恋愛リアリティー番組「テラスハウス」の出演者・木村花さんの死去の影響もあり、ネットでの誹謗中傷などに対して法的措置も辞さないと示唆する有名人が増える中、自分が投稿した内容に不安のある投稿者から弁護士への相談が増えている。
ネットの誹謗中傷に詳しい藤吉修崇弁護士は、「木村花さんが亡くなった後、2、3日後にかなり増えたという印象です。基本的には、自分が書いた書き込みが誹謗中傷に該当するのかを判断してほしいという内容です」と、現状を明かした。
藤吉弁護士によれば、誹謗中傷を書き込む投稿者には、ある特徴が見られるという。自分の価値観を押し付けたいが、直接言えないためにネットを通じて匿名で書き込む。いわゆる「自粛警察」に似たようなもので、「ある人を批判する書き込みで周りから賛同を得られれば、それに対して快感を覚える人は結構いるような印象はします」と、投稿者の心理を予想した。
相談者の中には、問題ない書き込みであっても心配になって相談してくるケースもある。では実際、どういった書き込みが誹謗中傷にあたるのか。
藤吉弁護士 「大きく誹謗中傷は2つ、事実と感想の2通り。事実を書き込んだ場合は、事実無根の場合でその人の評判を落とすものはアウト。難しいのは、感想の方ですが、感想も商品に対する感想は許される範囲は広いと言われている。おいしくない、ぬるい、しょっぱいの感想は、よほど書かれた人が本当に傷つくような対応で書き込む以外は大丈夫」
今回亡くなった木村さんの場合で言えば、番組の中の行動に対してのものは誹謗中傷にならないが、番組の行動は関係なく、容姿への誹謗中傷などになれば、アウトとなる可能性が高いという。
一方で、藤吉弁護士は誹謗中傷の範囲を広げることで言論の萎縮につながると、ネットの機能が失われてしまうとも指摘した。
臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、相談者が増えたことについて、「これまで自分の中で意識をしていなかったが、木村花さんのことがあって、もしかしたら自分の行動がまずいんじゃないかと初めて気づいた人が増えたということ」と解説。「近年、SNSは社会的インフラ化しているとも言われているが、それは既成事実化しているだけで、それが人のためになっているかどうかは分からない。誹謗中傷にあたる書き込みは、ネット上での悪い意味での同調と責任の分散をベースにした、個人のレベルのエンタメ・娯楽・趣味の範囲に入るものが大部分だと思う。自覚なく、いろいろなことを感情まかせに書いてしまっている」と、無自覚に人を傷つける行為だと述べた。
今後、誹謗中傷した人々の摘発が進めば、抑止力として働くことに期待はできるものの、実際には被害を受けた人が自ら声をあげ、訴えないと罪にならないことがほとんど。今の雰囲気が定着し、このような行為に及ぶ人が減っていくかといえば「基本的には時間が経てば経つほど問題意識が薄れるので、なかなか難しいだろう」という見解だ。「SNSがある以前から、対人関係の中で、周りの人とか知り合い、友達含め、言わなくてもいいことを言ってしまったという悩みは多い。ある種、依存的というか、やめたくてもやめられないという相談もある」と語ると、実例として「仕事帰りの移動中に、誰かに誹謗中傷を書かないと、一日が終わった気がしないという人もいた。SNS上で、毎日のように攻撃の対象を探しているという状態だった」とし、投稿する側の人々の問題も解決しないといけない、大きなテーマのようだ。
藤井氏によると、「一般的にネットで誹謗中傷している人は、生活が充実せず、コミュニケーション下手で、日頃の鬱憤を解消している人たちだというイメージがあるかもしれないが、むしろ逆に日常や社会生活が充実していて、周りからすると『あの人がこんな過激なことを書いてたの?』と驚かれるような印象の人が書き込んでいる場合も少なくない」のだという。
では解決策はあるのだろうか。藤井氏は「『セルフ・モニタリング』という方法がある。これは、自分の生活を詳細に記録し、心理・行動パターンを自覚する方法。人の行動には必ずパターンがあり、原因が分かれば、他の行動に置き換えたり、感情を次第にコントロールできるようになることが多い。この機会に、専門的な方法でなくとも、自分の投稿が結果的に感情論や人格否定になっていないか、多面的に自省してみる意義はあるのでは」とした。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)
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