9月19日に開催された修斗・渋谷O-EAST2部興行の“トリ”は、劇的な王座交代となった。
環太平洋フェザー級タイトルマッチ。王者・仲山貴志に挑んだSASUKEは昨年から4連勝と絶好調だ。前回の試合ではベテラン・西浦ウィッキー聡生に勝利している。しかし、この連勝以前には腕の骨折により実に2年半もの長期欠場を経験した。
「半年で治るケガだったのに、周りの同世代の選手が他団体でタイトルマッチをやったり、同じジムの黒部(三奈)さんがDEEP JEWELSでチャンピオンになったりで焦ってしまって。同じところを3回ケガして3回手術しました」
そんな苦い経験があるから、復帰後は頭を使った練習に取り組むようになったという。念願のタイトルマッチでも、テイクダウンを許したものの下から腕十字を狙うなど冷静さが目立った。
フィニッシュは2ラウンド。「体が勝手に動いた」というパンチで仲山をダウンさせると追撃のパウンド。ここでもしっかり効かせるポジションを取りながら落ち着いてたたみかけた。
見事な勝利でベルト獲得を決めたSASUKEはケージに上って「ナメんな!」。この咆哮の裏には、前回の試合での悔しさがあった。中継の見逃し配信を告知する関係者のツイートに「SASUKEvsウィッキーは見直すまでもないな」という書き込みがあったという。
「それに腹が立ったのを思い出したんです(笑)」とSASUKE。2部興行の最終試合、タイトルマッチであることも意識していた。
3度の手術を乗り越え、チャンピオンになった男にとって、ベルトは格闘技を諦めなかった人生の勲章だ。
「やめちゃえば楽だったんですけど、格闘技を嫌いになれなくて。好きなことを押し通してやってきて、その結果が出ました」
とはいえ環太平洋のベルトがゴールだとは思っていない。次の目標はフェザー級世界王者・斎藤裕との対戦だ。
「斎藤チャンピオンは本当に強い。今のままでは勝てない」とSASUKE。しかしこんならコメントも。
「時間があればあるほど、僕はどんどん強くなります。斎藤チャンピオンは早いうちに僕とやっておいたほうがいいと思いますよ」
25歳、これからは新しい世代が修斗を盛り上げていくという意識も強い。
「やっぱり修斗のチャンピオンは強くてカッコよくないとダメですから」
理想のチャンピオンへ、その第一歩をSASUKEは力強く踏み出した。
文/橋本宗洋
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