黒人男性が白人の警察官に首を圧迫されて死亡した事件を受けて全米に広がった抗議デモは今、社会に変革を迫っている。CNNによると、アメリカの長寿アニメ『ザ・シンプソンズ』は、白人以外のキャラクターの声に白人俳優を起用しないと決めたという。
全米黒人地位向上協会などから、ヘイトスピーチへの対策が不十分だと指摘されたフェイスブックへは、広告掲載をボイコットする動きが広がっている。既にスターバックスやコカ・コーラなどが、全てのソーシャルメディアを対象に広告を一時停止すると発表。売上高の98%を広告収入が占めているというフェイスブックは対策強化を26日に表明したが、さらなる対策が求められそうだ。
一方、「スキンケア商品で今後『ホワイトニング』や『明るい』といった表現を廃止する」と27日に発表したのは、世界最大の化粧品メーカーのロレアル。ロレアルは「差別反対」を表明しているが、過去には白人による人種差別を批判したモデルを解雇していたことを取り上げられ、「偽善的」だと批判を浴びていた。
また、ユニリーバは、スキンケア商品の「ホワイト」や「ホワイトニング」の名称を変更すると発表。ジャンソン・エンド・ジョンソンも、美白製品の一部を販売中止するとしている。
さらに、アメリカのフロリダ州・ディズニー・ワールドとカリフォルニア州のディズニー・ランドでは、「スプラッシュ・マウンテン」の題材を黒人の少女が主人公の映画『プリンセスと魔法のキス』に変更すると25日に発表した。スプラッシュ・マウンテンは1946年に公開されたディズニー映画『南部の唄』がモデルで、映画公開当時の「黒人の奴隷時代が舞台なのでは?」「黒人と白人の交流が現実的でない」などの批判と抗議により、ディズニー側は映画自体の公開を1986年に規制している。
こうした対応について、臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、人種差別をめぐるさまざまな意見を「論理的」「感情的」の2つの観点に分けて次のように分析する。
「日本でずっと育っていると人種差別を経験する機会はあまりないと思うが、例えば白さへの憧れという時、白人への憧れではなく平安時代から肌が白いことが美徳とされてきたんだから日本の文化だ、それを否定される筋合いはないという話が出る。また、企業は営利が必要なので、商品が売れなくなるなら名称を変えようという話になる。これらはどちらかというと論理の話だと思う。
一方で、これらに対して抗議したり不快感を示したりする人の反応というのは、悪い意味ではなくて感情的なもの。それは過去の何らかのトラウマに起因していたり、環境や文化、教育、歴史によって作られてきた、いろいろな“想い”だと思う。そういう感情的な反応に対して、論理で説得しようと思ってもどこまでいっても平行線で、落とし所は見つからない。つまり、どんな切り口を持ってしても基本的に論駁は不可能だということ。大前提として感情的な反応があることをベースに考えて、それを踏まえた冷静で論理的な対応を取ることが必要だと思う」
「名称を変えて済むなら変えればいいのではないか」とも述べる藤井氏。一方、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「嫌な気持ちになる人の総数が少なくなれば」との意見を述べた。
「今回の美白化粧品の話はそういう捉え方もあるのかと思ったが、この言葉が差別なのではないかと気づいた時点で、嫌な気持ちになる人がいるのであればそういう言葉を使わない方が素敵だと思う。いまディズニーも『メリークリスマス』ではなく『ハッピーホリデー』という言葉を使っていて、それは様々な宗教の人がいるから。変わった当初は違和感があったけど、嫌な気持ちになった人はそんなにいないと思うので、嫌な気持ちになる人の総数が少なくなるなら変えていった方が素敵だと思う」
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