9月18日に開幕したプロレスリング・ノアのシングルリーグ戦「N-1 VICTRY」には、新鋭からベテランまで多彩なメンバーが揃った。
Aブロックの中心はGHCヘビー級王者の潮崎豪。Bブロックは昨年覇者にしてGHCナショナル王者の拳王が軸となる。そこに20代の清宮海斗、稲村愛輝から30代の中嶋勝彦、40代を迎え円熟期に入った丸藤正道がいて、さらに50歳の杉浦貴、望月成晃も優勝候補と言える充実ぶり。各6人2ブロックの闘いはかなり厳しいものになりそうだ。
最年長にして初出場となるのが総合格闘技のレジェンド・桜庭和志だ。1969年生まれの51歳。昨年からノアに参戦、杉浦率いる杉浦軍入りすると即座に存在感を発揮した。得意のグラウンドだけでなく場外ダイブも敢行するなど、ノアのプロレスにうまく対応している。8月には杉浦と組んでGHCタッグ王者になった。
ここまでは「心強い存在」という杉浦とユニットを組んでの試合を思い切り楽しんできたが、今回はシングルのリーグ戦。そこに踏み込んだのは“ゲスト枠”ではなくノアの闘いにどっぷり浸っているからこそだ。ちなみにN-1の前身であるグローバル・リーグ戦の第1回優勝者は高山善廣。桜庭にとってはUWFインターナショナルの先輩にあたる。そんなドラマ、縁も感じながらのN-1参戦だ。
「大きい選手が多いので、ケガしないように乗り切りたい」
17日の記者会見ではそう語った桜庭。リーグ戦期間中には9月22日(夜)、23日(昼夜)と後楽園ホールでの2日間3連戦があり、そこで桜庭は公式戦3試合を行なう。
会見では「1日2試合は学生時代のレスリングの試合以来ですかね」とコメントしていたが、プロでも経験している。伝説の『PRIDE GP 2000』決勝大会(東京ドーム)だ。ここで桜庭はホイス・グレイシーと15分6ラウンド、計90分にわたる大激闘を展開。タオル投入により勝利すると、さらにトーナメント準決勝でイゴール・ボブチャンチンと闘っている(1ラウンド終了時にタオル投入でTKO負け)。
「あっ、それがありましたね。あれに比べればなんとか(笑)。もう20年前の話なんで、あの時みたいに若くはないですけど……今回は90分とかじゃないですよね? 30分一本勝負ですか。じゃあできますね。昼と夜の間に時間もあるし」
年齢が注目されるが充分な練習ができているだけに「スタミナとかも問題ないですね」と桜庭は言う。気にしているのは細かい調整だ。
「たぶん昼の大会と夜の大会の間にいったん寝ると思うんですよね。で、起きてどうスイッチ入れるか。1日2回のアップになるんで、やりすぎず、やらなすぎずっていうところで」
決勝で闘いたい相手としては杉浦の名をあげた。ただ、まずは1試合1試合が勝負。優勝やベルトといった結果は、その先に自然についてくるものだと考えている。
対戦相手は22日が潮崎、23日の昼がマサ北宮、夜が清宮。どのカードも新鮮かつ刺激的だ。ノアといえば常に全力を出し切る“熱闘”のリング。その中で“IQレスラー”桜庭がどんな闘いを見せるか。シングルリーグ戦という舞台で、ノアと桜庭の化学反応はさらに激しくなるだろう。
文/橋本宗洋