プロレスにおける現在の無観客試合は、通常の興行が不可能な状態での“代替措置”ではある。ただ、そんな中でも闘いが続いていけばドラマは生まれる。単に試合をやるだけ、配信するだけでは収まらない。
無観客配信大会の中でタイトルマッチを組む団体も出てきた。プロレスリング・ノアもその一つだ。
恒例のグローバル・タッグリーグ戦は全試合無観客で実施。優勝チームのイホ・デ・ドクトル・ワグナーJr&レネ・デュプリは、すぐさまGHCタッグ王座に挑戦している。19日にネットで配信されたTVマッチのメインイベントだ。
技術的な面ではやはり王者組、丸藤正道&望月成晃のベテランコンビが上。しかし挑戦者組も力強い反撃を見せ、最後はワグナーがムーンサルト・プレスで望月をフォールしてみせた。
この一撃、ムーンサルトではあるが頭から相手の顔面に突っ込むような形で、崩れた格好だからこそダメージも大きいのだろう。試合後の望月は「ずいぶんデンジャラスなプロレスするな」。丸藤も「伝わりづらい雑さにやられた」と敗戦を振り返っている。
リーグ戦優勝から王座奪取と、この外国人コンビ「杉浦軍インターナショナル」は一気にタッグ戦線のトップへ。その光景は、無観客ではあったが中継で多くのファンが見るところとなった。
シングル戦線にも新たな動きがあった。拳王率いるユニット「金剛」の新メンバーとして征矢学が登場。ノア正規軍との12人タッグ戦に得意のラリアットで勝利すると、GHCヘビー級王者・潮崎豪と睨み合いを展開した。征矢はWRESTLE-1のトップ選手だったが、団体の活動停止を経てノアに新天地を求めた。実績からしても、潮崎のライバルの1人になりうる存在だ。
WRESTLE-1からノアのジュニアヘビー級戦線に参入してきたのは吉岡世起。大原はじめと組んでGHCジュニアタッグ王座に挑戦した吉岡はHAYATA&YO-HEYに敗れたものの、テンポの速い攻防で実力者ぶりを示した。YO-HEYも「どっからどう見ても強敵」と、ノアジュニア活性化の動きを歓迎している。
そのタッグ王者チームに次に挑戦するのは、鈴木鼓太郎&小川良成になりそうだ。両者はこの日、GHCジュニア王座をかけて対戦。自身の裏切りによるタッグパートナー対決を制し、鈴木が新王者となった。とはいえ小川の実力は鈴木も認めるところ。ベルトを巻いた鈴木は小川に頭を下げ、再度のタッグ結成とタッグ王座挑戦への協力をアピールしている。
こうして試合で起きたことを追ってみると、1大会の中で“激動”と言ってもいい状態だ。ノアは現在、5月いっぱいの通常興行をキャンセルしている。しかしリング上の流れは止まらないし、それがいずれ訪れる興行再開のためのパワーにもなる。