きた東京電力福島第一原子力発電所、通称「イチエフ」を抱える町だ。あの日から9年が過ぎても、ほとんどの町民が戻っていない中、再びこの町で生きようとする人たちがいる。
福島県の沿岸部のほぼ中央に位置する大熊町。福島第一原発の原子炉6基のうち1号機から4号機が立地していたため、原発事故により、約1万1500人の町民はふるさとを追われ、全国に散り散りに避難することを余儀なくされた。役場の機能や学校なども約100km離れた会津若松市に移され、長い避難生活が始まった。さらに町は放射線量に応じて、避難指示解除準備区域(中屋敷地区)、居住制限区域(大川原地区)、そして帰還困難区域の3つの避難区域に分けられた。