選択的夫婦別姓について、今年3月の自民女性議員連盟で「生き方も多様化する中、周囲でも60歳すぎて結婚されるカップルもいて、60年使ってきた名前を変えることは自分だったら耐えられないだろうと思った」と発言し話題になった、元防衛大臣の稲田朋美衆議院議員。
選択的夫婦別姓に反対の主張をしてきた稲田氏はなぜ、賛成派に立場を変えたのか。稲田氏が考える保守とは。14日の『ABEMA Prime』は、稲田氏をスタジオに招き詳しく話を聞いた。
■稲田朋美氏に聞く“リベラル転向”? 真意は
選択的夫婦別姓に対する考えが変わったことについて、稲田氏は「特に母親や父親、子どもの姓が違うことは、家族の一体感を阻害するという思いで、反対の論陣をずっと張ってきていた。ただ、国会議員になって16年、どんどん社会も変わっていき、家族も多様化するし女性もどんどん外で働いて活躍するようになった。人生100年時代で、60歳になっても70歳でも結婚する人が出てくる中において、自分が築き上げてきた名前を変えることはとても辛いことだと思うようになった。また最高裁で、夫婦別姓を認めていない今の民法は憲法には違反していないという合憲の判決が出たが、その判決をよく読むと、女性の最高裁の判事はみんな反対意見を言っているし、最高裁自身もこの問題はしっかり国会で議論すべきだと言っている。ところが、全然議論が進んでいない」と話す。
また、ひとり親世帯への援助についても、自民党は寡婦控除対象に未婚ひとり親を含む案に反対していたが、稲田氏は「伝統的家族を壊したくない」ことを理由としたことを疑問視。そして2019年秋、稲田氏が共同代表を務める「女性議員飛躍の会」などで働きかけ、2020年度税制改正で、2020年の所得税から未婚ひとり親世帯も対象になった。
こうしたスタンスの変化について稲田氏は、「防衛大臣の時にかなり試練もあった。自分も順調に来たところから外れて、当たり前のことだが順調に来ることだけが人生ではないし、少し外れたり失敗したりという人の気持ちが、全部他人事ではなく自分事になった。そうすると、離婚したとか未亡人ではなく未婚のひとり親だからといって税で差別をしてもいいというのはおかしいな、伝統的家族を守るという理由で不当な扱いや差別をするのはおかしいと思った。いろいろな理由があるかもしれないが、伝統的家族を守るという理由でそれに入れなかったり、入ったけど出てしまった人を除外するのは違うと思う」との考えを示す。
考えが変化する中で、稲田氏をこれまで支持してきた人から批判はなかったのか。「ものすごくあった。例えば夫婦別姓を認めることは伝統的家族を壊すことだし、『ブレた』と。未婚のひとり親を支援することも伝統的家族を壊すことだし、左翼的になったということは今も言われているが、それは全然違うと思う。保守というのはもっと多様性を認めることだと思っている」。
慶應大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「国民が何を伝統だと思い込んでいるのか、何を守るべき保守だと思い込んでいるのか。本当に保守か伝統かではなく、そういった思い込みに焦点を合わせていた。しばらくの間、夫婦別姓なんておかしいというのはわかっていても、ファンサービスだったと思う。ただ、稲田さんはセンスが良くて、ファンサービスで言っていたら自分が足元をすくわれたり、世の中の価値観は多様化しているということを敏感に感じ取ったのではないか」と考察する。
これに稲田氏は「戦略的にできる人間ではない。おっしゃるように多様性を認めるというのは保守ではないという考え方もあるが、本当の保守は自分に対して謙虚だということなので、人の意見も聞くし、いろいろな状況の人の話も聞く。その上で何が正しいのかを考えるのが保守であって、なにも一旦決まったことを未来永劫守るとか、閉鎖的だとか排除するものではないと思う」と述べた。
■「ズバリ、総理になれるのは何%?」稲田氏の答えは
稲田氏は現在61歳。2005年9月に初当選し、現在5期目だ。2006年2月に「伝統と創造の会」を設立し、会長へ就任。2012年12月に第2次安倍政権で初入閣、規制改革担当大臣などを務める。そして2014年9月に自民党政調会長へ就任。2016年8月から2017年7月まで防衛大臣を務めた。2019年9月からは自民党幹事長代行に就任している。
「いよいよ総裁選へ」という声に対して稲田氏は、「自然体。いつも言っているように、やはり国会議員になった以上は総理を目指すものだと思っている。常に挑戦はしたい」と語る。
また、総理になって成し遂げたいこととして、「安倍政権ができなかったことというよりも自分がやりたいこと、もっといろんな人が自由に活躍できる社会。私が未婚のひとり親などにも取り組んだのは、自民党が今まで置き去りにしてきたというか、今回のコロナでも本当に困っている世帯には届いていないという、今まで少し置き去りにしてきた問題をしっかりと解決していきたいと思う」と述べた。
ポスト安倍と取り沙汰されるのは、石破元幹事長、岸田政調会長、河野防衛大臣、菅官房長官、稲田幹事長代行、加藤厚労大臣、小泉環境大臣、西村経済再生担当大臣、野田元総務大臣、茂木外務大臣、下村選対委員長など。最大派閥の清和政策研究会だけを見ても、西村氏や下村氏の名前があがっている中で、そもそも足元を固められるのかという声もある。
「全然見通しは立っていない」と話す稲田氏。自身が総理になりたい理由について、「自分がやりたいことは自分が一番分かっているし、自分がやりたいことと人がやりたいことが一致するか分からない。むしろ自分がやりたことは何かを明確にして、それで仲間を募っていくのがあるべき姿ではないかと思う」とした上で、「女性活躍もなぜ言っているかというと、あまりにも日本の政治家に女性が少なすぎる。女性を増やすことが女性のためになるのではなく、女性の視点を入れることが日本の民主主義をすごく幅広いものにするし、いろんな政策を良い方向に持っていくと思う」と語った。
稲田氏の主張について、AV女優の紗倉まなは「稲田さんがおっしゃった話は、今の自民党の主流の考え方から少し外れた部分を感じるが、党自体が枷になるとすれば、今後自民党から離れて自身の主義主張や政策を進める可能性はあるのか」と質問。
稲田氏は「やっぱり私は自民党が好き。野党と自民党の違いは、自民党には綱領があって、どういう政党であるか最初から明らかにしている。その中の一つが、例えば憲法改正もそうだし、旗があって集まっている政党は自民党と共産党くらいだろうか。なので、私は自民党にこだわっている」と答えた。
「ズバリ、総理になれるのは何%か」という質問に、稲田氏は「まず出られるかどうかにかかっていると思う」と回答。出られる確率については、「それはこれからだと思うのでまだ未知数」とした。
また、「そもそもコロナ禍の次の選挙で自民党は勝てるのか」との質問には、「相当厳しいと思う。今のコロナに対する対応、あまり自民党の批判はしたくないが、ただ本当に困っている人に届けるにはどうしたらいいかということをここから政策として打ち立てていかないと、かなり厳しい判断は出るかと思う。自民党の良いところは、いろんな議論をしてそれを政府にぶつけるというところなので、私は強い党を作ることも重要だと思う」と語った。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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