3歳女児ネグレクト死 臨床心理士「加害親への関わりで3人の人を救いたい」の真意とは
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 東京・大田区で3歳の長女・梯稀華(かけはしのあ)さんが自宅で放置され死亡した事件で、7月7日、母親である沙希容疑者が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。

【映像】蒲田署に入る梯沙希容疑者

 供述によると、沙希容疑者は「居間のドアをソファでふさぎ、外出した」「娘は数日前から体調が悪かった」「(滞在先の鹿児島から)早く帰るつもりだったが飛行機が取れなかった」「放置しても大丈夫だと思った」としている。

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 またしても起こってしまった痛ましい事件、児童虐待の相談に15年以上携わっている明星大学准教授で臨床心理士の藤井靖氏に背景の分析と対策について聞いた。

 藤井氏によると、一般的に虐待の背景には大きく(1)(保護者の)心理的特性の偏り、(2)子どもを支配したいという歪んだ教育観、(3)ストレスのはけ口(自分自身の生活でいっぱいいっぱいであり、大事なことを見失っている)、という3つのポイントが考えられると指摘。今回の事件では(1)の可能性が高いのではないか、とした。

 「具体的には、何か一つのことに注意したり集中し続けたり、記憶を保つことが難しかったり、我慢をすることが苦手で、短期的なサイクルで楽しみや快楽を求めるという特性で、インスタの投稿にもそれが表れているようにも感じられる」とし、「子どもを愛していて、写真を撮ったり、一時的に愛情を注いでいたということはあったと思う。また、旅行で鹿児島に行ったときに、ふとしたタイミングで娘のことを思い出したこともおそらくあったと思われる。ただ、そういった親としての感情は本人の中ですぐ忘れられてしまって、目の前の楽しいことや、そのとき一緒にいる人とのやり取りに気持ちがいってしまい、子どもへの愛情を自分の心の中で向け続けることが難しかったのではないか」と分析した。

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 また藤井氏は、「こういった傾向は、沙希容疑者自身が幼少期に親との愛着を形成できず、『人を愛する』という部分がうまく育ってこなかったことが背景として考えられ、一般的には被虐待経験が影響している。これがいわゆる‘‘虐待の連鎖’‘と呼ばれている」と付け加えた。

 では、このような児童虐待が繰り返されている中で、どのように社会は対応・対策していくことができるのか。

 「よく言われるのは、『児童相談所などの関連機関にもっと強い権限を与えた方がよいのではないか』『法的に親の親権をもっと制限した方が良いのではないか』『諸外国のように例えば小学校低学年までは、一人で置いておくこと自体を取り締まる』などということ。これら法律の改正に基づく対策はもちろん同意するところだが、すぐに実現するわけではなく、長期的課題。仮に児相が強権を発動して保護したところで、『実際に誰が子どもをみるか』というリソース不足の問題もある」と藤井氏は説明。

 その上で、「今間近に迫っている危機に対して、どう対応できるかということを現場の実情を踏まえて考えると、虐待の最前線でゲートキーパー、つまり子どもを守れる有力な“門番”になれるのは、身近な交友関係の中で親と人間関係を保っている人」

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 「虐待の加害者の中には、社会的に孤立している人もいる。一方で沙希容疑者のように、それなりに社交的に人間関係を保っている人がいる。一緒に遊んだり、食事に行ったりする人の中には、何らかの違和感を感じていた人がいたのではないか」と指摘。

 「そのときに、いかにつっこむか。もちろん人間関係の中では、周囲の人は関係性が壊れることを懸念したり、答えづらいことを聞くことによって逆ギレされたりすることを気にすると思う。しかしそこで指摘したり追及し続けることで、最低3人の人が救われる可能性がある。加害者になってしまう親、虐待を受けている子ども、子どもが将来親になったときに生まれてくる子どもをも救うことになるかもしれない」とした。

 また、日本の児童福祉制度・体制の課題としてさらなる人的資源、予算の拡充を挙げつつ、「虐待の予防・支援には、当事者が相談に訪れるのを待っているだけではなく、専門家が出向いて相談につなげる『アウトリーチ支援』が重要。攻めていく支援・相談をしないと、なかなか根本的な解決にはつながらない」とし、「ただし専門家でなくとも、身近な周囲の人が非常に重要な役割を担えることも多いし、結果から見ても唯一のゲートキーパーだったという事例もある。気になったら思い切って直接声をかけ続けたり、福祉的なサービス、社会的リソースを活用する道にどうにかしてつないでいくことが、最終的に子どもの命を救うことになる」と説明した。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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