アメリカのトランプ大統領から解任されたボルトン前補佐官の“暴露本”が23日に発売され、話題となっている。首都ワシントンでは、新型コロナウイルス対策で限定的に営業する書店に本を買い求める人が相次いだ。
本のタイトルは『それが起きた部屋』。大半が、トランプ大統領の外交における“悪行を告発する”ことに割かれている。ニューズウィーク日本版の記事『解任されたボルトンがトランプに反撃 暴露本の破壊力は大統領選を左右する?』によれば、中国・習近平国家主席に協力を懇願(大統領選で激戦州となる農家の利益となるよう中国と貿易合意をし、再選を確実にするよう依頼)し、中国の通信機器大手・中興通訊(ZTE)への疑惑捜査の早期切り上げ、ウイグル人弾圧を容認した(新疆ウイグル自治区の収容所建設について「建設を進めるべきで正しい選択だ」とトランプ大統領は考えていた)という。
中国にすり寄ったとみられる行動の一方で、トランプ大統領を支持する最大政治活動団体が出している意見広告では、対決が確実な野党・民主党のジョー・バイデン氏を「中国の脅威を無視し、アメリカ人の仕事とアメリカの国家安全をリスクにさらしている」と批判している。
ボルトン前補佐官の驚きの暴露本に、ニューズウィーク日本版編集長の長岡義博氏は「トランプ氏側は当然この本を否定しているが、ディティールがしっかりしていて、その場にいた人しか知り得ないような発言や状況が書かれている。大部分が真実なのではないかと思わざるを得ない内容」との見方を示す。
また、トランプ大統領と中国の関係について、「トランプ大統領はコロナ以前から、“自分は中国と戦う政治家だ”ということを国民や世界にアピールしていた。だが、その水面下では習近平に再選を懇願していた。一番衝撃を受けたのはウイグル弾圧の容認で、ウイグル人権法案への署名など今まで自身が行ってきたことと全く違う態度を中国に示したということになる。米議会がウイグル弾圧をめぐる対中制裁法案を可決した状況にあって、トップである大統領がそれを容認していたというのは矛盾も甚だしい」と苦言を呈した。
では、再選を目指すトランプ陣営にとって、この暴露本は大きなダメージになるのか。長岡氏は「一般的にアメリカの大統領選で外交は大きな争点にはならないと言われている。ただ、これは外交だけでなくトランプ大統領の政治家としての資質に関わる問題なので、意外にダメージは大きいのではないか」と指摘する。
また、大統領選の行方について、「いまの支持率は、バイデン氏がトランプ大統領を10ポイントほど上回っている。4年前のこの時期、ヒラリー・クリントン氏とトランプ氏との戦いでは当然クリントン氏が勝つと思われていた中で、トランプ氏が追い上げていくタイミングにあった。逆に今回は差が開き始めているのを見ると、トランプ氏は厳しいのではないかと思う。選挙はマラソンに似ていて、個人的な感覚では10ポイントの差は100メートルの差に相当する。2人とも走っている中でその差を詰めるのは難しく、バイデン氏がこけるかトランプ大統領に強い追い風が吹くかしないと逆転できないのではないか。気になるのは、トランプ大統領が4年前に『自分が落ちたら大変なことになる』と発言していたこと。大変なことというのは支持者が武器を持って蜂起するというニュアンスで、今回もしトランプ氏が落選してもアメリカが大混乱に陥りかねない、と懸念している」とした。
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