「物理的に性欲をコントロールする方法も」GPS装着義務化でも残る課題、政府の性犯罪対策は十分か
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 11日、政府が新たな性犯罪対策方針を決定した。橋本男女共同参画担当大臣は「この方針は性暴力被害者や関係者の思いと声を正面から受け止めて、性暴力をなくしていくという政府の決意と具体的な取り組みの方針を示すものである」と述べた。

・【映像】「性犯罪者にGPS装着を検討」一方で人権侵害との声も...

 2017年、刑法が110年ぶりに大幅改定され、性犯罪は厳罰化へと進んだ。しかし去年には、性犯罪の裁判で無罪判決が相次ぎ、被害者や支援団体などが、再度の見直しを求め法務省へ署名を提出、フラワーデモも行われた。また、「必要であれば3年後に再び改定を検討する」とされていたことが今回の見直しへと繋がっている。森法務大臣は4日の検討会の席上、「魂の殺人とも言われる性被害を受けている方がこの瞬間もいらっしゃると思うと、本当に胸が詰まる思いだ」と話している。

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 そこで11日の『ABEMA Prime』では、性犯罪対策に取り組んできた被害経験者と弁護士に話を聞いた。

 今回、さらなる厳罰化や学校での啓発とともに注目されているのが、仮釈放中の加害者へのGPS機器の装着義務化だ。すでに、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国などで導入されているもので、位置情報の把握による再犯抑止が期待されるが、プライバシーの問題を懸念する声もある。

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 15年前にオハイオ州で装着者をインタビューした平石直之アナウンサーは「風呂に入るときも取ることができないようになっていて、位置情報や移動速度のデータが1分ごと記録され、子どもたちのいる学校などに近づいたことがわかると刑務所に逆戻り、という厳しいものだった」と振り返る。また、2008年にGPS足輪を導入していることで知られる韓国では、前歴者の行動を24時間監視しており、ネットに氏名・住所・顔写真を公開している。これにより再犯率は8分の1に減少した一方、装着者がストレスで自殺するなどの課題もあるという。

 認定NPO法人「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長を務め、性犯罪対策への政策提言も行っている伊藤和子弁護士は「GPSで本当に効果が出るのか心配だ。韓国では足の輪っかがスティグマ(烙印)のようなものになってしまい、かえって立ち直れないという可能性もある」と指摘する。

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 「加害者には依存症になっている方が多く、再犯を防止したい、もうやめたいという時点で手遅れになっている場合もある。特に子どもが被害者の場合、加害者が児童ポルノを見てそういう気持ちになったりすることもあるので、やはり犯行に至る前にどう教育するかということが大切だ。また、刑務所で特別な再犯防止プログラムを受けている人の方が再犯率は低くなるということが最近の法務省の調査で出ている。しかし全てがプログラムを受けているわけではないので、まずはそこをきちんとやることが大事だと思っている。もう一つは、やはり刑法の規定をもう少し被害者寄りにしていかないと、被害は減らないと思う」。

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 その上で伊藤弁護士は「今回、被害に遭った子どもたちがちゃんと被害を認識できて、そして訴えられる仕組みも作っていこうということになっているというのはすごく大事なことだと思っている。ただ、性被害に遭った女性は13人に1人くらいの割合になるといわれているが、警察に届け出をするのは、そのうちのわずか4%くらいだ。特に子どもの場合、何をされているのか分からず、被害を訴えることもできない。さらに立件され、起訴に至るのは、その中で30%だと言われている。つまり、90%以上の加害者が野放しになり、犯行を繰り返している状態だということだ。今の制度では性犯罪の構成要件のハードルが非常に高く、証拠がないとか、暴行や脅迫といったかなり強いものがなかったということで泣き寝入りをしてしまう人が非常に多い」と、法制度のさらなる整備を訴えた。

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 自らが体験した性犯罪被害を映画化した水井真希氏は「日本は国土が狭いので、行動範囲内に加害経験者がいるということになってしまうと思う。加害者自身に更生する気があるとか、見張られていると同時に見守られているというのを意識して、実際に痴漢しそうになったら家族の写真を見たり、手をつねったりして我に返るような訓練を受けているような人でなければ効果はないのではないか。また、薬によって男性ホルモンを抑えて性的衝動を減らすという、外国で導入されている化学的去勢と併用することを考えてみてもいいかもしれない」と話す。

 「世界的には厳罰化するよりも治療をしようという方向性に進んでいるが、日本の刑務所でプログラムを受けられるのは長期受刑者で、なおかつ知的障害や精神障害がない人に限られている。つまり、治りやすい人を優先して治療を受けさせているからこそ再犯率が下がっていくという部分があると思う。日本でも病院はあるが、まだまだ少ないし、治療費は自己負担になるので、途中でお金の問題で来られなくなってしまう方もいる。加害者を3年間刑務所に入れると、大体2000万円の経費がかかると言われている。そういう点からも、治療に力を入れるべきではないか」。

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 ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏は「GPSは事後的に活用されるものであって、それこそ10分もかからずに犯行に至るケースもある中、リアルタイムの抑止力にはならない可能性があると思う。保護観察であれば担当者に会わなければならないので、例えばTENGAのようなものを配布し、使用済みのものを1日3個提出させるようにするなど、物理的に性欲をコントロールすることで再犯防止につなげることもできるのではないか」と提言していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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「性犯罪者にGPS装着を検討」一方で人権侵害との声も...
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