新型コロナウイルスが人々の話題を席巻した上半期。しかし、カルロス・ゴーン被告の問題に始まり、様々なニュースが賑わせたことも忘れてはならない。
そこで9日の『ABEMA Prime』では、今春からニュース番組のMCの仕事を始めたお笑いコンビ・EXITの2人やネットニュース編集者の中川淳一郎氏を交えて、上半期の話題を振り返った。
■メディアは不倫ネタで“メシウマ”に
EXITのりんたろー。は、1月に東出昌大・唐田えりかが不倫疑惑を報じられ、東出は復帰を果たしたものの、唐田がSNS等の閉鎖に追い込まれた問題、また、6月に報じられたアンジャッシュ渡部建の不倫報道と芸能活動自粛に注目する。
りんたろー。:薬物は法律違反だが、不倫の問題もまだまだ報じ続けなければいけないのだろうか。それを暴こうとするメディアがいて、失脚するのを皆で面白がっている。もういいんじゃねーの?と思ってしまう。
若新雄純(慶應義塾大学特任准教授):不倫が報じられること自体は昔からあったし、知名度で商売をしているわけだから、プライベートが暴かれたり、それをネタにされたりすることもあり得るとは思う。ただ、昔は会見で笑いに変えたり、反省して復活したり、というところまでがセットになっていた。それが今は違っていて、“ワンアウト・チェンジ”になっている。誰だって失敗はするわけだから、皆にいじられながらも戻って来られる社会にしなければならないと思う。
中川:結局は芸能ネタが強いということだ。特に不倫ネタはページビューがめちゃくちゃ取れて盛り上がる。例えば某氏の不倫ネタについては、Yahoo!ニュースで1日に2500万ページビューくらい読まれた。一方で、別の芸能人同士の交際発覚ネタは1300万ページビューと、半分くらい。そして一発目の記事が出たあとも、メディアがハイエナのように“東出と渡部ではなんで反応が違うのか”“どっちが嫌われているのか”というような分析記事を出しまくり、またそれが800万ページビューのアクセスを取ったりする。そうやって、芸能人がどんどん追い詰められていく。こんな仕事をやっていくのが嫌になったので、来月いっぱいで辞めることにした。
若新:お茶の間の人たちが不快な気持ちで見ているかというと、実は楽しい世間話として消費している。つまり作っている側も消費者の側にとっても“売れるコンテンツ”。その意味では、スキャンダルを報じられてしまった芸能人は、ある意味で“優良”なネタを提供したことになるわけだ。それで本人が散々叩かれて恥ずかしい思いをするのは仕方がないとしても、やっぱり反省した後、乗り越えた後には次のステージが用意されていないといけないと思う。メディアはそのニュースでどれだけ稼いで美味しい思いをしたのか、という話だ。僕の周りでも心を痛めたというより、“メシウマ“だというメディア関係者は多かった。だったら復活した後は良いポジションを与えないと。
■ネット=世論として扱っていいのか?
次いでフリーアナウンサーの柴田阿弥が検察庁法改正案に対するネットの動きについて触れると、ネットの誹謗中傷問題にも話が及んだ。
柴田阿弥:日本の著名人は政治的な発言をしないというのが普通だったが、検察庁法改正案の頃から流れが変わった気がする。みんなコロナ禍で家にいたし、眠れなくてスマホを見ていたせいかもしれない。内閣が検察に対してどの程度の影響力を持てばいいのかはわからないが、日本人は検察を絶対的な正義だと思っているようで、そこは危ないのではないかと感じる。検察だって暴走することもあると思う。
EXIT・兼近大樹:『ABEMA Prime』に出た時と同じことを地上波の『ワイドナショー』で言っただけなのに、“こいつメチャクチャ攻めてんじゃねえか。爪あと残しに来たな”みたいな、変なバズり方をして、ちょっと怖かった(笑)。地上波の情報番組に出たことで、地上波とネットで、こんなにも違うんだ、ネットってこんなに攻めているんだということに気づいた。それでも、何でも言っていくことが大事だと思う。ダメと言われても、なんでダメなのか?と当てていくのが芸能人だろうというスタンスはありだなと思った。
若新:僕は昼間に地上波の情報番組に出ているので、不思議だなと思う。番組を作っている人たちだって地上波とネットで変わらないはずなんだけど、どうしてこんなに設定が違うんだろうと。ただ、ネットには言いづらいことも許すという精神がある。何でも言ってもいいというわけではなく、深い議論をするために必要なら言ってもいいという公共空間だ。その意味で、この『ABEMA Prime』は業界のベンチマークになっていると思う。EXITの2人のフロントランナーとしての責任は大きい(笑)。
中川:地味な話題に見えるけれど、ネットの言論空間がどうなるかというのは大事なテーマだ。去年『BLOGOS』、そして今年は『東洋経済オンライン』がコメント欄を廃止した。ニュースサイトとしては、もちろんページビューになるからということもあるが、議論を活性化させたいということでコメント欄を付けてきた。でも、もはや節度を持ってくれと言うだけでは制御できないし、書き込まれた投稿によってサイト側が訴えられるリスクも大きくなってきている。自由に書ける場所がどんどん無くなっていき、先鋭化したヤツがTwitterで大暴れして逮捕されるという話になってくる。
若新:危険だと思うのは、一部の政治家が“ネットでこれだけの声がある”と主張し始めていることだ。これまである意味で、“ネットはまともに扱わなくていい”ものとして放置されてきたからこそ自由な言論空間だったのが、“これが世論だ”と扱い始めたことで、自由がなくなってしまうことにもなる。ネットを世論だと言って良かったのかどうか、そこは慎重になってほしかった。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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