政府の新型コロナウイルス感染拡大防止策の目玉として、466億円の血税を投じ、1世帯あたり2枚が無料配布された「アベノマスク」。ところが、実際には配布は遅れ、不良品も相次いで報告された。またマスク不足が解消された今月も、未配布分の約8千万枚が介護施設や保育所等向けに配られるなど、迷走は続いている。
この一連の騒動を巡り、アベノマスクの問題の本質を「状況に応じて出すべきメッセージを難しくさせた」と指摘するのは、感染症対策の専門家である神戸大学の岩田健太郎教授だ。岩田教授はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染症対策の不備を指摘したことで話題にもなった。
「2月の中旬ぐらいまでは日本の国土の中で感染者はほとんど出ていなかった。だからこそ、ダイヤモンド・プリンセスの感染者を国内に降ろすことがかなり躊躇われた。一方、感染者がほとんどいなかった日本において、外に出るときにずっとマスクをしなければならないというのは、全くナンセンス。これは、晴れているときに傘を差すようなものだ」
そのように述べた岩田氏は「ところが感染者が増えると、今度はザーザー降りの雨の状態。周りの感染者のリスクが増えると、予防手段をとらなければならないが、マスクは数々の専門家が指摘しているように、ウイルスを完全にブロックする力は非常に弱い。マスクをしていれば大丈夫ということはない」と続けた。
実際に感染拡大が広がっていく中で、マスク着用の有効性と必要性については、専門家も含めて異なる意見と報道が混在した。
そのことについて岩田氏は「じつは雨がザーザー降りになって、災害レベルの大雨になったら、傘を差す(マスクをする)ではなく、『外に出るな』ということになる。これがソーシャル・ディスタンスやステイホームの骨子になる。状況によって出すべきメッセージがある」としたうえで、アベノマスクがもたらした問題の本質について次のように指摘した。
「本来は状況に応じて出すべきメッセージがあるが、出すことを難しくさせた最大の理由がアベノマスク。マスクを配ると言ってしまった以上、マスクはあまり意味がないとは言えなくなった。専門家会議の専門的な知見と厚労省の政治的なメッセージが混在して、何が政治的なステイトメントで、何が科学的なステイトメントなのかが、ごちゃごちゃになってしまった」
その背景について、岩田氏は次のようにも持論を展開し、政府の対応について苦言を呈した。
「いついつに緊急事態宣言を解除する方針で調整を進めている。いついつに専門家会議を開いて最終的に決定するなどということが報道で聞かれたが、これはつまり政治的な根回しが先にあって、最後に専門家会議がお墨付きを与えるということ。本来であれば科学的なデータの解析があり、専門家会議の決定があり、それについて政治的な発信が検討されるべき。順番としてはサイエンスがあって、ポリティクスとなる。それが混在しており、何がサイエンスで、何がポリティクスなのかがわからない。だからマスクについても、政府や厚労省は明確なステイトメントはずっとできていなかった」
(ABEMA『ABEMA的』ニュースショーより)
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