ヘビー級、ジュニアヘビー級ともに流れの速いノアマットで、そのキャリアにおいて大事な場面を迎えているのが清宮海斗だ。
昨年は長期にわたりGHCヘビー級タイトルを防衛。今年1月、潮崎豪に敗れてベルトを手放したが、逆に“身軽”になったことで多様な経験がしやすくなったとも言える。実際、清宮は武藤敬司、オカダ・カズチカとの対戦をアピール。業界のレジェンドとトップを体感することで、成長につなげたいという思いがある。
武藤との対戦は、6月14日配信の無観客大会で実現。6人タッグでの闘いは、予想以上の武藤ペースとなった。はっきり言えば、清宮は圧倒された。グラウンドで主導権を奪われ、足4の字固めで悲鳴をあげる。チームとしても敗れ、清宮は大きな屈辱を味わった。
「自ら望んだ闘いでこんなザマになって、自分が憎い」
そう語るほどの悔しい経験だったが、そこであきらめるわけにはいかない。6月21日配信の大会では、現GHCヘビー級チャンピオンの潮崎とのエースタッグで試合に臨んでいる。一昨年のタッグリーグで優勝したチーム「ゴーカイタッグ」の、いわば再結成だ。
対戦相手は「金剛」の重量級コンビ、マサ北宮と稲村愛輝。北宮のタフさと稲村のパワーが噛み合った強豪タッグだ。とりわけ稲村の成長は著しく、「ぶっ飛べ!」と叫びながらのぶちかましなど迫力充分。文字通り対戦相手をぶっ飛ばしてみせる。
それでも清宮は随所で小気味いい動きを見せると、最後は潮崎が必殺の豪腕ラリアット。清宮は北宮を抑え、勝利に貢献する形となった。
そして清宮は、試合後にあらためて武藤への思いを語った。
「俺は今、一人の男に燃えている。再びその男の前に立つために、技術、体力、心、すべてを磨き上げる。この闘志を誰も消し去ることはできない」
この意気込みを受けてということか、観客を入れての興行を再開する7.18後楽園ホール大会では、潮崎&清宮vs武藤&丸藤正道という豪華カードが実現することに。しかしこの試合、ポイントは武藤と潮崎だけではない。
武藤と丸藤は新ユニット、イニシャルMの選手を集めた「M's alliance」を結成したばかり。武藤は「メンバーを増やすしベルトも狙う」と意欲的だ。
そんな中で対戦するのが、GHCヘビー級王者にして中嶋勝彦とタッグベルトも持つ潮崎。武藤&丸藤が潮崎をターゲットにすることも充分に考えられるし、試合内容次第ではタイトル戦線にも影響が出てくる。
清宮としては、そこに割って入ることも必要になってくるだけにハードルは高い。さまざまな思惑が入り組む、興味深いタッグマッチになりそうだ。
写真/プロレスリング・ノア