将棋の最年少棋士・藤井聡太二冠(18)が9月9日、順位戦B級2組の対局で、谷川浩司九段(58)に勝利し、今期の成績を無傷の4連勝とした。お互い得意の角換わりからじっくり時間を使い合い、夜戦に入ってから本格的に戦闘開始。じりじりと差を広げる勝利で、谷川九段が持つ最年少名人記録、21歳2カ月にまた一歩近づいた。
【動画】藤井二冠、十七世名人・谷川九段に勝利!B級2組、無傷の4連勝
藤井二冠から見て40歳上の谷川九段は、現役2位、歴代4位となるタイトル通算27期を誇る名棋士。十七世名人の有資格者であるとともに、最年少名人の記録保持者でもある。藤井二冠と同じ中学生でのプロ入りでもあり、新旧の天才対決に注目が集まった。
先手の谷川九段が採用した角換わりは、藤井二冠もデビュー以来得意戦法として使いこなしているもの。プロの間でも非常に研究が進んでいることから、時間をかけた序盤が長く続き、駒が本格的にぶつかりあったのは、午後6時からの夕食休憩を終え、夜戦に入ってからだった。
お互い少しのミスも許されない戦いの中、少しずつ有利、優勢としたのは藤井二冠。目覚ましい一手ではなく、確実に勝ちに近づく指し回しは大先輩を相手にしても変わらず、力強いものだった。対局後は4連勝について「残りも全力を尽くして昇級を目指せればと思います」と語った。敗れた谷川九段は「こちらが立場的にはぶつかっていく気持ちでした。(角換わりは)一番指している戦型で、と選びました。中盤早々にミスを連発してしまったので悔いが残ります」と振り返った。
最年少でプロ入り、タイトル獲得など、数々の記録を打ち立ててきた藤井二冠だが、最年少での名人獲得は、最難関の記録の一つとして知られている。名人になるためには、順位戦のA級でトップとなり、挑戦権を獲得する必要があるが、藤井二冠が「21歳2カ月」をクリアするためには、参加中のB級2組を今期で通過し、次に来期でB級1組を1期抜け、さらにA級初挑戦で挑戦権獲得、名人戦で勝利することが条件だ。谷川九段は、1年目こそ足踏みをしたが、その後は4期連続で昇級を果たし、一気に名人の地位まで駆け上がった。
B級2組には今期25人の棋士が在籍。全員が10局指し、成績上位3人が昇級する。10戦全勝であれば4人以上でも昇級だが、前年成績を元にした順位で21位の藤井二冠は、同一成績で並んだ場合「頭ハネ」をされる可能性も高い。実際、C級1組では9勝1敗の好成績を収めながら、4人が並んだところ順位で最下位だったため、頭ハネで昇級を逃した経験がある。つまり今期も昇級には全勝相当の成績が必要だ。
名人を除く7タイトルは、勝ち続ければデビューしたばかりの棋士でも獲得が可能だが、名人だけは毎年の積み重ねでようやく届くもの。最も歴史あるタイトルで、藤井二冠はレジェンド棋士の背中を追うように、一気に突き進むことができるか。
(ABEMA/将棋チャンネルより)