難病のALSを患った京都の女性に対する嘱託殺人で、医師2人が逮捕された。安楽死の議論が再燃する中、専門家は「安楽死ではない」と指摘している。
▶【動画】死にたい気持ちへ誘導か 嘱託殺人容疑者と被害者のやりとり
去年11月、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALSを患っていた女性の自宅を訪れ、薬物を投与し殺害したとして逮捕された医師の大久保愉一容疑者と山本直樹容疑者。このうち、山本容疑者について医師免許を不正に取得した疑いがあると、共同通信が報じた。
山本容疑者は東京都内の大学の医学部を中退後、海外の大学の医学部を卒業したとして医師国家試験を受験。しかし警察が大学に照会したところ、卒業の事実を確認できなかったという。海外の大学を卒業した人が日本の医師国家試験を受験する場合、厚生労働省が国内と同等の医学教育を受けたかどうかなど、審査することになっている。共に逮捕された大久保容疑者は、2008年から2009年ごろに厚生労働省で海外の大学を卒業したケースの審査を担当する試験専門官を務めていたという。
事件前、山本容疑者の口座には、女性から2度に渡り合わせて約130万円が振り込まれていたというが、この金額は女性が医師側に自ら提示したものだったことが捜査関係者の取材で分かった。
殺害された林優里さんのものとみられるTwitterには病気と向き合う中での心境が投稿されていた。訴えていたのは、苦しさ。安楽死を望む書き込みが度々投稿されていた。大久保容疑者のものとみられるアカウントともやり取りがされていた。以前、林さんのヘルパーとして自宅を訪れていた女性は、林さんの葛藤を目の当たりにしていた。林さんから「海外に行きたい。行って安楽死したい」と聞かされていたものの「死んだらあかん、とりあえず頑張って生きようや」と、声かけを続けていたともいう。
本人が望んだ安楽死だったとの見方もある今回の事件。しかし、生命倫理や死生学を専門とする鳥取大学医学部の安藤准教授は「今回の事件は安楽死ではない」と指摘する。「ある特定の要件を満たした場合には、医師が患者を死なせる行為を行っても罪にならない場合があるということは、司法判断でもって示されている」と説明した後、「その要件というのがこの例は全然満たしていない。その要件の前提となっているのが、医師がその患者の治療にあたっていて、苦痛を最大限に取るための治療というのを尽くした上での判断だが、そういうことが全くなされていない」と、容疑者2人が日々の治療にあたっていなかったことについて問題視した。
さらにSNSとのやりとりでは、容疑者2人から誘導したようなものを感じ取った。「医師の方が『私たち手助けできますよ』と医師の方から誘導している感じがする。2人のやりとりの中で、逆に死にたいという気持ちを高めてしまったというイメージを抱く。その人がどうやって生きていくのか、どう支えるのかをベースにして、治らない病気の時はどうするのかを全体として考えていくべき」と付け加えた。
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