新型コロナウイルスの感染者数が世界で2番目に多いスペインから日本に帰国後、2週間のホテル待機を経て、自身のTwitterで日本の危機意識に警鐘を鳴らした藤田実桜さん。スペインでロックダウンを経験した藤田さんに今の日本はどう映っているのか。ABEMA『けやきヒルズ』のウェブ取材に応じ明かしてくれた。
藤田さんは、スペインでプレーするフットサル選手。しかし、スペイン国内では感染が止まらずリーグが無期限の中断となったため、一時帰国を決断した。ロックダウンされたスペインの実情と帰国後に感じた日本の危機意識について、次のように話す。
「(スペインの)街ではパトカーがパトロールしていたり、軍の車が走っていたりするような状況だった。厳戒態勢が取られているからこそ『本当に危ないんだな』と危機感を覚えたのはある。出国した空港と乗り換えをした空港では、10分おきに1回くらいは『前の人と距離を空けてください』とソーシャルディスタンスのアナウンスがされていた。しかし、成田空港に着いてからそういうアナウンスはされていなかった印象。あまり距離のことは言われずに詰めて並んでいる状況で、正直日本に帰国してからの方が感染するリスクが高いと思って怖さを感じた」
日本では緊急事態宣言が出される直前だったが、飛沫感染などを防ぐためのソーシャルディスタンスが保たれていないと感じた藤田さん。さらに、ニュースで目に飛び込んできた映像で不安はさらに大きくなったという。
「(スペインでは)緊急事態宣言が出されて外出自粛ではなく外出禁止とされていたし、ランニングなどで気軽に外に出ている人にも罰金制度があったので、街にそんなに人はいなかった。日本に戻って来てからは、気軽に遊びに行っている方とかもニュースで見たので、ちょっと不安だなと思った」
接触感染を避けるため、ソーシャルディスタンスを取る以外にも外では手袋を着用するなどの対策もできると指摘する藤田さん。「このままでは海外のように日本も感染が拡大するのではないか」とメッセージを発信した。
「スペインでは、1日に何千人もの方が亡くなっているという情報も出ていたので、自然と危機感は高まっていたという差は多少あると思う。ただ、まず一番は命があることなので、そのために今は我慢しないといけないなと思っている」
■各国で“行動制限”の延長相次ぐ
スペインのほか、世界各国では様々な行動制限が取られている。感染拡大が深刻なアメリカ・ニューヨーク州では、強制的な在宅勤務など住民への制限措置を5月15日まで延長。イギリスでは3月から全国民の自宅待機を指示し、少なくとも3週間(5月7日まで)の延長を決定した。フランスでは、必需品の買い物や通院などを除く外出制限を5月11日まで延長。違反者に罰金を課すところもある。
海外と日本の対応の違いについて、テレビ朝日元アメリカ総局長の名村晃一氏は「法律が異なるので単純に比べるわけにはいかないが、やはり海外の方が厳しい。特にニューヨーク州が日本と違うのは、外出禁止を呼びかける前に飲食店の営業を宅配と持ち帰りだけに制限したこと。それによって街から一気に人が減り、速いペースで手を打っている。それに比べると日本は遅いのではないかという印象を受ける」と話す。
また日本では、外出自粛や休業の要請によって経済的な損失を被る事業者が多数出ていることから「自粛と補償はセットだろ」という声もあがっている。名村氏は「アメリカは補償よりもまず先に『営業をやめろ』とした。お店を開けていたら警察官が来て、罰金が課されてしまう。罰金を払うぐらいなら数少ない収入を求めるようなことはしないということで、みんな店を閉めた形だ」と説明。
日本は対応の遅れが指摘される中、一方で死者数が少ない点を評価する意見もある。「単純に比べられるかというとこれも疑問。特にアメリカは医療費が高く、国民皆保険ではないので、多くの人は病院に行かないということを土台に医療制度が成り立っている。今のように病院に行く人がものすごく増えると、医療崩壊が早く起きてしまい、死者数も増えている。日本は国民皆保険でみんなが病院に行く前提で医療制度ができていて、医療技術や衛生面の安全性も高い。それにより死者数は少なく済んでいるかもしれないが、『これでいいんだ』という証拠にはならない」と指摘した。
では今回、日本が緊急事態宣言を全国に拡大したことはどのように受け止められるのか。名村氏は「国が宣言するなら、本来は全国一斉に出すべきだったのではないか。地域差もあり難しいところはあったかもしれないが、とりあえず大きく構える。それから調整していく考え方の方が、今はいいのではないか」とした。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)
▶映像:コロナ感染のJFA田嶋会長語る現状【学君】
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側