将棋の超早指し団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」の予選Bリーグ第2試合、チーム渡辺VSチーム天彦が5月9日に放送され、中堅戦で石井健太郎五段(28)が斎藤慎太郎八段(27)との三番勝負を2勝1敗で勝ち越し、+1ポイントを獲得した。
同世代の対決とはいえ大物食い、大番狂わせと言っていいだろう。同時期に奨励会三段リーグを戦いながら、相手はタイトルも経験したA級棋士・斎藤八段。1つ歳上ながら、プロ入りでは1年半遅れ、まだまだこれから上を目指す段階の石井五段にとっては、大きな壁だった。「三段の時、すさまじく強かった」と振り返る同世代の棋士に対し、全力でぶつかる。その姿勢が功を奏した。
相居飛車で始まった第1局。勝負どころで駒音が響くほど力が入るとチームリーダー渡辺明三冠(36)は「なんで、そんないい手つきになってんの」と思わず笑った。それほどの強い意志を込めた一手一手が結果につながり、141手の末に大きな1勝を得た。
ただ、すんなり連勝できるほど、その壁は低くない。後手番で三間飛車を採用し、斎藤八段の居飛車穴熊に立ち向かったが、形勢が二転三転する大熱戦で惜しくも競り負けた。
勝ち越しをかけた第3局は、序盤で相手の大駒を次々に捕獲。計4枚の大駒を全て保持する展開にもなったが、A級棋士の猛反撃にあい、見守っていた渡辺三冠からも思わず「嫌な予感がするね…」と言葉が漏れるほどだった。苦しみ抜いた末に、必死に掴んだ勝勢をがっちり話さず、130手での辛勝。チームにプラスポイントを持ち帰ったことに「それが個人的にはすごくうれしい」と微笑んだ。
超早指しという局地での非公式戦。この勝ち越しは当然、公式記録には残らない。ただ斎藤八段の後塵を拝してきた石井五段にとってみれば、今後の棋士人生に大きな影響を与える、記憶に残る勝負になっても不思議ではない、そんな激闘だった。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行い、1回の対戦は三番勝負。3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝賞金1000万円。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)
(ABEMA/将棋チャンネル)