新型コロナウイルスの流行で日本では自粛が続く中、国民的アニメ『サザエさん』が“炎上した”と一部のメディアが報じたことに対し、疑問の声が上がっている。
・【映像】サザエさん炎上騒動 ツイートはごく僅か? メディアが"炎上"の2文字に飛びつくワケ
“炎上した”とされるのは4月26日放送回で、登場人物たちがゴールデンウィークの外出について家族で考えるという話をし、出かけるという展開だった。これに対し、ネット上には「外出自粛中に旅行の話を放送するのは不謹慎」「どこにも行けないのにサザエさんたちは遊んでいる」「サザエさん世の中ガン無視」といった声が上がった、というものだ。
しかし番組が放送された同日午後6時半ごろのツイッター投稿を調べてみると、「不謹慎」というワードが含まれるものは11件のみだったといい、こうした検証を受けてか、当初「まさかの炎上」と記事にしたデイリースポーツは表現を修正、現在は「炎上」の2文字はない。また、こうした記事がYahoo!ニュースなどにも配信されたことで拡散したため、不謹慎だと指摘した人への批判も殺到するという事態になった。
今回の問題を分析したブロガーの徳力基彦氏は「『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』が“リモート帰省”や“ステイホーム”を問いかけるような設定にしたという中なので、今回の『サザエさん』に対してちょっと“イラッ”とした視聴者がいたことは事実だと思う。『サザエさん』ともなれば、数百万人が見ている番組なので、Twitterを使っている人の何%かがつぶやくだけでネガティブな反応が出てきたように見えてしまう現実はあると思う。ただ、普段から家のテレビに向かって突っ込むということは皆がやっているだろうし、それがツイッター上の発言になったとしても、あくまでも独り言なのだと思う。それを“炎上”という形で記事にされてしまうのはどうなのかと思う」と話す。
2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は「生身の人間の発言に文句を言うならわかるし、多くの人は創作と現実の違いが分かっているはずだ。そういう形でメディアが指摘するならわかるが、フィクションに対して文句を言ってしまうという、びっくりする、恥ずかしいことに正当性があるかのようにメディアが誤解させるはどうかと思う。ページビューを稼げば儲かるというメディアの仕組み上、炎上という言葉を使いたがるのではないか。それでも今回の場合、“現実ではない『サザエさん』でバカが釣れた”というようなタイトルにすればページビューも稼げるし、良かったのではないか」と指摘。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「テレビのワイドショーもそうかもしれないが、スポーツ紙には自分の力では人生をどうにもできない人たちに突っ込ませてカタルシスを与えさせるみたいな役割もあったと思う。そして、そもそも原因である新型コロナウイルスには人格がないし、国でも組織でも人でもないから、ディスることができないし、吊るし上げようがない。岡村隆史さんの問題も、そういう中で祭り上げられていったのではないか」との見解を示した。
両氏の指摘を受け、徳力氏は「まさにコロナの影響によってスポーツ新聞はすごくネタに困っていて、ネットで見つけたものに飛びつくという構造があると思う。メディアはちょっと冷静になり、もっと論理的な、未来に向けての取り組みみたいな議論にエネルギーを使った方がいいのではないか。あるいはコロナで荒んだ心が楽しくなる方向にもっていき、少しクスッと笑う、ちょっと肩の力が抜けるような報じ方もあるのではないか」とした上で、「自分も今回の問題についての記事を書き、今もこうして解説をさせていただいてるので、実はメディアのサイクルに僕も取り込まれている。幸い私は会社員なので、副収入のような記事が読まれなくても食いっぱぐれなくて済む。それでも読者の信頼を失ってしまれば、短期的なページビューを稼げても有料購読してくれる読者はどんどん失ってしまう。デイリースポーツはちゃんとタイトルを修正しているが、個人のメディアや、いわゆるトレンドブログと呼ばれるようなサイトはこれ以上の“飛ばし記事”を散々書いている。そういう構造も指摘しておきたかった」と話した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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