20日からスコットランド・ロイヤルトゥルーンGCにて開催された「第44回全英女子オープンゴルフ」。悪天候と難関リンクスに苦しみながらも大健闘した選手たちの姿に「勇気をもらった」「本当にお疲れ様でした」「素晴らしい試合だった」と、大会から一夜明けた今日もネット上では興奮の声が鳴り止まない。
連覇が期待された前回女王、渋野を始めとした「黄金世代」の5名。予選2日目を終えて9位タイと、優勝争いも期待された野村敏京。どの選手も今できる精一杯のプレーで試合に臨んだが、4名が予選落ち、野村22位タイ、畑岡64位タイという結果に終わり、選手たちも悔しさをかみしめた。
そんな中、笑顔でプレーを終えたのはベテラン、上田桃子。同大会10回目の挑戦となった上田は52位タイで予選を通過。安定のプレーで3日目は19位タイへとランクアップし、4日間のプレーを終え、単独6位という結果となった。これは2008年の7位を上回る、自己最高位だ。
プロとしての実力はもちろんのこと、ゴルフには経験値や頭脳も必要だ。上田は圧倒的な経験値を生かし、終始冷静に、緊張感を持ってプレー。「キャリアハイ達成」という目標、地元熊本を盛り上げるという熱い思いも、好プレーに繋がったのではないだろうか。
コースごとに戦略を練り、ホールの距離や特徴などに合わせたクラブ選びも重要となるゴルフ。レギュラーツアーに出場する女子プロは、契約メーカーの最新クラブを使用し、毎年クラブセッティングを変えることも多い。更にコースに合わせクラブを交換することも珍しくないが、上田の場合は少し違うようだ。
同大会開催直前の7月後半、上田の最新クラブセッティングが公表された。上田のクラブセッティングは「風に流されない強いクラブを好む」「クラブをなかなか替えない」というこだわりがあることで有名だ。最新クラブセッティングでもやはり13年モデルのフェアウェイウッドを選択。これはアメリカ女子ツアー参戦時から使用しているもので、上田の「お気に入り」と言っても過言ではない。また、アイアンも長年使用している16年モデルのものを導入しており、多くのプレーを共にした「信頼感」を重視していることがわかる。
とはいえ、上田が頑なに古いクラブにこだわりたいのかといえば、そんなことはない。上田と契約している「キャロウェイゴルフ」のツアーレップによれば、上田は常に新しいクラブを試し、使おうとしている。しかし上田の抱く弾道イメージやドライバーヘッドの見た目の好みなど、さまざまな好みにマッチしなければ、新しいクラブに交換することはない。
今回大会が開催されたロイヤルトゥルーンGCは海からの強風がプレーを阻むリンクス。上田が好む「風に流されないクラブ」の強みが存分に発揮されるコースだったと言える。初日、2日目の悪天候と強風にも適応し、3日目に大きく順位を伸ばすことができたのは、技術と経験値の高さはもちろんだが、長年愛用するクラブによる効果も大きかったのではないだろうか。
最終日は3日目までとはうって変わってのほぼ無風。上田はボギーなしの67という好スコアで戦いを終えた。海外メジャーでの久しぶりの上位争いに「正直言うと疲れました」と素直な心境を語った上田。しかしその顔は「自己最高位」を達成した充実感に満ちていた。