「GoToトラベルが良策だとは全く思わない」 “世界最多”のアメリカで感染抑えたNY州、日本が学べることは
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 いまだ増え続ける新型コロナウイルス感染者。しかし、東京都の小池知事は「旅行、帰省、夜間の会食、遠くへの外出、これをお控えいただきたい」、菅官房長官は「政府としては全国一律に帰省の自粛を求めるものではない」と述べるなど、政府と自治体の足並みはそろっていない。

【映像】感染抑えたNY州 日本が学べることは

 そんな中、7日に行われた専門家による分科会で尾身茂会長は、感染状況判断のための6項目を発表。これを目安に早期対策を政府・自治体に求めた。

 感染拡大を防ぐために我々はどのように生活すべきなのか。7日の『ABEMA Prime』では、世界最多の感染者を出しているアメリカに着目。感染者が増える中、ニューヨーク州など独自の対策で感染者を抑えている地域から日本が学べることはあるのか。

■1日の新規感染者は1万人超から数百人に、NY州の「移動制限」

 分科会で示された指標は4段階のステージに分けられ、「病床占有率」「10万人あたりの療養者数」「PCR検査陽性率」「10万人あたりの感染者(1週間ごと)」「直近1週間感染者」「経路不明割合」の6つの項目をもとに評価する。

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 これに東京と沖縄を照らしてみると、東京は「病床占有率」「直近1週間感染者」「経路不明割合」の3つ、沖縄は「PCR検査陽性率」以外の5つがすでに「ステージ4」の数値に。ステージ4は「緊急事態宣言」も検討せざるを得ない状況だとしている。

 今回、具体的な指標が示されたことについて、アメリカ国立衛生研究所・研究員でウイルス学や免疫学が専門の峰宗太郎氏は「医療の状態や検査の状況を具体的に指標として出したのはわかりやすくていいと思う。あとは総合判断として、いつ緊急事態宣言などの強い規制をするのか、どんな基準で行うのかということまで明確になるといいというのがまず1つ。また、感染者数が増え続ければ、どの時点でどういう状況に達するかという予測もできるはず。そこももう少し明確に出てくるとよりいいと思う」との見方を示す。

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 ニューヨーク・タイムズによると、ニューヨーク州の感染者は42万3637人で、死者は3万2294人。1日あたりの新規感染者数は、4月は1万人を超える日もあったが、5月以降は抑え込んでおり、8月6日は702人となっている。

 感染症対策と経済対策の両方を見据える中、ニューヨーク州が特に警戒しているのは“再流行”だという。峰氏は「ニューヨーク域内においては、人の接触をかなり減らすことができている。しかし、他の地域で非常に強い流行が起こっていて、そういったところから新たな持ち込みがあると、予想していないところでクラスターが発生してしまう。そうすると対策が後手に回るということを考えて、とにかく外から入ってくる人を制限して、どこで流行が起こっているのかを確実に掴んでいくことを徹底している」と話す。

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 ニューヨーク州では移動制限措置を取り、感染者が急増する州(対象州は直近7日間平均で陽性率が10%以上、または陽性者数が住民10万人当たり10人以上)からの移動者に14日間の自己隔離を義務付けるほか、移動者に連絡先の提供を義務付け、提供しない者には2000ドル(約21万円)の罰金を課すとしている。

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 ジョンズ・ホプキンス大学によると、世界の感染者の各国の割合はアメリカが26%で4分の1を占める。また、6日のアメリカの新規感染者数は5万9692人だが、日本(7日は1605人)と比べると大きな差がある。

 峰氏は、アメリカの検査数は日本の比ではないものの問題点もあるとし、「日本と違って本当に検査数が足りていない。流行状況があまりにも激しいので、検査を日本の100倍やったとしても(流行が)日本とトントンという状況になっている。検査がまだまだ足りないという実情がある」と指摘する。

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 また、同じくジョンズ・ホプキンス大学によれば、アメリカの累計死者数は6日時点で約16万人。この点について2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は「(グラフの)カーブ自体は緩やかになっていない。日本は第2波と言われることもあるが、死者数がほとんど増えていないので大丈夫ではないかと言われていたりする。アメリカは第2波で死者数が少なくなっているということはあるのか」と質問。

 これに峰氏は「アメリカでは感染者が高齢者にも広がり始めている面がある。やはり、高齢者に広がってしまうと重症者数・死者数は必然的に増えてきてしまうので、全然抑えられていないという印象になっている」との見方を示した。

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 そもそも感染に対する“恐怖”は、日本とアメリカで認識が違うのか。「非常に差があって、恐怖感を覚えてしっかり対策を行っている層もいる。しかし、一部の人たちは“コロナ感染パーティー”というものを開いてお互いにうつし合ったり、“コロナチャレンジ”といってグループの中で最初に感染した人が総取りする賭けを行ったりしている。マスクを付けるということに関しても、“神様に顔を見せられない”“呼吸する権利を奪っている”などと提訴をする人がいたり、様々なことをおっしゃる人がいるのがこのアメリカという国だ。地域の差があって、政治的信条として共和党寄りであるか民主党寄りであるか、大統領を支持するか支持しないかということも絡まって、完全に政治案件になっている面もある。我々日本人が言うような常識や感染症を重要視するコンセンサスができているかというと、できていない状況にあると思う」。

