木村花さんの母・響子さんがメディア初出演で訴え 今も続く激しい誹謗中傷と、制度の壁との闘い
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 今年5月に帰らぬ人となった女子プロレスラー・木村花さんの母、響子さんが、“同じような悲劇を二度と起こしてはいけない”との思いから、『ABEMA Prime』の取材に応じ、初めて生出演した。

・【映像】木村響子さんがメディア初出演、今も続くネットの誹謗中傷

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 「事実が明らかになる中で、泣くよりも先にやるべきことがあるんじゃないか、泣くのは後にして、闘わといけないんじゃないかと思った」。

 花さんが亡くなってから3カ月あまり。この間、弁護士との打ち合わせや、自民党が立ち上げた「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム(PT)」に出席するなど、花さんを追い込んだネットの誹謗中傷の撲滅に向け、多くの時間を割いてきた。

■花さんが亡くなってからも止まないネット誹謗中傷

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 今月3日には、花さんの誕生日を迎えた。生きていれば23歳になっていたはずの愛娘を想う「失ったものは測りしれないけど だからこそ 笑顔までは 失いたくない」というツイートには、世界のファンから祝福の声が寄せられた。

 担当するレイ法律事務所の山本健太弁護士は「花さんの件があったことで、人々が問題の重大さに気づいたと思う。それでも、やはり多くの人にとっては“他人事”。どうすれば自分が被害者にも加害者にもならないような社会にできるのか、その具体的な方策はまだ詰めきれていないのが現状だ」と指摘する。

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 実際、花さん、そして響子さんへの激しい誹謗中傷は今も続いている。番組では、「この現実を見て欲しい」という響子さんの提案を受け、実際に寄せられたツイートを紹介した。

 『黙って天国で大人しくしとけ」「花さん息してるー?(笑顔の絵文字)ってもう遅いかWWWなんか誹謗中傷がすごく話題になってるけれど花さんはそれだけ知名度があるんだから有名税だと思いなよ(顔文字)』
 『死んでくれてまじ感謝します。元気出ました(笑顔の絵文字)』
 『娘を見殺しにしたひどい母親だ』
 『地獄に落ちろ』

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 中には、数時間のうちに50もの投稿を繰り返したユーザーもいた。「“見ないようにすればいい”と思われるかもしれないが、やはり目に入ってしまうし、直接リプライでぶつけられることもある。今はただ、耐えてブロックするしか選択肢がない。でも、これに振り回されたら負け。どうせ何をやったって誹謗中傷する人はいるんだから、笑って、顔を上げていよう思っている」(響子さん)。

■立ちはだかる法制度、そして多国籍企業の壁

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 響子さんと山本弁護士は、このような書き込みをした犯人を特定すべく動いてもいる。しかし今の日本では投稿者の特定までには3度の裁判が必要で、被害者には時間や費用などが大きな負担となっている。しかも響子さんの場合、すでに亡くなっている花さんへの誹謗中傷について法的責任を問うのは難しいのが現状だ。

 「人の心というのを持たない人、モラルが通じない人に対しては厳しい罰則が必要だと思う。ただ、花が亡くなった5月23日以前に投稿されたものに対して、というのは非常に難しい。それ以降の投稿のうち、悪質で、私が遺族として開示請求できるものについての手続きを進めている」(響子さん)。

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 また、SNSを運営しているのが海外の企業であることも解決を難しくしている。Facebook、Instagramは全く応じてくれず、Twitterのリアクションは2カ月が経過してからだったという。また、「すでに書き込み削除されている」「アクセス情報の保存期間外」といった理由で、情報開示に至ったのはごく一部だ。

 「日本支社があったとしても、開示請求は海外の本社に対して行わなければならないことも多い。また、日本の法制度は、名誉というものに対する保護が薄く、損害賠償額も著名人でなければ3~40万円程度にとどまる」(山本弁護士)。

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 このような現状を受け、響子さんも出席した自民党PTでは、開示請求の要件緩和、電話番号なども開示対象すること、さらには刑事罰の見直し、学校におけるSNS教育の強化などを盛り込んだ提言をまとめた。また、複数の国内SNS事業者も対応策を打ち出すようになった。

 「議員の先生方は想像以上の熱いお気持ちで総務省の方に話をして下さった。一人じゃないんだな、動いてくださる方がいるんだなと思い、すごく心強かった。小さな一歩かもしれないが、この一歩がすごく大事だと思う。二歩、三歩と続けていくことが大切だと思う」(響子さん)。

 一方、山本弁護士は「忘れてはならないのは、被害者は手続きの過程で、誹謗中傷の投稿を確認・選別し、証拠を保存しないといけないということ。精神的負担の大きい作業で、“二次被害”と言ってもいいと思う。この点は政府にも考慮してほしい。また、電話番号の開示が可能になったとしても手続きの煩雑さは残るし、照会に応じてくれない大手通信会社もある。表現の自由との兼ね合いの問題も出てきてしまうので、あまり根本的な解決にはならないと感じている。やはり、すぐに助けなければいけないという方のために、業界の自主規制も必要になってくると思う」と話した。

 さらに響子さんは年内をめどにNPO法人の設立、SNSでの誹謗中傷に悩む人たちの相談窓口や、全国でモラル教育の出張教室にも取り組んでいくつもりだ。


■「“一罰百戒”の法制度や治療的アプローチも必要ではないか」

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 自身もネットの誹謗中傷を受けた経験を持つジャーナリストの佐々木俊尚氏は「持病について差別的なことを書かれたので、Twitter社に通報してみたが、1週間くらい経ってようやく“誹謗中傷にあたらないと判断しました”という回答が来た、基準も示されていないし、海外の会社なので、それ以上は何もしようがないという徒労感がある。しかし例えば電車の中で他の乗客を根拠なく怒鳴り始めた人がいたとして、一緒になって怒鳴り始める人はいないと思う。それがSNS上では、“この人は罵倒してもいい人なんだ”と思い込み、みんなで罵倒をし始める。それは何も特殊な性格の人というわけではなく、ごく普通の人が自分の苛立ちをぶつけているパターンが多いようだ。“罪を犯したことのない者が石を投げなさい”というキリストの言葉があるが、SNSでは誰も石を投げるのを止めない」と指摘。

 「これはネットに良識というか、マナーを取り戻す闘いでもあるし、文化を作っていくことが重要だと思う。しかし、いじめだって警察が介入しない限り、いくら撲滅だと言い続けても無くならない。教育に意味がないとは思わないが、正義の実現だと思って誹謗中傷している人も多い。やはり法的・社会的に罰せられるということを思い知らせなければならない。僕もTwitterに“法的対処します”と書いたところ、罵倒の数は50分の1くらい減った。みんなその程度のヘタレだ」。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「知人との対面でのコミュニケーションではない分、本来は想像力を働かせて相手に向き合わなければならない。しかし中には、ある意味で誹謗中傷をすることが依存症のようになっている人たちもいると思う。これは痴漢や薬物事犯の構造とも似ている。損害賠償額を上げていくことや厳罰化、キャンペーンによる抑止力も必要だが、それが効かない人たち、あるいは過激化した人に対しては、逮捕した上で、治療するというアプローチのための制度設計も必要だと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

木村響子さんがメディア初出演、今も続くネットの誹謗中傷
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