将棋の名人戦七番勝負第6局が8月14、15日の2日間、大阪府大阪市の関西将棋会館で行われ挑戦者の渡辺明二冠(36)が、豊島将之名人(竜王、30)に99手で勝利し、シリーズ成績4勝2敗で名人獲得に成功した。竜王、棋王で永世称号の資格を持つ名棋士が、2000年4月のプロデビューから丸20年となった年に悲願を達成。36歳3カ月での新名人は歴代4位の年長記録となる。
ついに念願叶っての名人獲得だ。3勝2敗とタイトルに王手をかけて臨んだ第6局は、得意としている矢倉で決着をつけにいった。後手番の豊島名人が積極的な姿勢を見せる中、時間をしっかりかけて対応。形勢互角のまま1日目の終了を迎えた。2日目に入り、難解な中盤で少しずつリードを積み上げると、終盤に向けては昼食休憩を終えた直後に勝負を決めに行く決断の一手。豊島名人から反撃も受ける中でも、見つけた勝ち筋を的確にたどり、快勝で名人の座を手に入れた。
対局後、渡辺二冠は名人となったことに「初挑戦だったこともあって、意識することはなかったので、ちょっと実感はないですね。ちょっと自分には縁がないなと思っていたので、そういう意味でも実感がないですね」と噛みしめるように答えると、今後については「タイトル戦はもう今年はないので、名人戦の前にタイトル戦が続いていたこともあるので、少し休んで次に備えたいです」と語っていた。
竜王11期、棋王8期など、通算でタイトル25期を誇ってきた渡辺二冠だが、ここまで名人挑戦は一度もなかった。2017年度には勝率が5割を切る不振で、8期連続だった順位戦A級からB級1組に降級もした。それでも見事な復活を遂げ、2018年度のB級1組で全勝しA級復帰を果たすと、2019年度のA級は史上4人目となる全勝で挑戦権を獲得。7月に藤井聡太棋聖(18)に棋聖を奪われるまで三冠を保持していたこともあり、2019年度の将棋大賞・最優秀棋士賞を受賞し、“現役最強”とも呼ばれていた。今回の名人獲得で再び現在唯一の三冠保持者となり、その名も取り戻すビッグタイトルの獲得となった。
◆渡辺明(わたなべ・あきら) 1984年4月23日、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年4月に四段昇段、プロ入りを果たし、15歳11カ月で史上4人目の中学生棋士となった。2004年度に竜王で初のタイトルを獲得すると、そこから9連覇し永世竜王の初代有資格者に。8連覇中の棋王でも永世称号の資格を持ち、タイトル通算26期は歴代5位、現役3位。一般棋戦は優勝11回。九段昇段の最年少記録(21歳7カ月)、最速記録(5年7カ月)を持つ。
(ABEMA/将棋チャンネルより)