“コロナ禍”での大幅減収によって苦境に立たされた店主が思わず「詐欺か」と疑ってしまったほど、ユニークな店舗救済策が実行され、成果を上げている。舞台は西武池袋線江古田駅前にあるラーメン店「五十三家(いそみや)」。2010年にオープンした横浜家系ラーメン店の付近にはキャンパスが多く、中でも日本大学芸術学部に通う学生たちにとってはお気に入りの店だという。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響は、例外なくこの店にも襲いかかった。店主の五十嵐恵三さんは「学生が結構多い。コロナで休校になってしまったので、かなり厳しい」と苦しい現状を明かす。店を閉めるにも、簡単に休業できない理由がある。五十嵐さんはその理由を「1年前に入って、吸排気の工事があり設備投資にお金を費やした」と説明する。リニューアルオープン、その設備投資の返済が重くのしかかっている。
学生の空腹を満たすためにラーメンを作り続けた10年間。そんな五十嵐さんの窮地を救ったのは、日大芸術学部OBの柏原平志朗さん。柏原さんもまた、在学時には五十三家の常連だった。
「江古田で1番美味しいラーメン屋に連れてってやると言われて連れて行ってもらえるのが五十三家さんだった。週1回以上は通っていた。僕らにとってもお店が残るのはうれしい。このお店を使っている学生にとっても嬉しいという企画を作りたかった」
柏原さんが思いついた「店も、店を愛した人も、いま愛している人も」みんなが喜ぶアイデア。それが日芸OB・OG限定「#五十三家おごってやるよ」プロジェクト。
日芸の卒業生が一人1万円をお店に支援金として先払いすることで、在学生は学生証を提示すれば無料でラーメンを食べることができる。つまり、先輩が後輩に「おごってやる」形になるというアイデアだ。
「詐欺かな? あまりにもおいしすぎる話だから」
五十三家の店主・五十嵐さんも、今となっては“半信半疑”だったことを白状するが、柏原さんは本気だった。
「この大学の卒業生は面白かったらなんでもOKというノリがある。卒業生の風土に合わせてこのような企画がいいのではと思った」
店内にあるノートには、おごってもらった現役生から先輩たちへのメッセージが残されている。コロナでバイトが休業、生活苦を救われた学生たちからは「金もないし、雨も降っているけど、俺には五十三家がある」など、さまざまな感謝のメッセージがみられた。
「20万、30万円を超えたあたりから、自分も知らない先輩方からの寄付が集まり始めている。何もリターンが無い中で、1万円を出してくれる人が60人も集まる。このお店がどこまで愛されているかを実感する」
仕掛け人の柏原さんがそのように話せば、「そこまで思ってくれていたのかと。あまり実感することがないので、嬉しいですよね」とは店主の五十嵐さん。営業自粛で数多くの事業者が苦しみ、人と人との接触制限が求められるいま、コロナによって人と人との繋がりの大切さを再確認するアイデアがそこにあった。
なお、五十三家は今月18日から今月末まで一時的に休業。営業再開後も、このプロジェクトは継続される。(ABEMA『ABEMA的ニュースショー』)
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