「スーパーシティ法案」が成立 個人情報への懸念に岸博幸氏「ちょっと考えすぎの部分も」
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 AIなどの最新技術を駆使し、キャッシュレス決済、自動運転、ドローンなども活用したストレスのない住民サービスが提供される夢の街“スーパーシティ”構想を実現する「改正国家戦略特区法」が27日、参院本会議で可決、成立した。

・【映像】・「ゼロから新しい都市を作るという発想」"スーパーシティ法案"成立 膨大な個人情報 データから街を創り出す? #超監視超管理社会と批判の声も

 政府は去年秋から自治体にアイデアを公募、高齢化が進む村からは交通弱者向けの自動走行システムや、遠隔医療、農作業の負担を減らすためのドローンや無人トラクターの活用など、新たに都市を作る構想が7団体から、既存の都市を作り変える構想が47団体から寄せられているという。

 26日の『ABEMA Prime』に出演した元経産官僚で慶應義塾大学大学院の岸博幸教授は「世界的に第4次産業革命が進む中、日本でも最先端のICTを使ったサービスが提供される都市を地域単位でやろうということで出ている法案だ。本当は全国で一斉に規制緩和ができればいいが、なかなか進まないという経験から、特区制度という、地域限定の規制緩和を行い、その成果を見極めて全国に広めるということをこれまでもやってきた。方向性としては正しいと思う」と話す。

 岸氏の言う「国家戦略特区」とは、「世界で一番ビジネスをしやすい環境」作りを掲げ、地域や分野を限定した上で制度の緩和などを行う。いわゆる岩盤規制を打ち抜く規制改革制度のことだ。観光:「特区民泊」の創設(多数の事業者が参入)、医療:医学部の新設(加計学園獣医学部など)、保育:都市公園内保育所の設置(該当エリアでは待機児童3割減少)、農業:農業生産法人の要件緩和などの先例がある。

 この点についてリディラバ代表の安部敏樹氏は「“作りはするが全然使われない”という問題がある。首長がリーダーシップをとり、自治体として主体的に面白い街を作ろう、課題を解決しようというプランをまとめあげて国に申請するということがやりきれないという課題だ」と指摘すると、岸氏は「国家戦略特区というと加計学園問題で悪名高いものになってしまったが、例えば福岡市では特区制度を活用して起業を増やしているし、同じ福岡県の養父市も農業生産法人の要件緩和によって企業が農地を保有できるようにするなど、それなりに革新的なことをやっている。ただ、安部さんの指摘するとおり、メニューがいっぱいあっても実はあまり利用されておらず、一部の自治体だけが先端的な取り組みを始めているというのが現実だ」とした。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「第4次産業革命とかソサエティー5.0とか言われている時代に重要なのは、モノやハードウェアだけではなく、データだ。シリコンバレーでは“データは新しい石油である”というような言い方をするが、データの扱い方によって、本当にゼロからひっくり返る、日本のものづくりとは全然違う世界だということだ。今までの日本のように少しずつ動かしていくやり方では、いつまで経っても成功しない。トヨタ自動車が富士山麓にスマートシティを作り、トヨタの社員を移住させて実験を始めているが、そのようにゼロベースで新しい都市を作るという発想がなければいけない。その意味でも実験場所を作れるということが大事だし、特区でやる方向は間違いではないと思う」と話す。

「スーパーシティ法案」が成立 個人情報への懸念に岸博幸氏「ちょっと考えすぎの部分も」
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 他方、審議の過程では野党を中心に、プライバシー侵害の可能性、監視に使われる危険性や地方自治体が事業者に個人データを渡すための合意はどの段階で得るのかなどの問題点が指摘されていた。こうした議論を受け、ネット上にも、「生活がとても便利になるけど、監視社会にもなりそう」「サイバーセキュリティが甘い日本だと、海外に情報が洩れる危険がある」といった懸念の声もある。

 岸氏は「スーパーシティ法案に関しては基本構造を作る段階で住民の合意を得るという前提になっているし、自治体が個人情報を管理・運用するのは信用できないからこそ、外部のICT企業と組むわけだ。コロナの経験からも、個人情報を気にしすぎると対応が遅れることが分かっている。懸念は分かるが、ちょっと考えすぎかなという感じもする。個人情報の議論も重要だが、そればかりに終始して、高齢化とか人口減少とか必要なものが実現できない。これが一番不幸だと思う」と話す。

 実際、台湾では「Eマスク制度:マスクを販売する薬局の30秒ごとの在庫データを当局がネット公開」「海外から戻った人は2週間の自主隔離を義務付け、GPSで監視して、自宅を離れると警察に通報」「感染者の行動ルートなどを情報公開」というように、コロナ対策にITが活用された。また、シンガポールではデジタル決済、デジタル身分証、政府データのオープン化が行われている。中国・杭州市では道路交通情報をAIで分析し、交通取締、渋滞緩和を実現している。中国・雄安新区では、自動運転、無人行政、無人銀行、無人スーパー、無人ホテルなど展開している。スペイン・バルセロナでは車と人の動きを感知し情報提供し、駐車スペース情報で渋滞緩和をしている。

 株式会社ウツワ代表のハヤカワ五味氏は「私は交通手段の部分でMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)が普及してほしいと思っている。もちろん移動データが取られるということや、セキュリティ的な話の懸念はある。それでも色々便利なところもあると思うので、選べる人が選べるようになってほしい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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「ゼロから新しい都市を作るという発想」"スーパーシティ法案"成立 膨大な個人情報
データから街を創り出す? #超監視超管理社会と批判の声も
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