新型コロナウイルスが様々な業種や雇用に影響を与える中、「5月危機」が迫っているという。全国に144万人いる派遣社員のうち、7割強は雇用期間が限られている。派遣社員の契約は3カ月ごとに更新するのが主流だが、雇い止めする場合、派遣会社は30日前までに本人に通告の義務がある。7月以降の契約については、30日前の5月末が更新の最終ライン。現在、新型コロナウイルスの影響で、企業の経営が全体的に悪化しており、5月末のタイミングで雇い止めの通告が一気に増加するという見方がある。これが「5月危機」だ。厚生労働省雇用政策課によれば、コロナ禍を理由に雇い止めされたのは5月14日までに7428人(見込み含む)だが、内訳は調べておらず、氷山の一角ではないかとも言われている。
失業者に対しての取材経験もあるBuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏は、この5月危機について「非常に深刻」と重く受け止めている。「コロナの問題は健康・公衆衛生の問題として論じられていたが、一貫して申し上げている通り経済の問題でもある。経済でも人は死ぬ」と、“経済死”について言及。「アメリカでは4月の失業率が14.7%と非常に高い値が出ていて、5月は2割を超えるのではとも言われている。日米では雇用制度が異なり、現状アメリカほど劇的ではないが、これから日本でも雇用情勢が大きく悪化していくだろう」と見通しを立てた。
「失業」という点で、国内で知られるのが就職氷河期に直面した30代後半から40代を中心した「ロストジェネレーション」だ。「彼らがどうなってしまうのか非常に心配。社会に出た時に就職氷河期で職が見つからず、なかなか正社員の職を得られなかった。ようやく派遣社員や非正規の仕事に就けたと思ったら、今度はリーマンショックで派遣切りや雇い止めに遭って仕事を失った。非常に不遇な立場に置かれている」と、またしても強烈な逆風を受けることを心配した。
昨年から“ロスジェネ”に対して、政府も「人生再設計第一世代」と名付け、支援を進めようとしたものの、新型コロナウイルスの影響で企業側も人を雇う余裕がない。「企業は新卒採用すらもあきらめざるを得ない状況で、ロスジェネの人たちを採る余力を失いつつある。今までもずっと不遇だったが、今回もさらに『ロスト』することになるかもしれない。ロスジェネはいったい何回失わなければいけないのか、と危惧している」と続けた。
過去の取材経験から、派遣切りにあった人々は「自己責任論を内面化してしまっている」傾向も強いという。本人の能力に問題があるわけではなく、社会情勢によるものだったとしても「切られちゃってもしょうがない。派遣ってそういうものでしょと、すごく冷めた意見をたくさん聞いた」。自分が悪いという考えから、生活保護や失業支援といった制度の活用をためらい、福祉とうまくつながれないケースも出てくる。ここをつなぐために「行政から積極的に働きかける必要がある」と訴えた。
新たなロスジェネが生まれる可能性もある。今回のコロナの問題で、内定取り消しや就職難に見舞われた学生たちだ。「就職できないのは学生の能力ではなく、社会情勢の問題。そこを間違えると新たなロスジェネを生み出し、10年20年先まで禍根を残すことになる。厳しい立場に置かれた学生たちが再就職・再挑戦できるよう、手厚い支援をしていかないといけない」とも付け加えていた。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)
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