中央から真っ二つに割れた船。インド洋・モーリシャス沖で座礁した日本の貨物船「わかしお」の現地時間16日の様子だ。周りの海面は黒く濁っており、船内に残っている油が流出し続けていることがわかる。
先月26日、「わかしお」は陸から約2キロの場所で座礁し、この影響で約1000トンもの重油が流出した。大量の油は島まで流れ着き、モーリシャスが誇るマングローブも真っ黒に。人々は重油まみれになりながら回収に追われている。
そんな中、島への漂着を少しでも防ぐため立ち上がったのが、地元住民。サトウキビの葉などを利用したオイルフェンスを海に浮かべ、重油の拡散を防ぐ作業が続けられている。また、このオイルフェンスの材料として使われている意外なものが…「髪の毛」だ。
「“髪の毛のフェンス”。髪の毛は重油の吸着が強いそうなんです」
こう話すのは、モーリシャス在住19年で、旅行関係の仕事をしている村野アナンディー百合さん。村野さんによると、現地では自分たちの大切な海を救うため、自らの髪の毛を切る住民が相次いでいるという。村野さん自身も肩より長かった髪の毛を切った。
「13日の時点で3.5km分のフェンスができていると。16日午後の時点でタンカーのオイルが全部ポンプで上げられてなくなったので、今フェンスの作業はストップになりました。流れ着くのを防ぐためのフェンスだったので、今は流れ着いてしまった残りの重油をどうやって撤去していくかということに重点が置かれ始めています」
今回の事故について、モーリシャス政府は環境や経済に影響が出ているとして、貨物船を所有する長鋪汽船に賠償を求める方針だとAP通信は伝えている。
現地に住む日本人として、この事故をどう受けとめているのか。村野さんは「日本の船ということでびっくりしたのと、タンカーがすごく大きかったのと、入っている重油が多かったこと。重油がこれ以上海岸に来ないように、被害が増えないようにということをモーリシャスは考えているので、日本人として一緒に何ができるのかということを考えました」と話す。
また、現地の日本人が置かれている状況については、「モーリシャスに住んでいる人から何か(言われる)というよりも、自分自身の気持ちがすごくモヤモヤして、つらい部分はあります。モーリシャスの方たちは、今は人を責めるよりもとにかく重油が海岸に着かないように、きれいな海を保とうと。海が汚れてしまうのが今後のモーリシャス経済にとって一番大変なことなので、日本人に対してどうこうということはあまり聞いていないです。日本の船というよりも『わかしおはなぜこうなったんだ』ということは話されていますが、早く重油をなくしたいということで、みんなで協力しあっています」と説明した。
そんな中、モーリシャス日本人会「MONIKA」が寄付を募っているクラウドファンディングがほぼ達成状況にある。モーリシャスへの支援の形について村野さんは、「重油の件で知ってもらったかと思いますが、日本でできることは何かと考えた時、もちろん援助・募金というのもあるんですけど、それよりもモーリシャスをもっと知っていただいて、今後日本から動ける時にモーリシャスに来ていただけるのが、今後の復興につながっていくのかなと思います。これをきっかけにいい方向にいくといいなと思っています」と思いを語った。
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