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 18日、前法務大臣で衆議院議員の河井克行容疑者と、妻で参議院議員の案里容疑者が公職選挙法違反、買収の疑いで逮捕された。この日の会見冒頭、安倍総理は「現職国会議員が逮捕されたことは大変遺憾だ。かつて法務大臣に任命したものとして、その責任を痛感している。国民の皆様に深くお詫び申し上げる」と陳謝した。

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 東京地検によると、夫妻は去年の参議院選挙をめぐり、地元の県議や市議などに票の取りまとめを依頼し、その報酬として、延べ96人に総額2570万円を配った疑いがもたれている。このうち克行容疑者は去年の3月下旬頃から8月上旬頃の間に、91人に対して116回、約2400万円を渡したとされている。地元の議員は「ポケットに突っ込んで帰ったと言っていた。その時は何も言わなかったが、それは案里を応援してくれと頼んでいるだろう」と明かしているが、『週刊文春』によるインタビュー取材で案里容疑者は「中見舞いや当選祝いが全部“買収”なら皆選挙違反だ」という発言をしている。

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 かつて東京地検特捜部で副部長を務めた経験のある若狭勝弁護士は「私が選挙に出たときも、公示の3カ月前くらいから本格的に活動したし、皆が選挙のことを意識している時期だ。そこでお金を配ってしまえば、これは買収だと言われても仕方がないな、という実感もあったし、案里容疑者にもそういう意識があったことは間違いないと思う。また、受け取った側がどのような気持ちを抱いたかが大事で、“票を取りまとめてくれ”という趣旨だと認識したということであれば、やはり買収になる。検察は録画・録音をしているし、それを見れば、受け取った側がどう思ったのかについては一目瞭然にはなる」と指摘。

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 また、この買収疑惑の原資になったと指摘されているのが、自民党が支給した1憶5000万円だ。高額な政治資金に党内からも異を唱える声が上がっているが、二階幹事長は「影響はないといったら適当でないかもしれないが、党に影響を及ぼすほどの大物議員でもなければ、そんなに大騒ぎするようなお立場の発言でも行動でもない」と強調。安倍総理も二階幹事長による説明を引いて「公認会計士がチェックしている」としている。

 「税金を原資に国民1人あたり250円を交付する政党交付金制度というものがあり、共産党以外の政党はもらっている。そして選挙には色々なお金が必要になるので、自民党で言えば幹事長が配分を考え、各公認候補者のところにお金を渡している。私も自民党公認候補として参議院選挙に立候補したことがあるので、その時は党本部から送金してもらった。このように、政党交付金の使い道は党の自主性・裁量に任されているが、きちんと報告をする必要がある。問題となっている昨年の参院選の場合、溝手陣営には1500万円だったところ、案里容疑者の陣営には10倍の1億5000万円だったというだけでも驚きだが、このお金が買収資金に使われたにも関わらず嘘の報告をしていたとすれば、それはそれで罪になり得る。特捜部としても、ここを徹底して調べているところだと思う。一方、党本部が1億5000万円を渡すことは違法ではないし、よもや買収資金に使いなさいと渡したわけでもないと思うので、党本部の刑事責任を追及することはできない。しかし、道義的責任、政治的責任については、党首脳の方に残っていくことになる」(若狭弁護士)。

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 疑惑の舞台となった参院選広島選挙区では、定数2に対し自民党現職・溝手顕正氏と同じく現職で野党統一候補となった無所属の森本真治氏が出馬、そこに溝手氏と同じ自民党から案里容疑者が立候補したことで、激しい選挙戦となった。結果、森本氏が1位、案里容疑者が2位で当選、溝手氏は落選している。

 若狭弁護士は「選挙の時は水面下で相当なお金が動くというのが実情としてある。今後の捜査あるいは、裁判においては、どうしてこうした現金買収を多額に広範囲にやらなければならなかったのか、という背景を解明していくことになると思うし、それが有罪にもっていくための条件になると思う」との見方を示し、「逮捕事実が真相だとすれば、この上なく悪質な重大事件だ。現職の国会議員が2人逮捕されたということに加えて、後に克行容疑者は選挙違反や買収などを取り締まる本家・本元である法務大臣に就いている。もし有罪になれば、国会議員の犯罪の歴史上、長く語り継がれることになる」とした。

 若狭氏の話を受け、慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「もとはといえば同じ選挙区に自民党の現職候補がいたのに、いわば党内の派閥争い、勢力争いの中で案里容疑者をぶち込んだ“広島の乱”があったわけだ。つまり、自民党支持者たちの間で票を取り合う戦いという、“有権者置いてきぼり”の中でのお金の流れと見ることもできる。報道は、そこに対してももっと突っ込んだ方がいいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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