(タッグでの対戦の翌日、肉声を聞いた)

 ノアの新世代エース・清宮海斗が異色かつ重要な大一番を迎えることになった。8月10日、横浜文化体育館でのビッグマッチ。清宮は自らアピールしてマット界のレジェンド・武藤敬司との一騎打ちを行なうことになった。

「最初は6人タッグで3vs3、次は2vs2でやって、次は1vs1しかないでしょう

 タッグを組むところから始まり対戦を望み、6人タッグからタッグ、シングルへ。清宮は武藤との闘いに並々ならぬ意欲を注いでいる。7.18後楽園ホール大会のタッグマッチでも、武藤しか見えていない状態だった。その原動力には悔しさもある。グラウンドで押される場面が目立ち、勝負どころでは足4の字固めに捕まった。

 武藤は清宮の伸びしろを称え「こっちはいろんな引き出しでやってるけど、ギリギリの部分もある」という。しかしそのギリギリ、紙一重のところで超えさせないのがレジェンドのレジェンドたる所以でもあるのだろう。清宮自身は、武藤と闘った感触をこう語っている。

「まず感じたのは“強さ”ですね。スリーパーホールドにしても、上から重くのしかかってきた。ロープに逃げるのも簡単じゃなかったです。そういうところ一つから“闘い”でしたね。武藤さんは重さもあるし、速さもある。相手の先手を読んで動いてる感じがしました」

 そんな武藤に、いかに対抗していくか。「若い自分が体力で負けるわけにはいかない。まして今度は1vs1。これまでとは違ってくる」。昨年1年間、GHCヘビー級王者として先輩レスラーたちを下してきた清宮。だが武藤に対しては今までとは違う自分で向かっていきたいという。

「武藤さんは僕に対して、相手に攻めさせず、自分が攻めて勝つというスタイルできた。そこで分かってきたこと、感じたことを前面に出して闘っていきたい。自分のよさも出しながらですけど、ポイントは1vs1ということ。より“闘い”という部分に意識を置いてやりたい。“食ってやろう”という気持ちです」

 武藤57歳、清宮24歳。年齢もキャリアも大きく違う相手との闘いにこだわるのは、清宮に「武藤敬司の領域に行きたい」という思いがあるからだ。

プロレス界の王様みたいな感じじゃないですか、武藤さんは。大きな椅子にデンと座って、周りには誰もいない。限られた人間だけがいられる場所にいる。その特別な場所に、自分も足を踏み入れてみたいんです。やれる時にやっておかないと」

 清宮にとって、武藤との闘いは単に勝つか負けるかだけのものではない。世界レベルでプロレス界の歴史に名を遺す特別な存在になれるかどうか、自分にそうなる資格があるのかを問うためのものなのだ。

「若いヤツのエキスを吸って生きながらえてる」と武藤は言う。清宮が狙うのは、レジェンドのエキスを吸収して、今以上の高みに立つことだ。

「清宮海斗は、この高いステージに立てる選手なんだと。そうファンに思ってもらえる試合にします」

文/橋本宗洋

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