七月場所は平幕下位に元大関が4人も名を連ねるという異例の場所となったが、いくら実績のある力士でも番付が落ちたならその地位に見合った相撲しか取れないというのが角界の定説である。なぜなら、番付とはケガや年齢による衰えなども踏まえたうえで、現状の実力を表した序列だからだ。いくら元大関が平幕下位にいるからと言って、そう簡単に勝てるものではないのは過去の歴史も証明している。
現に今場所も大関経験者の高安や栃ノ心もここまで一進一退の成績だ。十一日目に8勝目を挙げた元大関琴奨菊も7場所ぶりの勝ち越しとここ1年あまりは苦戦している。そんな中で大関を通算14場所務めた照ノ富士だけが定説を覆す活躍を見せている。5日目は高安との元大関対決に敗れたものの、それ以外はきれいに白星を積み重ね十一日目に勝ち星を2ケタに乗せた。さらにこの日は全勝の横綱白鵬に土がつき、1敗で優勝争いのトップに並ぶことになった。
両膝のケガや病気がもとで、2017年秋場所限りで大関の座を明け渡すとその後は坂道を転げ落ちるように番付は急降下。1年前の春場所は序二段まで陥落しながら復活の階段を駆け上がり、2年半ぶりに幕内復帰を果たしたのだった。
今場所は上位陣が軒並み好調なため、幕尻の照ノ富士がこの先、横綱、大関陣と本割で対戦が組まれるのかは何とも言えない状況だ。上位陣で星の潰し合いとなれば大関に昇進する直前の2015年夏場所、関脇で初優勝して以来、5年ぶりの賜盃も現実味を帯びてくる。
まだまだ予断は許さないが、もし優勝となれば幕尻では今年初場所の德勝龍以来、史上3人目。元大関の平幕優勝は1976年秋場所の魁傑以来、44年も遡る。元関脇琴錦の43場所ぶりには及ばないものの30場所ぶりは史上2位のブランク優勝となる。優勝した後、幕内から陥落して再び賜盃を抱くことになれば過去に例を見ない。
本人は優勝争いについて全く意に介さず無心を貫くが、賜盃を抱くことになれば、かつてない復活優勝となる。しかし、28歳の元大関にしてみれば、それは「完全復活」の序章に過ぎないのかもしれない。
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