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3月26日(土)、27日(日)に、東京ビッグサイトで開催された日本最大級のアニメの祭典「AnimeJapan 2016」。今年新設された「クリエイションエリア」では、クリエイター体験講座やビジネスセミナーが実施されたほか、27日(日)には「STUDIO4℃」代表取締役社長・プロデューサーの田中栄子氏をゲストに迎えたクリエイションセミナーが行われた。

「アニメ創りの世界へようこそ!」と題したこのクリエイションセミナーでは、日本動画協会人材育成ワーキング座長で株式会社ビデオマーケット常勤監査役の増田弘道氏による司会進行のもと、ゲストの田中氏が登壇。アニメの制作過程やスタッフの役割などについて、自らのキャリアを振り返りながら、詳しく解説した。

「STUDIO4℃」の創設者ともなれば、学生の頃からアニメ一筋だったのかと思いきや、大学時代は日本語教授法を専攻していたという田中氏。卒業後は海外で日本語教師になるつもりが、バイク事故であえなく断念。広告代理店に就職するも、上司がアニメ業界に転職し、その流れで自身も日本アニメーションに入社。気づけばアニメの世界にどっぷりつかっていた、という意外な経歴が明かされた。

さらに、「入社直後に上司と喧嘩して、企画から制作部に飛ばされた」という田中氏は日本アニメーションで3つのTVシリーズを同時に担当することになり、プロデューサーとデスクと制作進行の3役をひとりでこなした、という驚愕のエピソードも披露。女性の制作進行は1人もいなかったという当時、かなり過酷な状況を経験したというが、それをきっかけに「アニメ業界で男女ともに心地よく働ける環境を作りたい」と考えるようになったと述懐した。

その後スタジオジブリに移り、『となりのトトロ』『魔女の宅急便』のラインプロデューサーを経験。「劇場版の制作スタッフの居場所を作りたい」と「STUDIO4℃」を設立し、過去20年以上にわたり、『MEMORIES』や『アニマトリックス』、『鉄コン筋クリート』、『ハーモニー』といった人気作品を数多く生み出してきた。

「STUDIO4℃」の特色について増田氏に問われた田中氏は「一人ひとりが日本人の個性を世界に轟かせようと息巻いて、商業的に妥協することなく、夢中で作品を手掛けてきたことが、いまのSTUDIO4℃につながっている」と分析。さらにどんな作品に対しても、一回も手を抜いたことがないのが誇れること」だと胸を張った。

具体的な例として「劇場作品の製作の合間にCMゲームの仕事を通じて新しい技術に挑戦し、次の劇場作品に生かしている」と舞台裏を明かし、一般的には分業制が採択されることが多いTVアニメ業界において、作品ごとに工程管理の方法を変えるなど、臨機応変に対応しているのも「STUDIO4℃」の特徴であると紹介。

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また本セミナーのために用意されたという「アニメ業界のフローチャート」を、増田氏は「アニメを目指す人たちにとって画期的なもの」と力説する。現在のアニメ業界はCGの発達にともない、キャリアアップの道筋が多様化されており、どこに進むべきかがあいまいになっている。しかし田中氏は興味を持ったところがあれば、どこから入ってもいいとアドバイス。なぜなら、「作品を作るうえでは、なにより全体の完成形をイメージする目が大切であり、撮影や仕上げから現場に入るという方法もある」と話した。

最後に、女性の活躍の場も増えるアニメ業界の現状について、「男女問わず働きやすい職場になったことの証明」と感想を述べた田中氏。「それぞれが持っている力を発揮して、ここならいい作品が作れるんだ、という原体験を味わってほしい。今後も全世界に通用する劇場作品を生み出せるような人材を育成していくので、やる気のある人たちにぜひ来てほしい」と来場者に熱く呼びかけ、イベントは締めくくられた。

AnimeJapan 2016
AnimeJapan 2016
アニメのすべてが、ここにある。日本最大級のアニメイベント「AnimeJapan 2016」開催決定! 2016.03.25(fri)~27(sun) @東京ビッグサイト 東1~6ホール
www.anime-japan.jp
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