34人の院内感染が起きた神奈川県の小田原市立病院が収束後、初めて取材に応じ、感染拡大の主な原因は感染しているのにPCR検査で陰性が出る「偽陰性」だと明らかにした。
「次から次に出てくる患者さんに対して、我々もお先真っ暗という感じは正直なところありました」
当時の状況をこう振り返るのは、小田原市立病院の松田基副院長。小田原市立病院では、4月下旬から看護師や患者など1カ月で合わせて34人の院内感染が確認された。なぜ病院内で感染が広まってしまったのか。松田副院長は背景について次のように話している。
「救命センターのある当院では、疑似症患者を受け入れる時に入院が必要な場合には当然個室、1人部屋ということになるが、PCR検査をして陰性であった場合は、多少症状がよくなったという時点で個室の扱いをやめてしまって大部屋に移してしまう。個室を空けることによって、患者さんをまた受け入れなければいけない」
患者が増加していく中、一般の診療所での受け入れが難しい状況で、小田原市立病院の負担は増していたという。そのため、当時はPCR検査で陰性が確認されれば、次の患者のために個室をなるべく早く空ける方針だったという。
院内感染の原因として浮上したのが、個室から大部屋に移動した1人の患者だった。4月中旬、発熱と肺炎の症状がありPCR検査を受けたところ、結果は陰性。症状も改善され、6人の大部屋に移り(4日間)その後退院したが、自宅療養中に再び発熱し、再度PCR検査を受けた結果は陽性だった。その後、一緒の大部屋にいた患者5人の感染も確認されたのだ。
「PCRが主な検査だったが、陽性率が6~7割。裏を返すと、2割3割は陽性であってもそう出ない『偽陰性』として出てしまう」(同)
病院側は最初のPCR検査の結果が「偽陰性」で、それが院内感染につながったとみている。また、別の病棟でも同じような感染のケースがあったため、病院ではPCR検査は100%ではないという前提のもと、感染防止対策に取り組んでいる。
「PCR検査が陰性になった時に『ある程度大丈夫』といった判断するのをやめにして、陰性でも少なくとも4日間は個室から出さないで対策を継続する。それを解除する時も、主治医の判断だけではなく、チームとしてみんなの複数の目で判断して、相談して決めていくというような方針も取り入れている。やはりPCR検査に頼らざるを得ないところではあるが、過信しすぎてはいけない。総合的にレントゲンなり検査なりを含めての対応ということと、やはり怪しい時には(個室対応を)解除してはいけない」(同)
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)
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