今週、EXシアター六本木(東京・港区)で開催された『六本木アイドルフェスティバル』。ソーシャルディスタンスを確保した座席に座った来場者はマスク着用が必須で、歓声は禁止。それでも「これぞライブの魅力」「久しぶりにライブ行ったけど、やっぱいいわ」と喜びの声が上がった。
ただし、コロナ禍でのこのような活動は一部のアイドルの、それもわずかな機会に限られているのが現状だ。多くは重要な収入源だったファンとの触れ合いを自粛、代わりにライブ映像の配信や、それに付随する投げ銭システム、オンラインの特典会などで収益を得ようとしている。
国内外で4つのグループを手がけるアイドルプロデューサーのへなぎ氏は「(事務所・グループによっては)売り上げに関しては半分以下。1、2カ月ぶりにやった無観客ライブの配信はたくさんの人が見てくれたが、視聴者は徐々に尻すぼみで減っていった」と話す。
こうした状況から、解散するグループや卒業を余儀なくされるメンバーもいるようだ。今年6月、ライブ配信をもって7年にわたるアイドル活動にピリオドを打った本田夏実さん(25)は、コロナだけが卒業の理由ではなかったこともあり、「ファンの人に会えないという寂しさがあった」と明かした。
■オンライン化で「“私の仕事って何だっけ”と不安になった」
アイドル歴10年の寺嶋由芙は「多くのアイドルにとって、会場に来てもらえるかどうかが大きかったが、それがオンライン化している」と話す。
「握手や並んでツーショット写真を撮影することなどはできないので、例えばネット上でサイン会を開く。私の場合、CDを買ってくれた人に対して名前や欲しいメッセージを募っておいて、名前を読み上げながらサインしている様子をYouTubeで生中継した。顔見知りのファンなら、“おうちのワンちゃん元気ですか”など、個人的なメッセージも入れてみたりする。アイドルとオタクは直接連絡を取ることはできないので、そんな風にして補っている。地方に住んでいる人にサインやレスポンスを届けやすくなったのはメリットだし、ネットでのお話し会では、逆にファンの家の様子を見ることも新鮮ではある。でも、これがずっと続くのかと思うと寂しいし、やればやるほど“元気かな”と思ったりする」。
このようなオンラインでの活動がメインとなったことで、求められるスキルも変化したと感じているという。
「2000年以降のアイドルというのは、歌って踊って、ファンの人に楽しんでもらうものだと思う。自分もそれを目指してきた。ただ、楽しんでもらう形が変わってきている。歌やダンスのスキルではないところが評価されつつあるので、今までのやり方で戦っているアイドルは、投げ銭文化の中では厳しいと思う。配信ではリアリティが出すぎてしまうので、そのことにも悩んでいる子は多いと思う。私も“アイドルとは何だっけ”ということを、この自粛期間中に考えた。家から配信をしながら、“私の仕事って何だっけ”と不安になった」。
■ライブ配信は過渡期?アプリやプラットフォームの開発も…
一方、フジテレビ社員で世界最大のアイドルイベント「TOKYO IDOL FESTIVAL」のプロデューサーも務める菊竹龍氏は「配信がリアルのライブと違うのは、チケット料金の低さだ。なおかつ家で“ながら見”もできてしまう。マスに知名度のあるトップアーティストにとっては収益面で配信の方がいいのかもしれない。“何十万人視聴”、“チケット販売売上が20億以上”など、やや数字が先行しているイメージはあるが、音楽業界にとってはとてもうれしいこと。ただ、平たく言ってしまえば、アーティストパワーやコンテンツパワーが全てになるので、数字的にうまくいっていない配信も存在する」と話す。
「やはり、音楽シーン全体で仮説と検証を繰り返していく必要がある。実際、周りの音楽業界、ライブ業界関係者から、“もうお客さんを入れたライブはしない。今後は配信のみでいく”と言っている人はいない。難しい状況ではあるが、どうにかファンを入れたライブの実現を目指して、歯を食いしばって戦っていると思う。例えば欅坂46の配信では、アーカイブや見逃し配信をしなかった。これは“今、この瞬間しか見られない”という、リアルタイム性を最も重視した展開だ。これも一つの価値だと思う。また、東方神起のBeyond LIVEなどでは、Zoomの画面のようにファンの映像が出て、インタラクティブなコミュニケーションができていた。そういった様々な取り組みを皆がトライアンドエラーしている時期だと思う。寺嶋さんたちが取り組んでいるネット特典会のようなことを安全に運営できるアプリやプラットフォームの開発も進んでいる」。
菊竹氏が手掛ける「TOKYO IDOL FESTIVAL」も今年はオンラインで開催。バーチャルアイドルの出演や、CGステージへの挑戦など、ライブ配信ならではの取り組みも見所となっているようだ。寺嶋も「TIFはどうなってしまうのかなと心配もしていたが、今だからこその新しい試みをみんなが考えてくれているのは心強い。ワクワクしてきた」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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