■ニューヨーク州はなぜ抑え込みに成功? 感染者急増のカリフォルニア州

 4月には「医療崩壊」が伝えられたニューヨークだが、なぜ抑え込みに成功したのか。新規感染者は抑えられている一方で、経済再開も最終段階の第4段階へと移行している。ニューヨーク州では依然、屋内飲食店は禁止、感染者急増州からの移動制限、植物園や動物園の収容人数は33%、スポーツ競技は観戦者なし、メディア制作も自治体の規制に従う、ショッピングモールは空調設備を整えるといった規制を続けているが、これらがうまく働いているのか。

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 この点について峰氏は、「我々が“実効再生産数”と呼んでいる、どのくらいの人にうつしているかの値が1を切ってくれば自然に収束するというのが今回の感染症なので、接触を断っているというのがかなり大きい。特に屋内の飲食店や夜間のバーはいまだに禁止されているところが多く、クラスターを発生させずに感染者数が大きく増えることを抑えている。同時に、どういうところでクラスターができるかをよく検出していて、そこに対して強い規制をかけている。なおかつ、外からの流入を抑えていて、こうした目端の利いた対策をすることによって、予想外の感染が広がらないようにしているということが大きいと思う」との見方を示す。

 では、ニューヨークのケースをロールモデルとして、抑え込みに成功した州はあるのか。「基本的にアメリカは各州が1つの国のようになっているので、州知事の指導によって変わる。私が住んでいるメリーランド州、ワシントンD.C.地域もかなり抑え込みには成功している。連邦政府が出しているものを指針として、それぞれの地域の流行状況によって良いところを真似しながらになるが、文化的なことや政治的な姿勢などによって取れる体制にも差がある。どういう対策をするのが最適かということは、どこも模索しているというのが正しいところだと思う」と説明。

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 また、ひろゆき氏の「ニューヨークではふらっと入って検査できるような場所が無料で提供されていると聞いた。ニューヨークみたいに豊かな州で予算があるからできることなのか」との質問には、「実は同じようなことが言われている。ニューヨークは財政状況がかなり良かったということもあり、徹底した検査ができる。また人材も豊富だ。検査には試薬などのサプライ品が重要になるが、ニューヨークは争奪戦に勝ったということがあり、むしろ検査ができなくなっているという地域もある。ニューヨークは幸運なこともあったし、流行がひどかったので特に対策を強く行ったことの良い部分が出た」とした。

 ニューヨーク州とは対象的に、新規感染者を多く出しているのがカリフォルニア州だ。ニューヨーク・タイムズによると、カリフォルニア州の感染者は54万951人で、死者は1万14人。1日あたりの新規感染者数は、右肩上がりで7月に1万人を超え、8月6日は8175人となっている。

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 同じ国でなぜここまで違いが出るのか。峰氏は「カリフォルニア州では3月4日にいち早く非常事態宣言を出していたが、その後の対策がうまくいっていたために、かなり経済を早く再開させようとした。そのため、人と人との接触を十分に抑えられない状況が続いてしまい、感染症対策にもう一度力を入れるということを油断していたところで感染が広がった」との見方を示す。

 カリフォルニア州は7月13日、州全域に屋内飲食店の停止等を命令した。レストラン・ワイナリー・映画館などの再停止や、バーやパブなどは原則として屋内外を問わず閉鎖、一部の郡はジム・フィットネスセンター・理美容院・ショッピングセンターなどを閉鎖し、州内8割の人に影響が出ているという。

■ニューヨーク州の“抑え込み”に日本が学べることは

 日本でも、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、自粛ではなく強制力を持たせるべきだという議論がある。

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 これに峰氏は、「強制力が必要かどうかは、法の建て付けや国の形の問題になるのでよく議論をしていただきたいが、やはり原理原則は人と人との接触を抑える有効な施策を打てるかどうか。自粛で効くような国民の緊迫度であれば、自粛要請でも感染対策として十分だと思う。今の国の状態、国民の心情的な状況などを考えて、どうしても必要であれば法改正なども行って強い対策ができればいいのではないか」との見方を示す。

 また、ひろゆき氏は日本の「GoToトラベル」を引き合いに、「アメリカ国内で、州をまたいだ移動に補助金を出そうといった話は出ないのか」と質問。峰氏は「さすがに今の時点で『旅行をバンバンしよう』と言っている方は少ない。業界を支えるために補助金を出しましょう、補償しましょうという話はあるが、移動して下さいというキャンペーンはさすがにない。GoToトラベルで救われる旅行業や観光業、地方銀行等を含む地方経済を支えることは当然重要だと思う。しかし、現時点では感染症対策と経済対策を両立させる中で、人の移動を促進させることが良策であるとはまったく思っていない」と指摘する。

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 一方、ニューヨーク州では屋内飲食店を禁止する措置をとっているが、お笑いトリオ・パンサーの向井慧は、「今の日本でできる気がしないが、日本との差は何か」と質問。これについて峰氏は「ニューヨークは屋内飲食禁止になっているが、デリバリーやテイクアウトの文化が元々盛んだったり、屋外では可能になっているので、テラスのような部分や歩行者天国を作って、そこで営業ができるようにしたりしている。また、補助金をできるだけ多く出すことにより、守れる部分は守ろうという姿勢を行政が強く打ち出しているところはある。そういった差はあるのかなと思う」。

 では、ニューヨークの規制は成果を出しているとみていいのか。峰氏は「成果として十分出始めているし、これが維持できればいいのではないかと考えている」との見解を示した。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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