放送中のTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』(SAO アリシゼーション WoU)最終章の第18話では、主人公・キリトがついに復活を果たした。SNSを中心に歓喜の声が寄せられ、Twitterでは公式ハッシュタグ「#sao_anime」がトレンド1位に輝くという大反響だった。
【映像】「ただいま、アスナ」視聴者大反響のキリト(CV:松岡禎丞)復活シーン ※21分ごろ~
シリーズ最長のボリュームを誇り、全4クールに分けて描かれた《アリシゼーション》編がついに最終章を迎える本作。仮想世界《アンダーワールド》で繰り広げられる人界軍の整合騎士たちと《闇の軍勢》との戦争が描かれ、現実世界を巻き込んだ壮大な物語が展開されている。
ABEMAでは「キリトウィークSP」と題し、キリト役の声優・松岡禎丞、丹羽将己プロデューサー(アニプレックス)、金子敦史アニメーションプロデューサー(A-1 Pictures)の座談会企画を実施。第3弾となる本記事では、アフレコ現場における裏話や、エイジ(CV:井上芳雄)とユナ(CV:神田沙也加)の再登場についてトークが繰り広げられた。
【これまでの記事】
・第1弾:声優・松岡禎丞が「SAO アリシゼーション WoU」プロデューサー陣と対談! 「勝てそうで勝てない」キリトの魅力
・第2弾:なぜキリトはモテる? 戦闘シーンの剣戟にも注目! 声優・松岡禎丞×丹羽P×金子P「SAO アリシゼーション WoU」特別対談
松岡:このシリーズが始まる前に、キリトがどれだけしゃべるかなどは制作会議で決められたのですか?
丹羽:「大丈夫かな?」というところから始まりましたよね。
金子:誰もちゃんと口にはしないけど、一抹の不安みたいなものがありました。
丹羽:《アリシゼーション》編のシナリオが1クール目に始まっていたときからみんな思っていたんですよ。「ここに来たときどうしよう、でもまた来たとき考えよう」みたいな。で、それが来ちゃって(笑)。
金子:わりと早かったですよね。
丹羽:セリフとしてはないけど「声はあるからキリトの存在をちゃんと随所に残さないといけないな」というところがあって。特に《アンダーワールド大戦》が始まるとき、東の大門が崩れる話をやっていたので「いよいよ始まるぞ」ってなるじゃないですか? シナリオ上、いろいろなキャラクターの名前がバンバン出てきていて、そこでふと気づいたんですよ。「あれ、キリトにカメラいってなくないですか?」って。あの瞬間、他のキャラクターが盛り上がりすぎて、キリトが忘れられていません?(笑)。そういう意味でも(意識がなくても)キリトを忘れないようにするっていうのは心がけていました。
金子:松岡さんにしゃべってもらうところが本当になくなった。そこに関しての一抹の不安っていうのはあったけれど、結局他のキャラクター達はキリトを中心に動いているので、画的な存在感がいないという意味では不安はありました。
▲金子敦史アニメーションプロデューサー(A-1 Pictures)
丹羽:心の中に居る感じでしたからね。
松岡:本当にその通りです。僕も貴重な経験させていただいたなという気持ちでした。ああいった、意識はないけど体だけで反応するお芝居というのはやったことがなかったんです。だから家で「こういう感じで来るから、こうなるのかな」というのを考えていたんです。何せやったことがないから、当然引き出しもなかったですし。
結局、これは現場でやるしかないと思って、自分のレベルゲージを上げていくことにしたんです。まずはマックスからスタートして下げていくというのがいつもの僕のスタイルで、それを最初にバッとやったら「それちょっと出しすぎ」と言われて。「え、これで出しすぎ? 1番下まで下げて、それでも出しすぎって言われたらどうしよう」って怖さに襲われました(笑)。声色を出すセンチもそれが1、2ミリずれるだけで「今、意識あるね」って感じになってしまう。「いや~これは難しいぞ」と思いました。
でも、さすがにシナリオ上でアスナと再会したときは泣いても良いだろうと思ったんですよ。それでやってみたら「うん。出しすぎ」と言われて、「ここは泣いていいでしょう!」って(笑)。でも泣きすぎると「意識がある」ということになってしまうんですよね。
丹羽:アフレコは大変そうでしたね。
松岡:《アリシゼーション》編の前半(1stクール)の最終回、僕はいなかったんですけが、同じ場所の別スタジオにいて。「挨拶だけさせてもらってもいいですか?」みたいなこともありました。
丹羽:今回、キリトがしゃべらないと聞いたとき、最初どう思いました?
