“(新型コロナウイルスに)とっとと感染しちまえ”。自身のTwitterでそう呼びかけたことが話題を呼んだのが、京都大学ウイルス・再生医学研究所の宮沢孝幸准教授だ。「あの時は本当にカッカしていた」と苦笑する宮沢准教授は、新型コロナウイルス対策について、“ゼロリスク”ではなく、“100分の1”を意識するよう、提唱している。
一体どういうことなのか。『ABEMA Prime』では、新型コロナウイルスの特徴や基礎・基本から説明してもらった。
■100分の1にする、意識を
「まず勘違いしてはいけないのが、ウイルスは細菌やバクテリアといった菌とは違い、単独では増えることができない。細胞の中に入り、たんぱく質を作る工場などを乗っ取って増殖、細胞を殺すものだ。コロナウイルスそのものは昔から存在していて、動物に色々な病気を引き起こすものとして盛んに研究が行われてきた。しかし人間がかかるコロナウイルスについてはSARSやMERSが現れるまでは風邪や腸炎を起こすくらいのウイルスだとして、それほど重要視されてこなかった」と話す。
また、新型コロナウイルスに関しては「大きさは100nmでインフルエンザウイルスと同じくらい、形は比較的球状で、脂質の二重膜といわれる外側に大きな突起が出ているのが特徴だ。この突起を使って細胞の中に入っていく。ただ外側の部分はエタノールなどの有機溶媒で溶けてしまう。それでアルコールが有効になるということだ。どこから来たのかについての結論は出ていないが、コウモリの仲間に感染するSARS・MERSと同じ系統に属していることから、今回も元々の宿主はコウモリではないかと考えられている。実はコウモリは哺乳類の中でも種類が最も多い動物で、排泄物を通して様々な動物にうつる。今回もセンザンコウなどの動物にも感染、そこで遺伝子の組み換えが起きたのではないかともいわれている。鼻から入って喉の奥で増える場合や、目から入って全身に広がるという場合もあるだろう。まだ証明されていないが、他のコロナウイルスに見られるように、食べることで腸内の壁の細胞に入り、感染する可能性も指摘されている。実際、中国ではコウモリを食べていたという話も出ている」と説明した。
その上で宮沢准教授は、接触し、身体に入る数をゼロにするというよりも、減らすことを意識するのが重要だと訴える。
「様々な可能性を考えれば、それぞれのケースで生きているウイルスと死んでいるウイルスの個数を測ることには困難だ。1回のくしゃみや咳にどれだけのウイルスが含まれているかもわからない。布のものも含め、マスクをしていてもマイクロメートルという小さなウイルスは飛び出してくる可能性はある。しかし、一般的に感染には結構な量のウイルスが必要だ。鼻からウイルスの液体を入れるのと、噴霧して入れるのとでは結果も異なる。つまり、全体の1000分の1、100分1くらいが体内に入らなければ、感染の可能性を減らすことができると考えられる。その意味では、例えばトイレくらいの狭い空間に一緒にいたとすれば呼吸でもリスクは高まるが、6畳の空間で会話もないような状態であれば感染する可能性はそれほどないと考えている。マスクをしていれば他人の飛沫を直接浴びることはないし、風通しを良くすれば空気中にいるウイルスに触れる可能性を減らすこともできる。風呂に入ればウイルスは取れるし、手洗いができないのであれば、お手拭きや濡れタオルで拭く頻度を高めればいい。アルコールがない場合は洗剤や、キッチンハイターのような次亜塩素も有効し、熱湯をかければ死んでしまう。そのようにして、3密を避ける、100分の1にする、ということを頭の中で意識していればいいのではないか」。
では、感染してしまった場合の特徴にはどのようなものがあるのだろうか。
「普通のインフルエンザであれば、体温やプロテアーゼという酵素によって分解され、発症して大体5日くらいで完全に無くなる。ところが新型コロナウイルスは発症するまでにじわじわと増えるし、症状が無くなったとしてもだらだらと増えていく。これがとても厄介なところで、2週間経てば大丈夫と言えない理由だ。症状がなくなって1カ月経ってもウイルスを出している人もいる。また、皆さんが誤解しているところだが、抗体が陽性であっても大丈夫というわけではない。逆に、抗体が陰性でも治ってしまう人もいる。抗体検査も一つの目安にはなるが、安全かどうかまでは断言できない。未だ謎が多い。
■飼い猫にも感染リスク?恋人と出かけるのは?
視聴者からは私たちに身近なペットにも感染する可能性はあるのだろうか、また、恋人と出かけることもできないが…といったコメントも寄せられた。
宮沢准教授は「ネコに感染し、病気になる、便から出るということが報告されている。ネコから人へというケースは証明されていないが、人からネコ、ネコからネコもあるということなので、あってもおかしくはない。あまり過度なスキンシップはしない方がいいし、外に出すのもリスクにはなると思う。また、専門家会議の西浦先生は“2人での食事もダメだ”とおっしゃった。5月6日までなら我慢できるが、それが1年、2年となればどうだろうか。推奨するわけではないが、マスクをした上で会い、咳なく呼吸して、手をつないで外を歩く程度なら良いのではないか。食事するときも、黙っていれば良いと思う。ジェットコースターに乗るくらいなら大丈夫だと思うしゴルフも1人でやる分には問題ない」との見解を示した。
また、慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「子どもの重症化が起きにくいと言われていることも、人々の行動が変わらない理由の一つだと思う。子どもが重症になるウイルスであれば、みんなもっと家に閉じこもるのではないか。そして、専門家会議ついて疑問なのが、日本人の行動や文化に詳しい専門家がいないこと。そういう人が僕たちの社会生活に落とし込んだアクションを示していれば、医学やウイルスの専門家が出した数字に近い結果が現れやすいのではないか」と指摘する。
宮沢准教授は「僕としては、ウイルスの感染実験を経験している人に入って欲しかった。そして、このウイルスは若い人や治りやすい人たちから順番に罹っていかないと収まらない一方で医療崩壊してしまえば終わりなので、それをゆっくりとやらなければならない。その意味では、ゼロリスクを目指すのではなく、僕の言う“100分の1”のように、これは安全、これは危険と細かく分けて活動できることを示すのがいいのではないかと思っている」と話していた。(ABEMA/『ABEMAPrime』より)
▶映像:「ネコにも感染する」EXITと学ぶ新型コロナウイルスのそもそもとは
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