日本が新型コロナウイルスの感染拡大を止められずにいる中、一時は日に800人を超えていた感染者数を一桁台にまで減少させているのが韓国だ。21日にはプロ野球リーグ「KBO」が来月5日からの無観客でのシーズン開幕を発表、状況次第では観客の入場も検討するとしたほか、企業がオフィスへの出勤を再開させるなど、規制を緩和する動きもみられる。
韓国政府が徹底的に行ったのが、検査に次ぐ検査だ。日本では江戸川区が22日からスタートさせたドライブスルーによるPCR検査も、韓国では3月上旬には実施されており、車を持たない人のためのウォークスルーもできるようにしているまた、感染が確認された場合、軽症者は隔離施設「生活治療センター」へ収容してきた。
また、市中感染者と入国者を管理するアプリのインストールが必須となっており、スマホ、クレジットカード、防犯カメラなどの情報から経路を把握、閲覧可能にすることで市民の接触回避に役立てている。隔離対象者はこのアプリで体調を報告、自宅外へ移動する場合にはアプリで警告し、違反には1年以下の懲役または87万円以上の罰金という対応も取っている。
さらに日本でなにかと話題になっているマスクについても「週に1回、1人2枚まで購入可能。公的販売店などの購入履歴を管理しており、重複購入できない」というルールを定めている。
日本への留学経験もあるチェ・ウニョン氏(釜山在住)は「感染者がどこの食堂に行った、どの地下鉄に乗ったということを知らせ、同じ時間に行った人たちが検査をされるというシステムができている。韓国では支払いにクレジットカードを使うことが多いので、その履歴も使っている。また、マスクは韓国でも初めは足りなかったが、政府が買えるかを決めていて、住民登録番号の下一桁が1と6の人は月曜日、2と7は火曜日に買うことができる。平日に買えない人も週末に買えるシステムになっている。今も学校は休みで、オンライン授業を行っている。企業も在宅を進めている状態だ。検査についても、インターネットですぐに調べることができて、電話で発熱などの状況を説明すればすぐに受けられるようになっている」と話す。
公衆衛生に詳しく、WHO事務局長上級顧問も務める渋谷健司・キングス・カレッジ・ロンドン教授は「検査と隔離という、基本を徹底した。検査を拡大し、軽症者は自宅あるいは代替施設で、そして重症者にフォーカスしたという点は、各国も見習うべきところは多々ある。SARSとMERSの経験をしたことによる蓄積があったことも大きいと思う」と話す。
これまでのPCR検査総数を比較してみると、日本が19万824件(4月19日まで)に対して、韓国は57万7959件(4月21日まで)で、1日の最大PCR検査数については日本が9669件(4月14日)に対して、韓国は1万5370件(3月30日)となっている。ただ、日本においては検査数をいたずらに増やすことが医療崩壊を招くとの意見もある。
渋谷氏は「早期に指定感染症に指定してしまったために、陽性が出た人は全員を入院させることになっていたからだ。今は軽症の方は自宅に戻すという形を取っている。懸念していたのは、検査を絞ることで動き回る無症状者が出るため、クラスターが追えなくなることだ。22日には慶應病院からコロナ以外の原因で病院に来た人の6%が感染していたという衝撃的なデータが出た。こういうところから院内感染が広がって、医療崩壊に繋がっている状態だということだ。無症状の人を捉えるには、やはり検査を拡大するしかない」と指摘。
その上で、「改めて、“検査と隔離“という基本に戻ることだ。現在は自治体の衛生研究所を中心にPCR検査をやっているが、他の業務もあってパンクしている。しかし大学や研究所、民間には空いているPCRマシンもたくさんあるので、人の待遇も含めて韓国並みのレベルにすることは可能だと思う。また、マイルドなソフトロックダウン的な方法を日本は取っているが、やはり行動変容は強くないので、だらだら続くと思う。そこで遺伝子とアプリとビックデータという、世界が使っている“近代兵器”を活用できればいいが、日本はどれもできていない。保健師さんが電話をしてデータを集めて類型化するよりも、データを元にどこが危ないのか、誰が近づいたのかを見ていかないといけないと思う」とした。
元経産官僚の宇佐美典也氏は「文科省と厚労省が休んでいる臨床検査技師に復帰を呼びかけているが、コロナの最前線という現場であるにもかかわらず、PCR検査の時給が1500~2000円と、待遇が良くない。“村八分”にされてしまうリスクもある中、これで手を挙げる人はいるだろうか。検査体制拡充のためにも、そういうところを見直さないといけないと思う。また、マイナンバーがきちんと活用されるようになるのも2023年頃になると思うし、緊急事態の国民保護計画も、生物兵器は想定していてもエピデミックは想定していなかった。一朝一夕にはできない、こういう問題を準備してこなかったツケが回ってきていると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMAPrime』より)
▶映像:収束ムード漂う韓国と長期化叫ばれる日本 検査体制が明暗を分けたか
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