4月19日に配信されたプロレスリング・ノアの無観客マッチで、豪華かつ異色の6人タッグマッチが実現した。武藤敬司&清宮海斗&田中稔に対するは桜庭和志&鈴木秀樹&関根“シュレック”秀樹。武藤、桜庭参戦だけでなく桜庭と“ビル・ロビンソン最後の弟子”鈴木のタッグ、そこに柔術王者の関根も加わるという状態は、さながら“強さの大渋滞”であった。
もちろん最大のポイントは武藤と桜庭、レジェンド同士のマッチアップ。ともにゲスト参戦ではあるが、この顔合わせがノアのリングで実現するというのも意外かつ新鮮だった。1995年10月9日、東京ドームで開催された新日本プロレスvsUWFインターナショナル全面対抗戦。メインで高田延彦を下したのが武藤であり、桜庭はその大会でUインターの若手として第1試合に出場していた。
(武藤の足4の字が桜庭に決まる)
あれから25年を経ての対戦。桜庭はノアでは杉浦貴率いる杉浦軍のメンバーであり、武藤はWRESTLE-1活動停止後、今回がフリー第1戦となる。
やはりお互い意識しあうものがあるのか、試合の先発を武藤と桜庭が買って出た。もし会場に観客がいたら、2人が向かい合っただけで“大爆発”だったはずだ。両者は序盤から重厚なグラウンド戦を展開。桜庭は腕十字、アームロックを狙っていく。武藤も寝技で渡り合うとコーナーでタックル。そのパワーに桜庭は悶絶する。さらに武藤は高田を下して以来の必殺技、足4の字固めも。武藤と桜庭、千両役者同士の闘いはあらゆる場面が“絵になる”ものだった。
(ノア継続参戦に前向きな武藤。ノアの新世代エース・清宮も武藤との対戦をアピール)
試合は武藤が関根をシャイニング・ウィザードで仕留め勝利。柔術家にしてMMAファイターの関根だがもともとはプロレスファンでレスラー志望。負けたとはいえ“武藤のシャイニングウィザードを食らった”というのも感慨深かったのではないか。
インタビュースペースでは、武藤が桜庭について「肉体を使って面白い会話ができた」とコメント。今後のノア参戦にも前向きだ。曰く「こっちはフリー最初の試合だからね。大切にしないとおまんまの食い上げ。必死でやりましたよ。またノアのリングに上がれるように頑張りたいね。ただ俺のギャラ高いからな(笑)。呼べるかどうかだけど(ノアの)親会社が大きくなったのは助かるね」。
武藤ならではの言い回しだが、今後もノア参戦はありそうだ。一方の桜庭も「(武藤とは)またやりたいですね。純粋に楽しかったです」。レジェンド同士の夢対決、その続きに期待したい。
文/橋本宗洋