松岡:「仕方ないですよね」っていう(笑)。だって原作者の川原先生の描いたお話がそうなっているじゃないですか。
丹羽:原作をちゃんと読んでらっしゃいますもんね。この日が来る、というのは覚悟していたと。
松岡:ただ、原作を読む上で深読みしすぎないように、というのは気を付けています。現実に生きている人もそうですが、次に話そうと思っていることって、文章化しないじゃないですか? 僕らはそのときの感覚で脊髄反射みたいにしゃべっている。アニメーションもそれに当てはまると思っていて、逆に先を知りすぎると、展開が分かる演技をしちゃうこともあると思うんですよ。人ってどうしても知っている情報に感化されやすくなるから。
丹羽:知らず知らずのうちにフラグ立てちゃうみたいな。それはたしかに作り手としてけっこうありますよね。でも、キャラクターは当然その先は分かっていないわけだから、僕ら的にはリアルさがほしい。その難しい部分を役者さんにすごく頑張って作ってもらっています。
松岡:しゃべらないキリトを見た川原先生の反応が聞きたいです。
丹羽:こんな感じなんだ~みたいな(笑)。
金子:でも、初めて松岡さんのキリトがああなってしまったときのアフレコ、スタッフみんないましたけど、すごい大笑いしませんでした? 「大丈夫かな?」と思って松岡さんにやっていただくと、大笑いが起きて結果、良い空気になる。最後は「よしいこう!」みたいな。
丹羽:その状態のキリトって、どんな演技になるのか分からなかったんですよね。松岡さんがみんなの期待を良い意味で裏切ったのかなって思います。
金子:シナリオ上のセリフは「ああ」とか「うう」とかしかないじゃないですか? 「これ1回撮って松岡さんは何週間かいらっしゃらない感じなんですかね?」みたいなことを誰かと話していたんですが、松岡さんは(次のアフレコでも)普通に現場にいらっしゃって。しかも誰よりも早く(笑)。
松岡:僕、入りはいつも早くて。時間通りに入るというのがつらいんです。あと、話逸れちゃいますが、17話が衝撃の展開の連続で、ついにヴァサゴの正体も判明したじゃないですか。
丹羽:ヴァサゴの幼少期、壮絶ですよね。しかも、キリトに似ているし。
金子:川原さんにお聞きしたときに、おぼろげながらもキリト感があると。ヴァサゴがキリトを憎むという意味合いもあったので、ああいう顔になったんです。でもまぁ、キリトでしたね(笑)。
松岡:「SAO」を観ていた中で思ったんですけど、(ヴァサゴは)もしかしたらキリトだったんじゃないかっていうこともありますよね? 少し違っていたら、キリトがエイジになっていたかもしれないって。
丹羽:エイジくんは救えなかった。1つ違えばっていうのはまさにそう。たまたま英雄になれたけど、ヴァサゴももしかしたらその道(英雄になる道)もあったかもしれない。
金子:誰かにとっての英雄になる要素はあったかもしれない。
丹羽:エイジの話が出ましたが、あれ(エイジとユナがキリトのピンチに駆けつけるシーン)は原作にはないやつですよね。
松岡:そうなんですよ。僕は家で見ていてめっちゃ鳥肌が立ったんですよね。「え、ここで終わるの?」って。
丹羽:最初はリズベットの演説シーンでちらっと出て、お気づきの方もいたと思いますが、まさかここまでがっつり出番があるとは。かなり(アニメーション制作で)頑張っていましたよね?
金子:はい、かなり。
丹羽:彼は「SAO」では動きづらい一部障害みたいなものを持っていて、それ故、助けられなかった男です。
松岡:動きたいときに動けなくなっちゃう。
金子:あの出かたはあざとい! 丹羽さん、オープニングのときの話覚えていますか?
▲丹羽将己プロデューサー(アニプレックス)
丹羽:覚えています。《アリシゼーション》編の最初のオープニングでは、ユナが出ているんですよ。サビ前でバーチャイリティアイドルのユナが。僕は「これ大丈夫ですか?」って、過敏に感応したプロデューサー陣の1人です(笑)。
松岡:オーディナル・スケール(※2017年に公開された劇場版「ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」)は、「SAO」ファンの9割は観てくれていると思いますよ。
金子:バンダイナムコエンターテインメントさんが出している「SAO」の「ソードアート・オンライン フェイタル・バレット」っていうゲームがあって。ユーザーの方がSNSでつぶやいていたんですが、それに出てくるイツキくんってキャラクターを見て、「もしかしてイツキじゃない? みんなエイジって言っているけど」みたいな声もありました。本当鋭いなって。お客さんが毎週楽しんで観て、思い思いのコメントを(ネットに)上げてくれるんですけど、本当に面白いですよね。「ああ、こういう見方しているんだ」って。
松岡:アニメーションの中でもゲームのキャラクターが登場するってあったじゃないですか? 「フェイタル・バレット」のヒロインの2人がビリヤードやっているのとか。
金子:あれもうち(A-1 Pictures)の思い付きで「出します!」みたいな感じでした(笑)。
松岡:でもアニメーションの世界だと、出会っていないんですよね。
丹羽:すみません! 最後に、ユナとエイジについて少し補足しても良いですか? サービス精神で2人が出てきたというよりも、オーディナル・スケールという世界戦においてリズベットの演説を聞いていたとしたら、来るんですよ。だから世界戦としては必然という登場。そこは自然と伝わってくれたらいいなって思います。
(C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project